二銭銅貨

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08国立劇場5月/心中宵庚申、狐と笛吹き/文楽

2008-06-08 | 歌舞伎・文楽
08国立劇場5月/心中宵庚申、狐と笛吹き/文楽

(第2部)
心中宵庚申

上田村の段
八百屋の段
道行思ひの短夜

 姉おかるは文雀。端整でしっかりと、すっきりとして、縫いものをしている姿はすっとしている。蓑助のお千代は健気で柔らかい。その中にもちょっと頼りない感じがあって、おろおろして、行き場のない、居所のない、やる瀬の無い様子。夫の半兵衛は勘十郎。実直、真っ直ぐな、まじめで色白の若者。頑固な年寄りは病気で伏せっていたのに、義理にウルサく、起き上がるといろいろな意見を言う。これは父親の平右衛門で文寿が遣う。4人が舞台に揃う上田村の段、大夫は住大夫。

 八百屋の段では紋豊の婆さんが怖い。四方八方ガミガミガミガミ、いばりちらして、どなりちらして、針を飛ばすようなトゲを突き刺すような、いやみ意地悪の連発。鬼の形相、餓鬼の動き。

 道行思ひの短夜では、きっぱりとした勘十郎は侍の息子だ。覚悟が良い。気風のよさは振り上げた白刃の刃、切っ先のきらめき。世に未練はあろう、名残りがあろうけれども、義理に堅く引くところがない。お千代もさっぱりと覚悟は定めているけれど、それでも後ろ髪を引かれる思いは、おなかの子のこと。

 赤い毛氈を敷き、折り重なって斃れる2人の死骸。勘十郎が姿勢を低くして、じっとこの2人を見つめて弔っている。

狐と笛吹き

 春は桜。桜ふぶきの中に、ともねが現われる。純情にして可憐。対する春方は不器用でまじめな若者。夏は蛍、宵の情熱、愛と恋の立ち上がり。秋は紅葉、枯葉の舞い散る寂しさの中、秋風に燃え上がるオレンジ色の恋の炎。冬は雪。真っ白い冷静さの中に、いつもは淡白で不器用な春方が、酒の勢いなのか急に激しく野獣に変わる時がある。野獣になった時の元気の良さが、普段のおとなしい動きに対して印象が強い。

 吹雪の道行きは、横殴りの雪。小さな紙の雪が厳しくはげしく吹き付ける森閑とした森の中、湖の見える人里離れた山の奥、水色と白の純潔の世界。

衣装、美術、照明の、美しく混じりけのない日本的な色合いに透明感が感じられた。春方が玉女、ともねが和生。

08.05.25 国立劇場
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