二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

野獣の青春

2006-08-20 | 邦画
野獣の青春  
1963.04.21 日活、カラー、横長サイズ
監督:鈴木清順、脚本:池田一朗、山崎忠昭、原作:大藪春彦
出演:宍戸錠、渡辺美佐子、川地民夫、金子信雄

アンバランスな展開。
アンバランスな構成。
アンバランスな色使い。
不自然な動き。
わざとらしいポーズ。
ありえないセット。
唐突な成り行き。
とぎれる展開。
混乱したシーケンス。
ぎくしゃくした感じ。
壊れた物語
シュールな画像。
不思議な映画。

色が鮮烈で、印象に残ります。
題字の青みががった緑。
渡辺美佐子のお住まいの、入口の真っ青。
悪党が住む家の外、すすきの庭の輝く山吹色。
電話の赤と白。

宍戸錠が荒唐無稽にかっこいいです。
06.08.12 NFC
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花と竜(舛田)

2006-08-18 | 邦画
花と竜(舛田)  ☆☆
1962.12.26 日活、カラー、横長サイズ
監督:舛田利雄、脚本:井手雅人、原作:火野葦平
出演:石原裕次郎、浅丘ルリ子、岩崎加根子、葉山良二、大坂志郎
   芦田伸介

九州北部、
石炭を運び出す港湾の、
荷役労働者の縄張り争いを背景にしたドラマ。

若造時代の玉井金五郎から、
玉井組の大親分にまで成長していく過程を、
若き日の裕ちゃんが貫禄で見せてくれます。
その妻、万が浅丘ルリ子。

しっかりとした演出、撮影、セットで、
見ごたえのある映画です。
良くできています。

原作も有名なのでしょうか、
何度も映画化されているようです。
06.08.12 NFC
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エロ事師たちより・人類学入門

2006-08-17 | 邦画
エロ事師たちより・人類学入門
☆☆☆
1966.03.12 日活、白黒、横長サイズ
監督・脚本:今村昌平、脚本:沼田幸二、原作:野坂昭如
出演:小沢昭一、坂本スミ子、佐川啓子、近藤正臣

都会の片隅、
大きな港の薄暗い朝、
黒くうねる海面を、
ドンブラコ、ドンブラコと、揺れて揺れて進む黒い小船、
小さな小屋を乗せた小さな船が、
ゆったりと航行している大きな型貨物船の前で、
ちぢこまって浮いています。
その小屋の中には小沢昭一が1人、
いや、もう1人と、2人で棲んでいます。
どこに行くのでしょう?
何をしに行くのでしょう?
究極の技を秘めた神の国?
究極の技を秘めたエロの国?
天国か地獄か?
エロ事師たちの理想の国か?
「オトコとオンナの針シゴト」なんて歌ってさ。

人の宿命、人の業。
ねじくれて、ひねくれて、間違って、絡まって、伸びて、縮んで、
くっついて、離れて、切れて、合わさって、
ぐちゃぐちゃ、ぐるぐるで、何が何だか分からない。
気が狂うのも無理は無い。
死んでしまうのも無理は無い。
何もかも、うまく行かないし、
思いどおりになんて、何もいかない。

車に轢かれるし、ケガするし、
3入2落だったり、10入9落だったり、
だまされるし、裏切られるし、パクられるし、
ろくな事は無いよ。

それでも「ハタチ過ぎればただの人」なんて言ったりして、
結局、人類は皆元気です。
カラカラなんてことないです。
小沢昭一だって、元気になりますよ。
人類だって、元気になりますよ。
06.08.12 新文芸座
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にっぽん昆虫記

2006-08-16 | 邦画
にっぽん昆虫記  ☆☆☆
1963.11.16 日活、白黒、横長サイズ
監督・脚本:今村昌平、脚本:長谷部慶次
出演:左幸子、北村和夫、吉村実子、長門裕之、河津清三郎

昆虫のような人々。
人々のような昆虫。
昆虫のような左幸子。
左幸子のような昆虫。
フラフラと汗水タラして、しつこくしつこく山を登る、昆虫。
フラフラと汗水タラして、しつこくしつこく山を登る、左幸子。
何を思う?何をしようとする?何を求めて登る?
誰のために?
何のために?
昆虫さん頑張る。
左幸子さんがんばる。

よじくれて、ねっとりと、絡み付いて、湿っぽく、
しつこく、ねばっこく、複雑に、流れて、
悲しく、嬉しく、
非情に、無常に、息も絶え絶え、熱っぽく、熱く、
身も心も、魂も、燃える、燃え上がる。
つらくても、厳しくても、絶望しても、しなくても、
なりふり構わず、
山に登る。

泥に足を取られて下駄を割る左幸子。
06.08.12 新文芸座
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楢山節考(今平)

2006-08-15 | 邦画
楢山節考(今平)  ☆☆
1983.04.29 東映、今村プロ、カラー、横長サイズ
監督・脚本:今村昌平
原作:深沢七郎 「楢山節考」「東北の神武たち」
出演:坂本スミ子、緒形拳、あき竹城、左とん平、倍賞美津子
   小沢昭一、常田富士男、殿山泰司、清川虹子、三木のり平

東北の冬山、雪に覆われた山肌、雪に埋もれた木立、
重厚な山々を縦走する如く、舐めるように、しつこく、低く、
低空飛行しながらの空撮で、映画は始まります。

山のふもとの貧しそうな寒村、
もっこりと雪を頂いた藁葺きの家々は、
可愛らしく木ノ子のようにたたずんでいます。
そこで人々は生活をしています。
そこで動物達は生を営んでいます。
そこで生命は、その命をつないでいます。

生命の連鎖の話です。
生命とは、増殖淘汰を繰り返しながら、
環境に適合する最適解を求めるプロセスで、
コンピュータ用語で言うところの最適解探索アルゴリズムです。
いわいるGA、ジェネティック・アルゴリズム、
遺伝的アルゴリズムです。
誰がシミュレーションしているのでしょうね?

遺伝的アルゴリズムとは、
その増殖過程で微妙に遺伝子の異なるさまざまな生命を生成し、
厳しい環境の中で、その生命を互いに競争させて淘汰し、
最も環境に適合した生命を残し、それをベースに、
再び増殖淘汰を繰り返していきます。
環境に最も適合する、解としての生命を見つけようする手段です。

生と死の連鎖が生命です。
今のところ尽きることなく、
この生命の連鎖、
遺伝的アルゴリズムのシミュレーションは地球上で継続しています。

坂本スミ子は小さい、背の曲がった、気丈なバアさん。
質実剛健。
周りに気を使い、常に局所最適でなく、全体最適を考えている人。
楢山行きは全体最適の結論なんです。
緒形拳は迷える長男。人の心の揺れの表現。
あき竹城は丈夫な嫁さん。
怒りながらも耐えて、藁を何かに叩き付ける仕事をしている。
左とん平は、夢大き若者、と言っても1つだけの夢だけですが。
その夢を清川虹子がかなえてあげます。タマゲタ。
倍賞美津子は美しく、その美を小沢昭一に恵んでやります。
「青春の門」では吉永さゆりに恵んでもらったし、
この人、役得多すぎ。

へびやカエル、蛾にカマキリ、
フクロウとタヌキ(?)、緒形拳にあき竹城、
様々な動物達が名演技。
ご苦労様です。撮影も大変だったろうな。

クサレのにおいが漂っているような、
味わい深き東北の、
雪に覆われつつも、
元気で活力にあふれる物語。
面白い映画です。

「楢山節考」は木下恵介、
「東北の神武たち」は市川崑で映画化されている。
ダブルリメイクの映画のようです。
06.08.06 新文芸座
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