二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

コジ・ファン・トゥッテ(演奏会形式)/新国立劇場10-11

2011-05-30 | オペラ
コジ・ファン・トゥッテ(演奏会形式)/新国立劇場10-11

作曲:モーツァルト
指揮:石坂宏、演奏:東京フィル(弦楽アンサンブル)
出演:フィオルディリージ:佐藤康子、ドラベッラ:小野和歌子
   デスピーナ:九嶋香奈枝、フェルランド:鈴木准
   グリエルモ:吉川健一、ドン・アルフォンソ:佐藤泰弘

椅子に腰掛けてるデスピーナは何だか不機嫌そう。出て来る時からして不満そう。皆が歌い終わるのを待っている時にもしばしば下をうつむいている。歌も芝居もデスピーナは不機嫌。辛らつ。このオペラでのデスピーナの不機嫌な辛らつさが作品に別の次元の「にがみ」を加えて面白い。作品がより一層豊かになる。九嶋香奈枝は役になりきって演じ、歌い、その「にがみ」がとても深かった。

他の歌手も同様、皆、役になりきって歌い演じていた。演奏会形式でもオペラ公演なみに面白かった。この演目自体が小規模なこうした上演に向いているのかも知れない。

九嶋香奈枝のデスピーナはメリハリがあって、はぎれ良くリズムが良い。元気が良くて、歌が踊っている、芝居も踊っている。不機嫌さがモチーフの歌と芝居だけれども、歌と芝居に明るさと元気さがあってキレも良く、楽しく辛らつなスーブレットだった。

佐藤康子は姉役でパワーが感じられる強いソプラノだった。低い方の音が良く出ていたと思う。小野和歌子は妹役で安定して強力なメゾ。歌は、はぎれ良く気持ちが良い。姉との二重唱が特に美しく、2人とも高音ではなく低い方の音が良く出てからみあい、滑らかで強いアンサンブルだった。この2重唱がこのオペラの見所だと感じた。

鈴木准はフェルランドで繊細な感じのテノール。真面目な性格の役作り。声量は大きくなかったが演奏が小規模だったので声がかき消される事はなかった。吉川健一はグリエルモで素朴なバリトン。おおらかで明るい性格の役作り。この2人の2重唱もバランスが良く、音も良く合って美しかった。佐藤泰弘のアルフォンソは手馴れた感じの歌と芝居で安定感が良かった。迫力のある良いバスだった。

各幕のフィナーレの演奏は小規模ながら迫力があった。ウェーバの法則によると人間の感覚のダイナミック・レンジは広いので、小規模でもメリハリさえつければ迫力が出る。序曲もピアノの演奏が良く走って楽しく感じた。ピアノは石野真穂。楽器は弦楽とピアノ、指揮者によるチェンバロで構成。歌手たちはオペラ公演のカバー歌手で演奏会形式による公演。
    
11.05.13 新国立劇場
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする