牧場の本来の仕事に専念できないまま、ここでの暮らしが1ヶ月になった。早かったかと言えばそこは微妙で、そのことに気付いた時は、まだそんなものかと感じたほどだった。思い返せばいろいろとあったから、正直なところ過ぎたこの1ヶ月は結構長かった、そう言ってもいい気がする。
1年の始まりも最初の月はゆっくりと過ぎ、そして次第に時の経つのが早まる。そんな気がするように、これからまた牧の7か月が同じような経過をたどるのだと思う。しかしそれでも、何かこの先に格別新たに期待することも、求めることもあるわけではないから、今のままで不足はない。
今、キャンプの人気が高まっていると聞いている。それにもかかわらず、この広さでも最大10組しか受け付けないなどとするから、申し込みをしても断られると懸念する人がいるらしい。さにあらずで、ここは日々平穏、人気(ひとけ)はあまりない。いや、ここだけでなく、covid-19の制限が緩和されつつありながら、入笠山の周辺も例年に比べていつになく今年は静かな気がしている。
昨日から露天風呂の修理が始まった。2,3日かかるらしいが、これで昨年ずっと頭を悩まし続けた漏水の問題は解決する。「延命 星見の湯」なんて名前も付けたけれど、湯につかりながら頭上に横たう天の川銀河を気の済むまで眺めて欲しい。もうすぐクリンソウも咲き出すから、湯船からその花の咲く湿地帯を目にすることもできるだろう。
そんなことを呟いて外に出てみたら、罠の中に鹿が入っている。ようやく捕獲できたものの、しかしその数たったの4頭、これでは有害動物駆除には何の効果もない。そういう意味で彼女たちは哀れな生贄として殺処分されることになる。
可哀想だと思うことを否定しない。そういう感情は誰にでもある。しかし、昨日の夕方に第3牧区のある大沢山に行ってみれば幾つもの鹿の群れが、わが物顔で折角生え出した牧草の一番芽を食んでいた。その群れ、ざっと6群、頭数にしたら200はいただろう。目にした数がそれだけだから、あそこにはもっといると考えて間違いない。
何度も同じことを呟くが、鹿がいてもいい。問題はその程度で、適切な頭数管理ができるなら、むしろいて欲しいくらいだ。何と言ったらいいのか、あの動物の繁殖力には人工的な手を加えるしかないと、再三ここでも言ってきたが、対策はどうなっているのか分からない。
きょうもいい天気だ。ようやく、牧場の仕事に専念できている。
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本日はこの辺で。