われらニンゲンの喉は楽器になっている。それは実に高い音から低い音まで出せる。
じゃ、鳴らして下さいな。高い音から低い音まで出せるその楽器を、鳴らして下さいな。
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その男は喉の楽器を鳴らし始めた。メロディーがついていた。夜中の音楽会になった。イタリアで歌われている有名なカンツォーネだった。
聞いててくれるのは簞笥。彼女ひとりだった。でも盛り上がった。ガチャガチャ歌い出したからだ。
そうかあ、みなこんなに音楽が好きだったのかあ。蜘蛛が天井からぶらさがって、くるくる踊り始めた。
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気を付けてみていると、ここはニンゲンだけの生きているところ、なのではないらしい。共生して、共楽しているところのようだ。ふむふむふむ。