二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

ドン・ジョバンニ/日生劇場(二期会)2011

2011-12-11 | オペラ
ドン・ジョバンニ/日生劇場(二期会)2011

作曲:モーツァルト、演出:カロリーネ・グルーバー
指揮:沼尻竜典、演奏:トウキョウ・モーツァルトプレーヤーズ
出演:ドン・ジョバンニ:宮本益光
   レポレッロ:大塚博章
   エルヴィーラ:小林由佳
   ドンナ・アンナ:文屋小百合
   オッターヴィオ:今尾滋
   ツェルリーナ:盛田麻央
   マゼット:近藤圭
   騎士長:斉木健詞

外は大雨、陰鬱な、くすんだ灰色の空気が支配する古びた屋敷。
薄暗い部屋はホテルのレストランのよう。
左に給仕らしき人物が腰掛けて居眠りをしている。
音楽はまだ始まらない。
照明が入っても、まだ居眠りをしている。
雷、暴風雨。大変な日だ。
ノックの音。ノックの音。ノックの音。
えっ、騎士長が来たのだろうか。
まだ、音楽は始まらない。
豪雨、目を覚ましたレポレッロがドアを開けると、
現代の服装の若い2人づれが慌てて雨宿りに入って来る。
ピンクのスカートの若い娘、
紺の柄のセータの若い男。
少し落ち着いて、2人は食卓に招待される。
序曲が始まって、いよいよ始まる。

かなり読み替えている印象の演出で音楽とは合っていない。幽霊屋敷風のホテルにバンパイアのようなドンジョバンニが住んでいて、来訪者が来るとそれに喰いついて全員下着姿の幽霊にしてしまうといった趣向。それでもオチャラケタ雰囲気ではなくて、人間や社会について深くまじめに考察しているようだった。

舞台は傾いていて右に若干上がっている。これが錯覚によって水平に見えるので、逆にピットが若干右に下がっているように見える。オーケストラの人も大変だなどと時折思ってしまう。劇全体に神話の世界を描いたような横たわる女性と竪琴の絵画が出て来るが、奥の方の部屋が次々と現れるとそこにはその絵が壁一杯に飾られていて、しかもそれらの部屋も同様にさらに傾いている。面白い美術で楽しかった。

出演者の芝居の良さが印象的で、逆に素直な演出で無かった故か歌の良し悪しは分からなかった。歌が普通と違う。女性の歌は常にドンジョバンニを意識したものになっていたし、カタログの歌はやや遅いテンポで憂鬱な雰囲気で歌われた。確かにエルビーラの立場に立てばこの歌は憂鬱に聞こえる歌かも知れない。

特にマゼットとツェルリーナはほぼ出ずっぱりで主役陣の一部と言っても良い扱いで、近藤と盛田の芝居がとても良く、芝居という意味では主役の2人と言って良い出来だった。

文屋と小林は似たタイプの歌唱で強くクリアだった。結構動き回りながらのアリアだったが安定していた。宮本のメイクや芝居はバンパイヤみたいで面白く、歌ではシャンパンの歌が軽快、快速かつスマートな感じで良かった。大塚は安定した歌と芝居で物語の土台になっていた。今尾はトボケた表情で、ちょっとフォーク歌手のなぎらけんいちみたいで面白かった。歌は風貌に似合わず真面目で綺麗なテノールだった。斉木はラストの地獄落ちが良く、演奏とも良くアンサブルして大迫力だった。重唱はあまり動き回らないで歌った幕間前などの6重唱が良かった。

演奏はやや小さめな編成ながら迫力のあるきびきびした演奏で、特にラストの地獄落ちの迫力も十分だった。

だいぶ違和感のある演出だったが印象に残る舞台だった。

11.11.27 日生劇場
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする