ノイバラ山荘

花・猫・短歌・美術な日日

鶯と書と机

2011-02-19 12:20:24 | 短歌
ここ数日、佐佐木信綱の歌集から鶯の歌を探しています。
24首ありましたが、その中で好きなのはこの御歌です。

・多摩川の水あたたかき朝東風(ごち)に若いうぐひす岩づたひすも 『新月』

『新月』は信綱40歳のときの歌集、
若いうぐいすに新進気鋭の姿が重なります。

晩年の歌を集めた『老松』には子が吹く鶯笛の歌が3首あります。
そして最後の鶯の歌は自らが吹く鶯笛なのです。

・老い心幼きにかへり窓によりて取(と)うで吹き鳴(な)らす鶯笛を

この時、信綱先生は膝を病み、
家内を歩くこともかなわぬ日々をお過ごしで、
その中で詠われたことを思いますと、鶯笛の音は胸に迫ります。

先生には庭に窓辺に訪れる小鳥との交感の歌が多く、
また旅先でも小鳥の声を聞き分けていらっしゃいますが、
ついに自ら鳥となられたのでしょうか。

「歌壇」2月号「編集室拝見」で
わが結社の編集部のメンバーが紹介されました。


K岩さんの発案で、先生のお宅にかかる「竹柏園」の額を前面にして
お庭で写真が撮られたのですが、この額、
信綱先生が富岡鉄斎に求めて書いていただいたもの。
その御歌を発見しました。

・仰ぎ見つつ折々に吾をむちうちぬ雄渾なる文字の「竹柏園」の額  『老松』

学者として信綱先生が研究に没頭されていた様子がうかがえます。


これは信綱、治綱両先生が使われた文机です。
漆塗りで、もとはよいものらしいですが、
今はぼろぼろで割れた脚を紐でくくってあったりします。
校正の机として使わせていただいているのですが、
でこぼこで使いづらいし、どなたかがつけられた
修正インクの白がついていたりして、
信綱先生の机と知るまではあまりうれしくなかったのです。

この文机をどれほど先生が愛されたことでしょう!
やはり『老松』にこの机の歌があります。

・わが机によらず書斎の一隅に仰臥すすでに四十余日を
・足(あ)なやみに歩みは得ざれ終日(ひねもす)を文机にむかふ幸人(さちびと)といはむ
・文机に向ふよろこび嬉しもよ清くしづけきこの朝心

先生の背負う重さを支え続けた机。
先生の夢の世界を広げた机。
あまりに有名なこの御歌もこの机で作られたのですね。

・花さきみのらむは知らずいつくしみ猶もちいつく夢の木実(このみ)を

こんな色彩に優れた艶の歌もあります。

・柿落葉はつかにのこる紅ゐの色うつくしみ文机におく

朱の机にまだ鮮やかな紅の残る柿の葉、
きっと机上には書物が何冊か積んであり、
一冊は読みさしであったに違いありません。
聴覚、視覚にすぐれた方でもあったのだと思います。

    
『佐佐木信綱全歌集』2004 ながらみ書房

「歌壇賞」授賞式

2011-02-18 13:26:55 | 短歌
1週間前のできごとです。
アップが後手後手ですみません(・ω・;A

わが結社の佐藤モニカさんが
本阿弥書店の「歌壇賞」を授賞なさり、
2月10日アルカディア市ヶ谷で5時から行われた
授賞式とお祝いの会に行ってまいりました。

おめでとう、モニカさん!


授賞式の会場です。
一番前、審査員の方々の真ん前に座りました。
どきどき・・。
写真係ではないのですが、
モニカさんのいいお顔が撮れたらとがんばりました。
マイクが邪魔になったりして、なかなか角度が難しく、
しかもこの大事な時にフラッシュがなかなか作動せず、
うーむという出来の写真しか撮れませんでした。


パーティの会場です。
ここはお料理がおいしく、また量もたっぷりあったので、
夢中で食べて飲んでおしゃべりしてしまいました。

 
授賞の先輩でいらっしゃるH溝さんの「写真は撮らないの?」
のお言葉にはっとした時にはこのありさま。

デザートのケーキのカヌレが抜群においしくて(人・ω・)☆

代表の本阿弥秀雄さん、歌集は拝読しましたが、
お目にかかるのは初めてで、あまたの女性の垣根をかきわけて、
並んでお写真を撮らせていただきました。

歌壇賞は俳壇賞と同時の授賞なので、
俳人の方もたくさんみえられていて、
山西雅子さん、今井聖さんとまたお目にかかれてうれしかったです!

さらに2次会では熊野に御一緒した本阿弥書店のO田Y子さんの
豪快な飲みっぷりに感嘆しました。

あまり授賞式やパーティなどには出てこなかった私ですが、
長くなるとそれなりに顔を見知る方ができてくるものですね。

      ***

モニカさんの今回の授賞作「マジックアワー」は職場に取材なさった一連です。
わかりやすくて好評と先生がおっしゃっていました。
編集部のお仲間でもあるモニカさんの、これからのご活躍が楽しみです。

・革靴はコッぺパン色今朝われの夢に来て足を踏み鳴らすひと
・ひざまづき接客するといふことに慣れたりわれは求婚の王子
・「薄っぺらな言葉は吐くな」販売の仕事得しわれに父は言ひたり
・おもてなしの心学ばんと図書館で千利休の本借りてみる








シェニール織②

2011-02-18 12:24:09 | 工芸
みなさま、こんにちは。
ご無沙汰しています。

家にこもってひたすら本を読む毎日です。
(大航海もやってるけど)

この夏、2度体験したシェニール織ですが、
「半年後にまたやりますからどうぞ」と
言われていたのはすっかり忘れていました。
シェニール織体験①
違う模様の①'

偶然、滅多にいかないデパートの
しかも地下の食料品売り場ではない
階上へゆくエスカレーターのわきの会場で、
体験教室をやっているのにでくわして、
もうこれは「運命」なのではないかと思いました。

しかたない(´-ω-`)✿←しょっちゅう「運命」と出会っている(笑)

というわけで、また2回もやってしまい、
しかも今度はショルダーバックに
仕立ててもらうことにしました。


今回はこの花と蝶の模様を2回やりました。

 
(・ω・;A このような場所でやるのでお客さんが足を止めて話しかけてきます。


もうだいぶ慣れたのでいいのですが、
最初はやったこともない手順を覚えるのに必死だったので、
「話しかけないで!!!」(´;ω;`)っていう感じでした。

初心者でもそれなりのものができますが、
やはり回を重ねると複雑な模様ができるようになるし、
出来もよくなるので、ついつい欲が出てしまいます。

何よりもすでに織ってある糸自体がきれいなので、
触っているだけで幸せです。

陶芸でろくろを回すときには、1日かがんで集中しますが、
機の前に座るのも同じ感じです。
ひと模様わずか1時間余りで出来上がってしまうので、
ほんとにあっと言う間です。

来月には縁かがりしたものとバッグが出来上がってくるので、
1つはまた額に入れて飾りたいと思います。

由幾先生の緋桃

2011-02-08 13:52:29 | 短歌
長くわが結社の主宰でいらした由幾先生が2日になくなられ、
4日、5日とご葬儀が行われました。

賢く美しく、毅然としていらして、
女性のお手本となるべき方でした。
先生なくしては110年余りの結社の火は
続かなかったのです。

入会させていただいてから10年近く、
作品の添削をしていただきました。

当時、神奈川の山奥に住んでいたのと家庭の事情から、
都心で行われる勉強会に参加できなかったので、
入会のご紹介して下さったS藤さんが
由幾先生にお話して下さったのです。

毎月、どんなに待ち遠しかったことか!
必ず添えられていた短いお手紙も楽しみで、
よい歌には○をつけてくださり、
てにをはを直され、1行の歌評が添えられています。
拙ない歌でも全体的に作りなおされるということはなかったです。

当時、返信用の、宛名を書いた封筒を同封するという知恵がなくて、
お忙しい先生に私の宛名をずっと書かせていたのですが、
ずっと八王子市を八王寺市と書かれていて、
何故だろう??と不思議に思っていたのですが、
先生が書かれるとステキで、自分が八王子よりも八王寺に
住んでいるような気になったものです。

美しい字のお手紙を毎月いただくという至福。
あたりまえのようにいただいていたのですが、
今から思えば奇跡のようなことです。

ご高齢でカルチャー教室を教えられることからも退いていらしたので、
多分、私が弟子の最後尾なのだと思います。
取り巻きを嫌われて、旅先での鞄なども
「わたくしが持ちます」と他人に触らせなかった先生ですが、
やはり垣根のように先生を慕う方々が取り巻いていらして、
パーティで先生に御挨拶しただけで、
「この方どなた?」と怪訝そうに見られたことでした。

まさかそれから校正のお手伝いをさせていただいたり、
全国大会の係になったりするとは、
思ってもみなかったことです。

志が低くて全く申し訳ないことなのですが、
短歌を作ることが好きで、魅力的な先生ご一家に
ただただついてまいりますという思いだけで
10数年たってしまいました。

    ***

茫然としていますが、
頼んであった古書や歌集が届くので、
ぼつぼつ読んでいます。
「お勉強なさいませ」とは由幾先生の口癖でありました。

長くお庭にあって先生が毎年お歌に詠まれていた緋桃の木は
杖をつくほどの老木でありましたが、
数年前に伐られて今はもうありません。

・溜めてゐし思ひ一気に吐き出せる緋桃の花は夕かげのなか

                     佐佐木由幾『一茎の草』



王冠バード

2011-02-07 13:37:07 | 美術
こんにちは ノイバラです。

暇な冬、職場で作りためるガラスフュージング技法のハッピーバード。

今年は王冠バードちゃんを作りました!

昨年はちょうど短歌で「帽子」の歌を探していたので、
バードちゃんにも帽子をかぶせてみよう!
と帽子バードをたくさん作ったのですが、
今年は王冠に発展させてみました。


こんな感じです。


2日分勢ぞろい。


最後の一個。

オンラインゲームで
王冠をいくつか入手してかぶっているから抵抗なし(笑)
お洋服と色もちょっとノーブルな感じにしてみました。


こちらは王冠バードを作る前に作ったバードちゃんたちです。
胸元にミルフィオリ(「千の花」ベネチアンガラスの金太郎飴方式の花模様)を
使ってみたのですが、職場にあったのは収縮率が合わず、
割れが出たので却下です・・お気に入りなのですが。

春から販売されますが、精一杯おしゃれさせた
バードちゃんストラップ、皆さんに愛していただけるでしょうか。

ぐるっとパスで回るミュージアム①

2011-02-01 18:51:15 | 美術
「ぐるっとパス」で回るミュージアム!
いただきもののパス大活躍です!

期限の3か月のうちにいったいいくつ回れるのでしょう??
年末年始の忙しい時期と重なって苦戦でしたが、
かなりの善戦といえるのではないでしょうか!
あと残すところ一週間となり、経過報告です。

①夢美術館「水木しげるの世界--ゲゲゲの展覧会」 12/19
②北区飛鳥山博物館 12/24
③古代オリエント博物館 1/21
④世田谷美術館「佐藤忠良展」 1/25
⑤泉屋博古館別館「中国青銅鏡」 1/28
⑥大倉集古館「きらめきの近代」 1/28


①まずは地元の夢美術館です。
 
夢美術館の前は国道20号線で、
甲州街道八日町宿の碑が立っています。

特に鬼太郎のファンというわけではありませんが、
テレビドラマの「げげげの女房」は面白かったです。

入り口のディスプレイ。
ここではテレビの水木しげる特集番組の放映もしていて、
1時間半の番組をばっちり最後まで観てしまいました。


「妖怪道五十三次」の出来がよくて、
広重の東海道に出現する妖怪たちを楽しみました。

実際に木版画で刷られたものもあり、
色彩など遠くから見るとそっくりです。

水木しげるさん自身、彩色に昔ながらの染料を
取り寄せて使ってらっしゃるそうで、これは
紙芝居を描いていらした時代からなのだそうです。

むちゃくちゃ絵のうまい方だったのだなーというのは、
少年時代からの画を見るとわかりますし、
10代後半に描かれていた絵本の挿絵などは、
今でも十分通用するファンタスティックな絵柄です。
戦前戦中にこのような世界を受け入れる余裕が
日本にはなかったのでしょう。

そのまま従軍し南方の島で亡くなられていたら、私たちは
水木しげるの世界を知ることができませんでした。
しかしこの方は強運の持ち主なのですね。
九死に一生を得て、左手を失いながらも右手で描きつづけ、
ゲゲゲの世界を作り上げられたのです。

こういう特集を見る良さというのは、
固定観念や思いこみで遠ざけていたのが、
狭い見かたであったのだと気づかされることなのだと思います。


②北区飛鳥山博物館は飛鳥山公園にあります。
    
実は隣接の「紙の博物館」が目的でしたが、
ぐるっとパスには月曜定休と書いてあったのに金曜定休で、
仕方なくこちらを観たのですが、期待を裏切られる面白さでした。
博物館というと面白くないというイメージですが、
展示に随所楽しませる工夫がしてあります。


このような舞台がしつらえてあって
 
幕があがると映像が映し出され近世の歴史を勉強することができます。


飛鳥山は江戸時代からの桜の名所なのだそうです。
広重をはじめとして浮世絵にたくさん描かれています。
吉宗が桜、松、楓を植えさせ、老若男女が集い賑わっていました。
当時イギリス人が水と緑の豊かな飛鳥山を訪れ、
風光明媚な郊外に感嘆しています。
茶屋や料理屋もあり、花見を楽しむ様子は
郊外のピクニックの楽しさを発見したばかりの
イギリス人の目には珍しかったようです。


近所には石神井川沿いの滝野川など渓谷と紅葉の名所もありましたが、
現在では当時の面影はないようです。


王子稲荷神社のキツネも有名、落語にもなっていて、
CDで落語を楽しむめるサービスもあります。


日本最大規模、中里貝塚の展示も壁面いっぱいの貝!

かわいい模様の土器です・・真似できるかな?


③古代オリエント博物館は池袋サンシャインビルにあります。
これも全く期待していなかったのですが、予想外に楽しく、
3時間も遊んでしまいました。
 
あちこちに遊び心がある展示で、たとえば何でもない鉄の扉に
マグネットのジグソーパズルが用意してあったりします。
楽しかった!
実は写真はNGですが、あまりに面白かったので・・(・ω・;A ごめんなさい

展示品でことに興味をひきつけられたのが、
交易のハンコとして使われた印章で、
普通の形のハンコもあれば、円筒型のものもあり、
これはハンコ作りのプロがいたのだろうと思わせられる完成度でした。

おみやげに買ったのは、
紀元前3000年の円筒印章のレプリカとエジプトの猫の置物。
この印章は馬と人と葡萄の文様で、
実際に使えるということですので、わくわくしながら買って帰りました。
さっそく先日、職場で陶土にころころ回しながら押して
たくさん見本の食器を作りました。
最近は「土とモノの出会い」をテーマにしていて、
拾った葉っぱやそこらへんにあるカッターなど文房具や
計量スプーンなどを押しつけて模様をつけているのです。
5000年も昔の模様との出会いなんて、ステキです!


④世田谷美術館は初めてではありませんが、
企画展の佐藤忠良さんは好きな彫刻家です。

ほとんどの作品は観たことがありますが、展示室入ってすぐ、
札幌オリンピックのために作られたという鹿は初めてみました。
砧公園を借景として、素晴らしい展示でした。


ここのお気に入りはレストラン「ル・ジャルダン」

広々とした窓から楽しめる公園の緑が気持ちいいのと、
サービスがさりげなくて、心地よいのです。
なかなかこんなレストランに出会うことはありません。
なんとかいう格付けの冊子には載らないかもしれないけれど、
私の★★★★★です。
 
この日のランチは子牛のクリーム煮。

洋梨のタルトをデザートに頼みました。
もちろんお料理も申し分ありません。

 
砧公園の梅も咲きはじめていました。


ミュージアムグッズのにゃんこと子猫のピッチのティースプーン。
にゃんこは左右の手足が紐でつないであって、動くのです。


⑤泉屋博古館別館は六本木一丁目下りてすぐ。
以前一度来たことがありますが、こじんまりとした建物もいい感じです。

ソファーのあるロビーでお茶のサービスが受けられるのも嬉しいです。
飲食禁止のミュージアムが多くて、2時間もうろうろしていると
結構しんどいものですが、たつぷりと水分を補給して、
たくさんの青銅鏡を見ました。
普段あまり見つけないので、各部の名称から勉強です。

紀元前の殷の時代から7、8世紀の唐の時代のものが何といってもいいです。
幼龍の螭(ち)やライオンのような狻猊(さんげい)、
一角獣の辟邪(へきじゃ)など、ヘンテコな生き物の文様が面白い。
時代が新しくなると普通の模様になってしまいます。


⑥大倉集古館は泉屋博古館すぐそばですが、初めてです。

ここは建物が素晴らしい!

昭和3年に完成した、中国風の建物の、

屋根は銅ぶきできれいな青銅色になっています。
戦災を免れたのですね。

隣接のホテルオークラもその青銅色を合わせてあるのだそうです。
ホテルオークラを見るのも初めてですが、
思っていたよりクラシックでいい感じです。
ここは昭和30年代に建っています。
  
最初にお庭から回りました。
龍がいっぱいいます。
龍は建物内部の漆喰の天上にもレリーフがあります。

   
お水やりをしていた職員の方が
いろいろな説明をして下さいました。
 
お庭の石塔の頭部などは「関東大震災で壊れた」そうで、
年季の入り方が違います。

設計の伊東忠太さんは築地本願寺を設計なさった方ではありませんか!
築地本願寺でも寺院らしからぬ
階段の手すりの異形の生き物に仰天したものですが、
ここもいますいます。

階段の手すりや屋根の上!
さきほど観た青銅鏡にいたような異形の生き物が!
 
庭の香炉には何やらユーモラスな蝙蝠!

 
バルコニー。

椅子まで設計されているそうです。
 
 
手すりの雲模様は、内部にも繰り返し使われていました。
展示品よりも総合芸術と言うべき建物の印象が強かったです。

あと一週間でいくつ回れるでしょうか??
体調に気をつけてがんばりたいと思います!