ノイバラ山荘

花・猫・短歌・美術な日日

オルセー美術館展2010「ポスト印象派」@国立新美術館

2010-06-06 14:39:39 | アート

昨日5日、六本木でオルセー美術館展を観てきました。
カナダのお友達のFさんと、去年のゴーギャンに続き
2度目のデートです。
彼女はとても感覚が鋭くかつユニークな方で、
一緒に観るととても楽しいのです。

10時に待ち合わせしたのですが、
もう切符売り場は行列です。
土日の美術館はほとんど経験したことがありませんので、
まさかこんなに混むものとは。(・ω・;A
館内の2階入り口にも行列です。
先日行った1階のルーシー・リーにも並んでいます。

先にチケット買っていらしたFさんを待たせて
チケットを買いに走り、入場すると
1枚目のドガの前はこんもりと人垣ができています。
一室目は絵に近づけない状態でしたので、
後ろのほうから見ることにしました。

全体を10章、10の部屋に分けてあり、
1886年最後の第8回印象派展に登場した印象派を継ぐ
ポスト印象派の画家たちの紹介から始まり、
スーラ、ロートレック、ゴッホ、ゴーギャン、ポン・タヴェン派、
ナビ派、アンリ・ルソーなどを辿り、最終章、装飾の勝利として
芸術と生活の融合でしめくくってあります。

オルセー美術館が改修中ということで、貸し出された
115点という作品点数もすごいですが、その内容も
美術の教科書でみたような代表作といわれる絵が数多く、
しかも1メートルほどの至近距離から、
ガラスなどの隔てるもののない状態で観られるのです。

感激です。
こんなことは滅多にありません。
さんざんいろんな展覧会でがっかりしてきたので
最初はあまり食指が動かなかったのですが、
同僚からいいという情報を得て、来てみれば大当たり。


印象に残った作品を何点かご覧いただきましょう。
どれもこれも見ごたえがありましたが、
①1番好きなのはゴッホ「星降る夜」。
ゴッホのほかの絵に比べるとファンタスティックな感じで、
近づいて丁寧に1つずつ描かれた星を見ていると、
画家の幸福感が伝わってきました。

苦しみの多かった人生で、しかし絵を描いているときには、
最高に幸せだったに違いないです。
しかもこの星を描いているときにはとくに。
私生活で何かあったのかもしれません。
・・・あっいけない、また泣きそう・・。

以前、ゴッホの桃畑の絵を観たとき、
その画面のゆらぎがこちらの空間にまで広がる感じがして
すごい絵描きさんだと思いました。
筆致の強さが頑固さ、信念の強固さをあらわしています。
何ひとつゆるがせにしない、ゆずらない・・
今こんな人がそばにいたら、
つきあいにくい変人と思うに違いありません。
しかし正直に自分を生きたゆえに、
その時代には受け入れられなくても、
こうして100年のときを越えて、私たちの胸を打つのです。

②セザンヌの「たまねぎのある静物」。
たまねぎなどの物の輪郭は、ものの内側の質量と
外側の空間からのせめぎあいで決められてゆくと思うのですが、
近くで見ると、ここにこの絵の具をおいて、
それからこの色を置いて、という画家の試行錯誤が見えて、
飽きなかったです。
画家が描いた距離で観るというのは、画家の息遣いが感じられて
とても贅沢な勉強をさせてもらっているようです。

 ③ゴーギャンの「レ・ザリスカン」。
色のハーモニーが美しく、教会音楽が
わきあがる感じがしました。

 
④ジョルジュ・レメン「ハイストの浜辺」
これは初めて観ました。
点描なのでもちろんスーラの流れをくむ方でしょうが、
デザインがモダンです。


Fさんの提案で、昨年は「欲しいならどの1枚」を選んだのですが、
今年は「家のここに置きたいこの1枚」を選びます。
  
まずお玄関から。ボナール「白い猫」。
階段はドガ「階段を上がる踊り子」
浴室にロートレック「赤毛の女」

 トイレにラコンブ「紫の波」
寝室には「星降る夜」
   
キッチンにセザンヌ「台所のテーブル」
居間にはドニ「木々の中の行列(緑の木立)」と
モネ「ロンドン国会議事堂」
居間のピアノのそばにゴーギャン「レ・ザリスカン」

いや~楽しかった。
日本一ぜいたくな家になっちゃいました。(´・ω・`)

さて、とんでもない企てが終ったあとは、ランチです。
国立新美術館がミッドタウンへと歩く途中、
ちらしを渡された鮨「服部」へ。
角のガソリンスタンドの向こうの路地を入って
すぐの地下のお店です。
にぎり1300円。上品な感じでおいしかったです。

 
ミッドタウンへ移動していつもの「IDEE CAFE」。
ケーキ500円+ドリンク200円。
オレンジチョコケーキとハーブティーです。
おしゃべりに花を咲かせたあと、裏手の檜町公園へ。

ここに写真があります。

毛利藩下屋敷あと、きれいに日本庭園を作ってあって、
水の流れにガクアジサイがきれいでした。
名前がわからなかった黄色い花は
ヒペリカム(オトギリソウ属オトギリソウ科)の1種。
この仲間に未央柳(びようやなぎ)、金糸梅があります。

時間を忘れて池のほとりに座っていました。
風になびく青草と柳、水にくる鳥、足元にくる雀、
水の反射光がちらちらして、
ほんとうに気持ちのよい場所でした。

メイプルティーとメイプルシロップをいただいたので、
ホットケーキ焼こう♪

早稲田大学かけあし観光

2010-01-22 19:44:45 | アート
先日、用事のついでに早稲田大学周辺をうろうろして、
ケイタイの写真を撮りまくり(肝心なときに、愛用デジカメを忘れました)、
博物館を見学してまいりました。
まるっきり、おノボリさんだわ~(´・ω・`)

昨年2月、先生の最終講義の折、博物館があるのを知り、
いつか見学してみたいものだと思っていたのでした。
地図で確認すると、昨年4月に行った桜の江戸川橋・永青文庫と
目と鼻の先ではありませんか・・あのときは池袋から地下鉄だったので、
全然別の方向に行ったつもりでした。


まずは大隈講堂。

正門からすぐ左側に2号館、
「早稲田大学會津八一記念博物館」があります。


建物自体がクラシカルで優美です。
1925建設、工学部教授今井兼次さんの設計。
20年位前までは図書館として使われていたそうです。

ほんとは館内で写真を撮ってはいけないのですが、その窓があまりに美しくて。
大隈講堂が見えました。

2階常設展示の東洋古代美術のコレクションが素晴らしい。
美術史学の會津八一教授が教育研究のために蒐集された
明器、銅鏡、仏教美術など。
明器というのは、お墓の副葬品なのですが、
竈や井戸、食器の模型まであっておままごとみたいで面白かった♪

會津八一の名は歌人としてしか存じ上げなかったのですが、
東洋美術が専門家でいらしたのか!と初めて知りました。

書にもほれぼれ。

寄贈された土佐林義雄氏のコレクション、アイヌの民族資料のうち、
首飾り「タマサイ」のトンボ玉、トルコ青が目の覚めるように美しかったです。

1階には富岡重憲コレクション展示室と大隈記念室があります。
大隈記念室が意外と面白く、大隈重信演説レコードで佐賀弁を聞き、
ビデオで動画や写真を見、年譜を読み、こんな方だったのか!と感心しました。

昨年の最終講義の時の建物3号館を右に、
直進して突き当たりが「演劇博物館」です。

1928、坪内逍遥博士古稀と「シェークスピヤ全集」全40巻の
翻訳完成をお祝いして設立。
建物はエリザベス朝時代16世紀イギリスの劇場フォーチュン座を
模しているらしいです。
階段までが木で、上り下りにぎしぎしと音がするのが素敵♪

私は演劇に暗いので展示自体はざっと見学しただけなのですが、
3階建てのうちの2階「逍遥記念室」は楽しかったです。
逍遥が貴賓室として使っていたというこの部屋、
天井には彼の干支の羊がデザインされており
大きく重厚な机と椅子が置かれ、棚にあるシェイクスピア全集・
人形や羊の置物などのコレクションを眺めることができました。

閉園の大隈庭園の前を通り、大隈会館を見学し、
リーガロイヤルホテルまで歩きます。

大隈会館・庭園はもと大隈重信の邸宅跡なのだそうです。
リーガロイヤルホテルは早稲田大学の土地を長期借りているそうです。
なるほど~。

お夕飯は少し歩いておでんの「志乃ぶ」
有名なお店なのですね・・。
おでん、やわらかくておいしかったです。

冷泉家―王朝の和歌守(うたもり)展@東京都美術館

2009-11-29 22:11:11 | アート
先日、銀杏の黄葉美しい上野で冷泉家のお宝を見てきました。
「冷泉家―王朝の和歌守(うたもり)展」

短歌を勉強する以上、
和歌に無関心ではいけないと観る決心をしたものの、
日本史も日本文学も書にも盲目同然の私ですので、
音声ガイドを借りることにしました。

展示の書を眺めながら、解説を読みながら、音声ガイドを聞くという
複雑な行為は私には難しく、
ワンフロアを見終わる毎に座って目を閉じて、
もう1度音声ガイドに集中しました。
結果的にはこれがとても鑑賞の助けになり、
またこの冷泉家展を特集した「芸術新潮11月号」も、
初心者の私には理解の助けになりました。

冷泉家の「御文庫(おぶんこ)」には俊成・定家以後の典籍・文書が
納めてあり、ここからほぼ400点が展示されています。

 
俊成の鋭角的な字、定家の剛毅な字、いずれも個性的で
素晴らしいと思いました。

勅撰和歌集「古今和歌集」「後撰和歌集」、
夥しい私家集など定家のエネルギッシュな書写は、
もちろん歌の家としての自覚があってのことでしょうが、
和歌をわがものとしようとする気迫あふれる字と思いました。
本歌取りも一朝一夕に成ったものではなかったのです。

「源氏物語」「伊勢物語」も繰り返し書き写したので、
写本を遡ると必ず定家に辿り着くらしいです。


反故紙の裏に60年に渡って書き続けられた定家の日記
「名月記」も巻物になっていて面白く見ました。
世間のできごとや愚痴や不満、熊野行幸、天文のニュースなども
織り交ぜさまざまなことが書き込まれています。

使われた紙は灰色の再生紙だったり、手紙の裏に書かれていたり。
私家集でも紙や装丁に凝った美本がある一方、
こうしたリサイクル、リユースの紙が使われているのが印象的でした。

平安中期、源時明の私家集「時明(ときあきら)集」、
作者未詳ですが字だけでなく装丁も美術品のよう。
見た瞬間にはっと息を飲むような美しさです。
人の手に書かれたとは思えぬ字です。

冷泉家の和歌を守るための800年の苦闘は、
この展覧会を観なければ知らなかったことでした。
和歌なんですから、国によって保護されていたという
イメージだったのですが、そうではなかった。
第二次世界大戦後の混乱をくぐりぬけたものの、
1981年に財団法人冷泉家時雨亭文庫が設立されるまで、
免税措置が受けられずあわや売却ということにまで
追い込まれていたのでした。


私たちの短歌とは違うものだけれど、和歌は根っこの部分。
現代短歌は私とあなたの違いを詠み、
和歌は私とあなたの同じところを詠む、
また現代短歌は目で読み、
和歌は声に出して読むのだ、
という冷泉貴実子さんのお話が音声ガイドの途中に挿入されていました。

友人が声に出して私の歌を読み上げてくださっている、
というのを恥ずかしい思いで聞いたのですが、
これは古式にのっとっているのでした。
迷う時は根っこに帰るのがいいのかもしれません。

カタログ見ながら時を遡ってます。
ああ、しあわせ(人-ω-)。o.゜。*・★