山野辺(やまのべ)に蓬(よもぎ)を摘みに行きませう 祖母(おおはは)のベッドの横から小径が続く 薬王華蔵
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祖母は88歳で亡くなった。この小径を歩いて死者の国へ辿ったかもしれない。蓬の生えている青々とした春の草原が、祖母には極樂一丁目に見えたかもしれない。
山野辺(やまのべ)に蓬(よもぎ)を摘みに行きませう 祖母(おおはは)のベッドの横から小径が続く 薬王華蔵
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祖母は88歳で亡くなった。この小径を歩いて死者の国へ辿ったかもしれない。蓬の生えている青々とした春の草原が、祖母には極樂一丁目に見えたかもしれない。
いくたびもいくたびもただ接吻と抱擁をする山よ霞よ 薬王華蔵
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山と霞はそういう間柄である。愛し合う間柄である。いいじゃないか。天地万物こうでなくちゃならない。しかし、日にいくたびそうしているのだろう。やっと春の季節が巡ってきたからだろう。春は目にも心にもやさしく、うつくしい。
奇人でもいい、変人でもいい。わたしをそうしてくれるものはないか。醜悪の老爺は、もはやその愛し合うという特別の範疇には、暮らしていないのかもしれない。