二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

晩菊

2006-04-13 | 成瀬映画
晩菊  ☆☆☆☆
1954.06.15 東宝、白黒、普通サイズ
監督:成瀬巳喜男、脚本:田中澄江、井手俊郎、原作:林芙美子
出演:杉村春子、細川ちか子、望月優子、上原謙、小泉博、有馬稲子
   加東大介、鏑木ハルナ

小刻みな歩調で歩く杉村春子、拍子木のような音、
はぎれ良いリズム、
何かを探しているような、何かを追いかけているような、
杉村春子は一人身。
一緒に住む口のきけない、耳の聞こえない若い女中。
その健気で静粛な姿が背景です。
金勘定をする杉村春子。不動産屋らしき加東大介がお友達。

水仙のように細くしなやかな細川ちか子。
一人息子にママさんと呼ばせてる。
その息子に北海道に行くと言われて、寂しい気持ち。

タンポポのように太く明るく元気な望月優子。
一人娘に結婚すると言われて、こちらは、やけ酒。

何かを失う気持ち。
何か大事なものを無くしてしまう寂しい気持ち。

細くてしなやかな線、
太くて明るい線、
はぎれ良い短い刻みのリズム。
その3つがよじり合わさり、
粘りのある、強い、しぶとい気持ちが現れます。

出口の改札で切符を探す杉村春子。
あれ、どこへやったのかしら。
無くしちゃったのかしら。
やーねぇ。
大事なものを無くしてしまったのかしら。

ああ、あらあら、あったあった。
良かった良かった。
杉村春子と加東大介は不動産を見に連れ添って歩いて行きます。

いえ、誰も何も失っていませんよ。

この映画は林芙美子の短編「晩菊」「黒水仙」「白鷺」をベースに、そのエピソードを混ぜ合わせて新しい1つの物語としたものです。原作に無いエピソードもかなりあって、雰囲気や主題も原作とは異なっています。
06.03.18 パルテノン多摩、05.10.28 NFC

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 乱れる | トップ | 早春 »

コメントを投稿

成瀬映画」カテゴリの最新記事