二銭銅貨

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きもの/幸田文

2015-12-20 | 読書ノート
きもの/幸田文

新潮文庫

るつ子の子供時代から結婚までをトレースした小説で、ハイライトは関東大震災の時のエピソード。様々な体験を着物をモチーフにして語っていく。るつ子の成長の物語を作り物では無く、飾らず、率直に詳細に描き出していく。この成長を指南して行くおばあさんの指導は教条的ではなく、決して教科書的な匂いのまったくしないものである。時に、おばあさん自体が悩んでいる節もある。すべての案件が着物との係りで語られるところが、着物オタク的で面白い。

明治の気骨、江戸気質が全編にあふれている感じで気持ちがいい。きりっと、すきっと、きっぱりと。派手に飾らず、自分をおごらず、媚びず曲がらず。端正にして、毅然、誠実。

まっすぐな明治の人とまっすぐな江戸っ子は、五月の鯉の吹き流し。
こう来なくっちゃあいけねえよ。気持ちがいいやい。

15.11.28

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