二銭銅貨

星の数: ☆良い ☆☆すごく良い ☆☆☆激しく良い ☆☆☆☆超激しく良い ☆☆☆☆☆ありえない

鶴八鶴次郎

2008-06-11 | 成瀬映画
鶴八鶴次郎 ☆☆
1938.09.29 東宝、白黒、普通サイズ
監督・脚本:成瀬巳喜男、原作:川口松太郎
出演:長谷川一夫、山田五十鈴、藤原釜足、大川平八郎、三島雅夫

新内語りの大夫が長谷川一夫、
相方の三味線が山田五十鈴。
2人、組で鶴八鶴次郎。
寄席の芸人。

すっきりと、
筋の通った姿勢で三味線を弾く山田五十鈴。
柔らかい線の中に、
強情でしぶとい気迫を見せる長谷川一夫。
芸に関しては一歩も譲らず、
ささいな事でも許せない。
角突き合わせ、言い争って、
すぐに喧嘩だ。

仲を取り持つ藤原釜足と三島雅夫。
人が良い2人。

芸の厳しさ。
道の嶮しさ。
恋のはかなさ。
情の哀れさ。

長谷川一夫、山田五十鈴。

08.06.06 NFC

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痴人の愛

2008-06-09 | 邦画
痴人の愛 ☆☆
1967.07.29 大映、カラー、横長サイズ
監督:増村保造、脚本:池田一朗、原作:谷崎潤一郎
出演:小沢昭一、安田道代、田村正和

極彩色の柄、
はでなナオミの衣装の数々。
大写しにした肉体の数々。
散乱する下着の数々。

火花散る譲治の心。
溺れる激情。
狂う気持ち。
恋しい。
いとおしい。

馬乗りになる安田道代。
馬になる小沢昭一。
何度も何度もそうなる、
2人はクサレ縁。

あっけらかんとした脳天気な役柄に、
この世の厳しさを感じさせる、
鋭い視線の安田道代。
どうしようもない破滅の芝居が小沢昭一。
息をも付かせぬ緊迫の演出が増村保造。
人生の荒海にこれから出て行こうという、
まじめな青年が田村正和。

08.05.31 神保町シアター
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08国立劇場5月/心中宵庚申、狐と笛吹き/文楽

2008-06-08 | 歌舞伎・文楽
08国立劇場5月/心中宵庚申、狐と笛吹き/文楽

(第2部)
心中宵庚申

上田村の段
八百屋の段
道行思ひの短夜

 姉おかるは文雀。端整でしっかりと、すっきりとして、縫いものをしている姿はすっとしている。蓑助のお千代は健気で柔らかい。その中にもちょっと頼りない感じがあって、おろおろして、行き場のない、居所のない、やる瀬の無い様子。夫の半兵衛は勘十郎。実直、真っ直ぐな、まじめで色白の若者。頑固な年寄りは病気で伏せっていたのに、義理にウルサく、起き上がるといろいろな意見を言う。これは父親の平右衛門で文寿が遣う。4人が舞台に揃う上田村の段、大夫は住大夫。

 八百屋の段では紋豊の婆さんが怖い。四方八方ガミガミガミガミ、いばりちらして、どなりちらして、針を飛ばすようなトゲを突き刺すような、いやみ意地悪の連発。鬼の形相、餓鬼の動き。

 道行思ひの短夜では、きっぱりとした勘十郎は侍の息子だ。覚悟が良い。気風のよさは振り上げた白刃の刃、切っ先のきらめき。世に未練はあろう、名残りがあろうけれども、義理に堅く引くところがない。お千代もさっぱりと覚悟は定めているけれど、それでも後ろ髪を引かれる思いは、おなかの子のこと。

 赤い毛氈を敷き、折り重なって斃れる2人の死骸。勘十郎が姿勢を低くして、じっとこの2人を見つめて弔っている。

狐と笛吹き

 春は桜。桜ふぶきの中に、ともねが現われる。純情にして可憐。対する春方は不器用でまじめな若者。夏は蛍、宵の情熱、愛と恋の立ち上がり。秋は紅葉、枯葉の舞い散る寂しさの中、秋風に燃え上がるオレンジ色の恋の炎。冬は雪。真っ白い冷静さの中に、いつもは淡白で不器用な春方が、酒の勢いなのか急に激しく野獣に変わる時がある。野獣になった時の元気の良さが、普段のおとなしい動きに対して印象が強い。

 吹雪の道行きは、横殴りの雪。小さな紙の雪が厳しくはげしく吹き付ける森閑とした森の中、湖の見える人里離れた山の奥、水色と白の純潔の世界。

衣装、美術、照明の、美しく混じりけのない日本的な色合いに透明感が感じられた。春方が玉女、ともねが和生。

08.05.25 国立劇場
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