辣腕(らつわん)の秋山女史、出版の仲介をしてやるから出すモノを出せ、
「おまえのつれあいは 銀行のエリートでしょーが」
なんとも元気がいい、お上品というか、男勝(まさ)りというか、ネットには悪評がワンサカとあった。
秋山さんは、あのポスト卿のガールフレンドだった、ある日、秋山さんの洋館を訪ねると、テーブルの上に、
「パサリ」
ポスト卿からの手紙、ポスト卿は知る人ぞ知るヨーロッパ社交界の人気者で、チャールズ皇太子の後見人だった、
「彼も 歳(とし)をとったわ」
「自分だって」
「なにか 言った」
「いいえ な〜んも」
「あなた 最近 ヒョーバン わるいわよ」
ほめられてしまった。
ヨーロッパの選りすぐりの美女たち、WomenやLadyに囲まれているポスト卿の輪の中に、
「あたしも 入れて」
どんな手を使ったんだろう、日本女性の武器は着物だ、ベルリンでバスが止まったことがある、それで、ワタクシは、
「フリソデは ケッコン前だけですよ」
すると、
「そんなこと ガイジンには わかりゃあしないわよ」
「ふふふ」
「あっ あなた カマをかけたのね」
「ひひひ」
つまり、わたしの推理が当たったのだ、
「あなたも 悪くなったわね」
「おかげさまで」
入院してそのまま亡くなった、入院の前夜、電話した、
「退院したら 坐禅の会をやりましょう」
「そんなの やーね パーテイを開きましょう おいしいものを食べましょーね」
だから、その声が、最後になった。