放浪記/帝劇
原作・演出:菊田一夫、潤色・演出:三木のり平、演出補:本間忠良
出演:森光子、奈良岡朋子、米倉斉加年
7月の予約チケットの発売日はボーッとしていました。即完売らしく、私の技量では切符は手に入りません。一生、見ることができないままとあきらめていましたが、9月中旬に、たまたまブログで「当日売りで見に行って来た」という記事を見つけ、私もトライしました。10時発売開始のところを9時前に行き、なんとか、めでたく当日売りの切符で見ることができたのです。
尾道の場面では、ハクモクレンが印象的です。それはあたかも林芙美子の心のごとく、寂しそうに、葉の無い一本の木の梢に、明るく白く大きく輝いていました。廻る舞台は立体的で大きさや空間を感じます。3人の親子の行商は成瀬映画では冒頭に出て来ます。舞台でのこの3人づれは、林芙美子がそれを見て過去を思い出す3人づれですが、映画では林芙美子自身とその両親となっています。海岸のシーンもリアル。淋しくて味気ない砂浜の砂、冷たい風、透き通るような空に、よそよそしい雲、そらぞらしい波の音、しぶき、眼には見えないそれらの景色が見えるように思い出されます。林芙美子と初恋の男性との間を切り裂くように汽車の轟音が鳴り響きます。これは映画では冒頭の東宝マークのところで出て来る音です。映画では、これを使っていたんですね。
でんぐり返しの場面では、その前から会場がざわつき出しました。皆さん、どこでやるのか知っているのです。この部分は、ちょーどサッカー選手がゴールした時にとんぼ返りを打ったりしますが、それと同じ調子です。これは林芙美子の元気よさ、明るさ、猿飛佐助っぽさを表現した部分です。
林芙美子の自宅の場面のセットは美しい。青く澄んだ秋の空、オレンジの紅葉、紅色のもみじ、落ち着いた邸宅のシーンでは、幕が開いたとたんに観客から薄く、ほーっと驚きのため息の音が聞こえました。
奈良岡朋子演ずる日夏京子のセリフから、最後の幕切れまでも見事です。
でも、そのセリフにもかかわらず、舞台は明るく強く元気な印象でした。
明るく強く元気な森光子。
明るく強く元気な林芙美子。
06.09.23 帝国劇場
原作・演出:菊田一夫、潤色・演出:三木のり平、演出補:本間忠良
出演:森光子、奈良岡朋子、米倉斉加年
7月の予約チケットの発売日はボーッとしていました。即完売らしく、私の技量では切符は手に入りません。一生、見ることができないままとあきらめていましたが、9月中旬に、たまたまブログで「当日売りで見に行って来た」という記事を見つけ、私もトライしました。10時発売開始のところを9時前に行き、なんとか、めでたく当日売りの切符で見ることができたのです。
尾道の場面では、ハクモクレンが印象的です。それはあたかも林芙美子の心のごとく、寂しそうに、葉の無い一本の木の梢に、明るく白く大きく輝いていました。廻る舞台は立体的で大きさや空間を感じます。3人の親子の行商は成瀬映画では冒頭に出て来ます。舞台でのこの3人づれは、林芙美子がそれを見て過去を思い出す3人づれですが、映画では林芙美子自身とその両親となっています。海岸のシーンもリアル。淋しくて味気ない砂浜の砂、冷たい風、透き通るような空に、よそよそしい雲、そらぞらしい波の音、しぶき、眼には見えないそれらの景色が見えるように思い出されます。林芙美子と初恋の男性との間を切り裂くように汽車の轟音が鳴り響きます。これは映画では冒頭の東宝マークのところで出て来る音です。映画では、これを使っていたんですね。
でんぐり返しの場面では、その前から会場がざわつき出しました。皆さん、どこでやるのか知っているのです。この部分は、ちょーどサッカー選手がゴールした時にとんぼ返りを打ったりしますが、それと同じ調子です。これは林芙美子の元気よさ、明るさ、猿飛佐助っぽさを表現した部分です。
林芙美子の自宅の場面のセットは美しい。青く澄んだ秋の空、オレンジの紅葉、紅色のもみじ、落ち着いた邸宅のシーンでは、幕が開いたとたんに観客から薄く、ほーっと驚きのため息の音が聞こえました。
奈良岡朋子演ずる日夏京子のセリフから、最後の幕切れまでも見事です。
でも、そのセリフにもかかわらず、舞台は明るく強く元気な印象でした。
明るく強く元気な森光子。
明るく強く元気な林芙美子。
06.09.23 帝国劇場