「ユダヤの神はヤハウェだったね」
「そう、エホバとも言われているな」
「確か、出エジプト記あたりから登場するね」
「いやいや、アブラハムの契約の時の神さ」
「アブラハムの一人子を犠牲に捧げるように命令した神か」
「そうそう、子供の首に刃を当てようとした瞬間に天使が、アブラハムの腕を抑えるっていうやつだ」
「カラヴァジョ・Caravaggio(1573~1610)がその迫真の瞬間を描いていた」
「君はカラヴァジョが好きだったね」
「いいね、好きだ」
「君は、ミケランジェロやレオネルド・ダ・ビンチは嫌いだった」
「ミケランジェロの彫塑はいいが、レオナルドの絵画はよくない」
「ヘエー、これは驚いた、世間では大変な評判だよ」
「日本のインテリには目がない」
「『目が無い』とはすごいね、舌はあるが目は無いか」
「絵は理屈じゃあない、レオナルドの絵には理屈が多すぎる」
「東大のなんとかっていうセンセーが随分持ち上げていたけれどね」
「テレビでだろ、あの連中は大衆が飛びついて視聴率が上がればそれでいいんだ」
「確かに、そういう傾向はあるけれどね」