二銭銅貨

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フィガロの結婚/東京文化会館(二期会)2011

2011-05-28 | オペラ
フィガロの結婚/東京文化会館(二期会)2011

作曲:モーツァルト、演出:宮本亜門
指揮:デニス・ラッセル・デイヴィス、演奏:東京フィル
出演:伯爵:与那城敬、伯爵夫人;増田のり子
   フィガロ:山下浩司、スザンナ:嘉目真木子
   ケルビーノ:下園理恵

下園理恵と嘉目真木子の2人の運動エネルギーが高く、元気良く活発だった。

下園理恵のケルビーノはボサーッとした頼りなさげな現代風の若い男の子で、ちょっと面白い。伯爵夫人に惹かれて口を半開きにして、心ここにあらずの表情をしている。けれども、これが実に軽薄そうな男の子の雰囲気だった。衣装は黒に白の縦線が何本か入ったパンツで、その白の筋と生地の間の所々に隙間がある現代風のものだった。頭はぼさぼさ。あちこち動き回り、忙しく出没して大活躍だった。「恋とはどんなものかしら」は伯爵夫人への情熱と、ためらいを動き回りながら芝居しながら表現する抑揚ある歌だった。これも面白かった。スタティックで静謐な雰囲気の歌ではなかった。

嘉目真木子のスザンナは、芝居も歌もキビキビてきぱきしていて歯切れが良かった。召使の衣装が良く似合って溌剌としていた。スザンナの理知的な雰囲気も良く出ていた。3幕目の「恋人よ、早くここへ」はソプラノの割りには低い音の多いアリアだったけれども安定して美しく歌っていた。

伯爵夫人の増田のり子は堂々として、2幕目の悲しそうなアリア「愛の神様」はちょっと印象が薄かったけれども、3幕目の「楽しい思い出はどこへ」は強く鋭く美しかった。透明感があってクリアだった。強いアリアが得意なんだ。

フィガロの山下浩司は落ち着いてそつない感じ、与那城敬はかなり悪い性格の伯爵を演じて歌も迫力があった。マルチェリーナが諸田広美で、バルトロが三戸大久。両方ともパワーがあってコントロールもされて良い歌だった。バルバリーナは馬原裕子で優しく柔らかい印象だった。

演奏は落ち着いて控えめ。レチタティーボの伴奏は指揮者の鍵盤楽器演奏による。序曲も落ち着いたテンポで室内楽のような印象だった。歌手とのアンサンブルも良くてバランスが良いと感じた。歌手の重唱が多数あったがどれもアンサンブルが良かった。特に、「手紙の二重唱」は美しく、うっとりだった。演出、美術、照明、衣裳もそれぞれそうした雰囲気で、落ち着いた感じで全体に良く調和していた。色合いもケバケバしくない。

衣裳は前田文子で、特に目立ったものは無かったがその割に印象に残るデザインだった。マルチェリーナの黒の毛に覆われたずんぐりむっくりな衣裳やケルビーノの衣裳は良かったと思う。スザンナの衣裳もこれといって特に変わったところが無かったけれども印象に残った。演出も特に変わったところの無いものだったけども良い印象の残るものだった。衣裳も演出も登場人物の個性に合わせてきめ細かく丁寧な仕事だったから良かったのかも知れない。、

とにもかくにも数ある重唱が良くて、全体が調和していて気持ちの良いオペラだった。

11.04.29 東京文化会館
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