男に叱(しか)られのはまあまあだが、オンナにやられると身に応(こた)える、この夫人は、タイヘンに烈しい気性(きしょう)で、選挙も終盤になった時、
「あと100欲しい いや50票でいい」
すると、古手の県会議員が、
「ジツダンをくれれば 50票は まとめられる」
「・・・」
、
「ジツダン」とはおカネ、いくらだったのか、ところが、この夫人は、
「あなたは この前の選挙でも そう言いましたね」
「・・・」
「結果は どうでしたか」
古手の県議、かなりのカネを自分のポケットに入れてしまったらしい、それをみんなの前で、ぶちまけてしまった、これでは地元のボスの面子は丸ツブレだ。
バトー(罵倒)されたこの県議、50票持って敵側に寝返った、その選挙は、かろうじて勝てたが、そんな議員生活、とても勉強するヒマはなかった、これはその議員の宿命みたいなものかもしれない。
選挙ではジツダンが必要になる、そこで派閥のボスのトコロに行く、官僚出身のボス、
「おまえは このあいだの総裁選で だれに入れたんだっけな」
ネチネチと攻めてくる、仕方がないので田中のナントカさん、これこれこういうわけで、
「よっしゃあー」
「・・・」
「それで いくらだ」
このぐらいはと言いかけると、
「これで どうだー」
2倍のジツダンだ、
「うっうっー」
シビレてしまった、
「ビリビリー」
インテリにはできない、もっともこのカネ、信濃川河川敷の土地売買など、元を質せば税金のはずだが、この際、そんなコトはどうでもいい、
「神さま仏さまカクエイさま」
だから、田中派は選挙のある度に増えていった。