「百歩譲ってだよ、その集団が、この列島にやって来て、古代国家の建設に関与していたとしたら、それは、どんなところに現れるだろうか」
「彼らは律法の民だから、この国の法体系に足跡を残すはずだ」
「へえー」
「聖徳太子という人物が作ったとされる17条の憲法の中に、小さなことはリーダーが決めてもいいが、大切なことはメンバー全員の意見を聞きなさいというのがある」
「ほおー」
「これなんか興味深い」
「それは遊牧民の特質だろう」
「そう解釈してもいいかもしれない、だが、稲作農耕民にはないだろうね」
「絶対なるヤハウェの戒律を外して、遊牧民の会議を残したということか」
「ふふふ、まあそういうことかな」
「なにか隠しているね」
「なにも隠してなんかいないさ」
「でも、分からないことが多いね」
「ああ、多い、現代の社会だって分からないことがあるんだから、何千年まえのことはなおさらだね」