30年は長過ぎた。
これだけは書いておく。第一部は傑作だった。ここで終わっていれば、私は名作として認めていた。だが第二部が始まり、出版元が角川から徳間に移ったあたりからおかしくなった。
まず新刊の刊行が遅れがちとなり、気が付いたら数年おきになっていた。表題の最終巻が出たのは一巻から数えて30年は経っている有様である。
30年と言う歳月は、人を変えるのに十分すぎる長さである。多分、途中から書きたくなくなっていたのだろうと思う。でも読者や出版社に促されて、義務感と嫌々感が折半するなか、ようやく終わらせた。
そんな安堵感が行間から漂うのが、なにより残念でならない。
30年、30年かかって書かれた全16巻の、田中芳樹最大の長編であると同時に、田中芳樹最低の駄作である。
架空歴史ものというかファンタジー小説である。当然に娯楽作品である。実際、7巻までは間違いなく面白かった。第二部に大いに期待した読者は私だけではあるまい。
しかし、田中芳樹は読者を裏切った。娯楽小説のなんたるかを忘れ、読者を楽しませるのではなく、自分を安堵させるために書き終えた。
前巻の最後で、ナルサスとアルフリードが死んだ時点で、私は駄作に終わることを確信していた。読むのを止めようと思ったのだが、最後まで読み切らないと30年かけた長編を駄作と言い切ることは出来ないと思い、敢えて読んだ。
暗い期待どおり、見事に無様なエンディングを迎えた。
初心忘るべからずという警句は、忘れる人が多いが故に生まれた。田中芳樹は見事に初心を忘れてしまった。
読み終えて私は無性にトールキンの「指輪物語」を再読したくなりました。本物の娯楽小説で紛い物の不味さを打ち消したくなったのです。
別稿で改めて総括したいと思います。
でも、夢枕氏や諸星大二郎氏はやる気があるだけ
救いがあります。田中センは……ため息。
銀河英雄伝説を書いた作家さんということで評価を固定しています。
創竜伝もいろいろ言われていますが、だからと言って田中芳樹がどうのとは言いません。
SFファンとはそういうものです。
ちょっとやせ我慢入っていますが。
田中芳樹、どこで、どう歪んだやら・・・