地獄耳のクロダ君、
「駒井さんは ワセダを出て 東大の大学院 あれよあれよで教授になった」
「いいことづくめじゃあないか」
「ちっちっちっ ニッポン そんなに甘くはない」
「・・・」
「生え抜きの東大ではない」
「なるほど」
「優秀な学生 優秀すぎる大学院生 駒井さんについても将来がない だから 弟子がつかない」
「ううむー」
「学問は 引き継いでくれないと消えてしまうものだ」
「だから あのオトコ 駒井さんを取り上げないで 町のトコヤでごまかしたんだな」
「駒井さんを取り上げたら えらーいセンセ いいカオをしない それ以後 三流作家なんかに協力しない」
「そこまで計算してたのかい」
「おもしろいだろう」
「う~ん」
「彼の小説よりも面白い」
「そういう見かたもあるのか」
「いやあ オレのグループじゃあ あたりまえだがね」
「ううう」
「オモテに出ている世渡り上手にも こまったもんだネ」
「そうなのか」
「しゃべくりまわっている 知るものは言わず 言うものは知らず しかし 黙り続けると忘れてしまう」
「こまったもんだね」
「ともあれ 日本の小説が甘いのは そんな忖度(そんたく)で一杯だからかな」