愛を読むひと

2009-06-25 00:34:10 | 映画
ニコールが降板して、代役のケイトがオスカーを獲った作品、私も観てきました。

たくさんの方がブログで書かれているように、ケイトが演じて正解でしたね。ニコールがすっぴんで声のトーンも低くして演じればケイトに負けなかったかもしれませんが、私個人的にはニコールのヌードは見たくないし、しかも川で泳ぐ時のシーンのあの下着も以っての外なので、ケイトで良かったと思います。

それに、はっきり申しましてケイトのオスカーは、今まで何度もノミネートされてオスカーが獲れなかったことに対する憐れみにしか思えません。リメイクでオスカーを獲ったスコセッシ監督のように。「ディパーテッド」でオスカー?おかしい!

正直なところ、感動の涙はありませんでした。ドイツ人が主人公でドイツが舞台なのに全編英語は違和感多ありです。所々、納得させられる台詞がありましたが…。

裁判を傍聴した学生がゼミの教室で、「一般市民にも問題がある…」みたいなことを言って教室を出て行った方の台詞。

ドイツにはナチに加担した市民もいればそうでない市民もいる。ナチに加担した市民や政府だけが裁きを受けるのはおかしい。強制収容の事実をしりながら何も抵抗反抗をしなかった市民にも責任はある。

日本の社会の授業では学ばなかったことを、今になって学んだ感じですね。

字が読めない=学校にいけないくらい貧しい。生きていくために働く。働いていたら、収容所の看守になっていた。無学の恐ろしさが伝わってきます。もし、主人公ハンナが貧しくても理性が備わっていればナチ党員にならなかったのでは?働いた環境が全くナチに関係なければ看守にはならなかったのでは…と。色々想像させられます。

このシーンは我々観客に問題提起していていいシーンだと思います。

今更ながらですが、学校から学ぶことはたくさんありますね。本もたくさん読むべきですね。

そういった意味でも学校に行けなかったハンナだけが悪いとはとてもいいきれませんね。

かといって、勉強しすぎても立派な人間になれるとも言い切れませんが…。いずれにせよ、理性を学ばべなかったハンナが不憫でなりません。

私が唯一共感したのはこの裁判の判決が下った辺りのシーンだけです。あとはある愛の物語って感じで、ふ~んと思って観てました。

少年と熟女(?)の恋愛、淡い初恋初体験…大人になっても過去を引きずる…。ナチの話がなかったら、往年の「個人授業」みたいな作品です。ナチの話があって重厚な文学作品に仕上がったって感じですね。

この作品を観られた方も同じ意見かもしれませんが、なぜあの少年はハンナを助けなかったのか…?ハンナのプライドを尊重したかったのか?

私には逃げたとしか思えません。ハンナが少年から突然消えたように。
大人になって、面会していたら…と思って贖罪でカセットを送っているようにしか思えません。

弁護士なのに弁護出来ない。話を聞くことすら出来ないなんて、彼はいままでどんな弁護をしてきたのか不思議でなりません。そこのとこはフィクションなのでなんとでも書けますが、現実を想像すると私は彼には弁護は頼めません。

私がハンナなら、出所してたら彼から二度と朗読してもらえないと考えたとはとても思えません(パンフレット参照のこと)。それも一理あると思いますが、出所しても居場所がない不安が先行したと思います。大人になった少年に再会して、この人には頼れないってハンナも思ったはず。刑務所にいる方が安心って思ったと思います。この辺りは映画をご覧下さい。

書いているうちに、だんだんあの男が腹立たしくなってきます。

こんな風に思えたのも、やはり主役のお二人(少年も含め三人)の演技力、脚本、監督、原作者の力でしょう。

またまた乱雑で偏見多き文章になってしまい申し訳ありません。まだ未見で観てみたいという方がいましたらご覧下さい。是非とも皆さんの感想が聞きたいです。

今日のまとめ:この作品、先日亡くなられたアンソニー・ミンゲラ監督とシドニー・ポラック監督に捧げされてます。どちらもニコールが主演したことのある監督です。ちなみに前者「コールド・マウンテン」後者「インタープリター」にて出演。
きっと、ニコールは本当にこの作品に出たかったのだと思いました。
幸運なことに、次回作「NINE」では脚本家の一人としてミンゲラ監督が関わっています。ニコールの本当の気持ちは分かりませんが、私はとても嬉しいです。
それにしても、原作者はケイトが第一候補というではありませんか!?(パンフレット参照のこと)。それを今になってメディアで言うなんて、ニコールを馬鹿にした言葉足らず言葉、本当に腹が立ちました。私の想像ですが、あの少年は原作者そのものです。よく似てます。
まず、パンフにニコールが妊娠で降板したと載せてるのに、あんなこと載せる時点で間違ってますね…。どちらにしても私もこうやってブログに書いているので同じですが…。


毛皮のマリー

2009-06-19 20:40:14 | 舞台
大阪公演最終日、5月24日に観劇してきた時のものです。

2001年度版を名古屋の大きな劇場で観劇しました。とても衝撃的で内容美輪さんの演技共に感動したので今回の再演を非常に楽しみにしていました。

8年も経つと好みや見方が変わり、偏見が多くなってきたので、今回は全日程が終了するまではアップしないことにしました。観に行かれる方に私なりに配慮しました。

カーテンコールの「マリー」と「欣也」の白で統一されたシンプルで洗練されたシーンがとても印象的でした。前回はこんなに凝ったカーテンコールはなかったように思います。

ラストの展開も、2001年度版より大きく変更されており、太刀のシーンはとても迫力がありとても母の強い愛を感じました。

若松さん、菊地さんは前回よりも魅力が増し、特に若松さんの「紋白」は増々ギャルに近づかれて大変楽しませて頂きました。足か細いのがとても印象的で、前回より8年も経つのに若さに磨きがかかっていたので驚きました。

菊地さんは熟練した男の色香が漂っており、美輪さんが絶賛する気持ちがよく分かります。

ただ、私が見た日の麿さんの「醜女のマリー」に元気がなかったように思えました。醜女でなく普通に見えたのは私だけでしょうか。それに大勢のダンサーズで陰に隠れてしまった感も否めません。

今回特筆すべきは「欣也」を演じた吉村さんです。

前回は及川光博さんが演じられてました。当時大人気のスターさんが演じるとあって、テレビに映る彼独特のオーラも完全に「欣也」のオーラへと変貌されており、大変共感、感動しました。演技の上手さは本当に驚きました。

そして、今回抜擢された吉村さんは私にとっては無名の役者さんではありますが、動きがとても機敏で感受性も豊かで、何より新鮮で初々しさがありました。それでいて、二幕目の自暴自棄になるシーンはとても胸を打たれるくらいいい演技をされてました。今後とても楽しみな役者さんですね。

そして、舞台上のマリーの欣也に対する眼差しや声かけは、始終母子恋人以上の愛を感じました。美輪さんの吉村さんへの愛なのでしょう。2001年度版はラスト以外は欣也に対して冷たかったように思えたんですけど…。

いずれにしても、吉村さんの今後の活躍を期待してます。

美輪さんの「マリー」に関しては言うまでもなく、マリーを演じられるのは美輪さんしかいません。

そう、今回の作品を鑑賞して気になることがありました。

マリーが欣也の産みの母に対して恨みつらみを語る台詞です。2001年度版と変更されていたように思えたので、出版されている戯曲をもう一度読み直してみました。

記憶が不確かなので、断言出来ませんが、前回の公演ではマリーが欣也の産みの母を犯したことを愛憎たっぷり皮肉たっぷりに語っていたように思えます。今回は戯曲通り、水夫がマリーが犯したんだと悟る台詞になっていました。個人的には前回の方がとてもインパクトがあって好きでしたので、今回はそれがなくて残念でした。

それから、美輪さんには失礼ですが、紋白の登場シーンで使われた曲「Love_Machine」はいかがなものでしょうか?パヒュームの曲であのロボットダンスをしている若松さんを見たかったな…なんて思ってしまいました。

それと、一幕終わりの美女の亡霊達もは多いように思えました。アップテンポな派手なダンスよりダークでエロチックなタンゴも良かったのでは…なんて思ったりもしました。

演劇ド素人が演出に口を出しやがってって怒られそう…失礼極まりないですね。申し訳ありません。

この大勢の役者さんを配したのは、かつて寺山修司氏の作品に出てきたキャラクターをラストに登場させるために必要だったということが分かりました。寺山氏へのオマージュを望んだので登場人物が増えたんでしょうね。それでも…。また言いそうになった…すみません。

パンフレットを読む限りでは今回のマリーが美輪さんにとってラストになるかもしれないというではありませんか。今回の演出が集大成っていうのは、上記の理由もあって正直腑に落ちません。

これはまだ美輪さんにとって集大成ではないと思います。まだまだ未完の作品です。美輪さんが一生演じ続ける価値のある作品です。ちょっとした手直しで感じ方が180度変わるんですから、また新しいマリーが見たいです。

それに、「毛皮のマリー」は美輪さんのために書かれた作品です。美輪さんにしかマリーの複雑な心情を表現できるの役者さんはいません。やはり、美輪さんの意志だけで終わらせてはいけないと思います。天国の寺山氏だって彼のお母様だって同じことを思っているはずです。美輪さんが生きているかぎり演じ続けることが宿命ではないでしょうか。森光子さんの「放浪記」のように。

この公演を最後にせず、命あるかぎり演じ続けて欲しいですね。マリーが90歳になっても、進化するマリーが見たいです。

それから、まだこの世に生を授からぬ未来の子供達に、普遍的なテーマである母子の絆、愛、そして寺山修司氏の魂を伝えるためにも演じ続けて欲しいです。

こんな上から物を言うような人間の話を実際に美輪さんの耳に入ったら本当に怒られそうですが、美輪さんと寺山氏のファンを代表して言わせて頂きました。実際に耳に入ったところで、美輪さんなら、「ほっときなさい、レベルの低い人間の相手をしてはダメよ」ってなじられそうですが…。

最後に、くれぐれもお身体を大事にして、女優美輪明宏の舞台をこれからも楽しみにしてます。

今日のまとめ:ねっ、偏見だらけだったでしょ!?
そう、十年前に購入した「青森県のせむし男」のビデオ、引越しの際に捨てなくてよかった。なぜかこの作品だけは再演がないので今では私の宝物です。

「ボルベール・帰郷」

2009-06-04 01:10:32 | 映画
CATVでペネロペ・クルスの主演作、カンヌで女優賞をとり、主演女優でオスカーに初ノミネートされた「ボルベール・帰郷」を観ました。

偶然チャンネル替えたら放映していたので見ました。初めの10分くらい見逃しましたが、見始めたら完全に見入ってしまいました。これは久々のヒットです。

カンヌ、アカデミーで気にはなっていましたが、正直興味がなかったのでレンタルもしなかったのですが、見事に裏切られた気分です。偶然の神様に感謝です。

余談ですが、偶然の神様に感謝した作品は他に「バグダッド・カフェ」があります。これも大好き!

元に戻り…、作品自体はサスペンス要素もありつつコメディータッチで、そして現実離れしたファンタジー要素もありで、世界で評価されるだけはあると思いました。ラストの幕引きは、「えっ、これで終わり!?」って思いましたが、それでも秀作です。

それにしても、ペネロペの圧倒的な存在感に驚きました。彼女作品はCATVで何作か見ましたが、正直どれも最後まで見たことありません。彼女の演技云々以前に作品自体が面白くなくて…。

タイトルは忘れましたが、ジョニー・デップ、マット・デイモン、ニコラス・ケイジ、アダム・サンドラーと共演した各作品ありましたよね。トム・クルーズと共演した「バニラ・スカイ」以降、立て続けにハリウッド作品に出てた時代。綺麗且つか弱いイメージの女優さんとしか見てなかったので、「ボルベール」で見事に払拭されました。圧倒的な存在感でした。

力強い自分勝手なお母さん役をしつつも、娘への愛、母への愛を情緒豊かに演じていました。もはや綺麗だけでは形容できないくらいの女優魂を感じました。

脚本も本当に面白い。サスペンスかと思いきやそうでなく、シリアスとコメディーが上手く融合して、三代の母娘の因縁めいた絆を軽妙なタッチで描き、続き(結末)が見たいと思わせて終わるところが、監督ペドロ・アルモドバルの手腕が光ってました。

これは必見です。ペネロペの歌にも注目して下さい。本当に地声なら凄い歌唱力です。さすがスペインの出身だけあります。

今日のまとめ:ますます「NINE」が観たくなりました。
そういえば、トム・クルーズに見出だされ海外女優という点で、ニコールとペネロペの因縁の共演ですね。ニコールはどんな気持ちでペネロペと共演してたんだろう…。
「NINE」より、まずはもうすぐ公開される「それでも恋するバルセロナ」をチェックしないといけませんね。

「毛皮のマリー」の感想は6月19日にアップしますので、しばらくお待ち下さい。