平日、初回の上映を観ていた客は、3人だった。
この映画を観ていたら、竹中直人の「無能の人」を思い出した。
映画の「カラー」が似てるんだよね。
ベタでも、ちゃんと笑えるところや、服や小物の色の使い方なんかが。
出てくるコップが、いつも可愛かった。
そもそも、荒川良々が主演の映画ができるとは思わなかったよ。
彼に似つかわしい、キモおかしい作品だった。
あかりみたいな子は、木村佳乃が可愛いから「大丈夫」なんであって、
あれでブスだったら、イラッとするよ。(笑)
いるよね、久信みたいに「いい人」になってしまう人。
岡田くん、本当にいい人に見えたもの。
でも、秀逸だったのは、ココリコの田中。
仏像修復の芸術家、ハマリ役だった。
あかりが自分の描いた絵を持って、彼を追いかけた時、
途中で出会った子供に「見かけなかった?」って、
彼の特徴を説明するんだけど、肝心な事を言わないんだよ。
でも子供の方が、簡単に言っちゃうの。
「赤い顔の人?」って。
彼の顔には、目立つアザがあった。
ああ、大人って「本当の事」から逃げてるんだって、
先入観の無い子供から、ガーッて来るものを感じて泣けた。
こんな変な映画で、泣くとは思わなかったよ。(笑)
でも、彼が奈良に行ってしまうからって、
チクワ投げつけて、修復した花瓶を壊す、あかりの行動はすごい。
あれを愛情表現だと理解し、
プロポーズしてくれる男は、なかなかいないだろう。
でもそのへんも、田中の芸術家っぷりは、自然に見せてくれた。
とてもユルく、したたかな映画であった。