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「舎利弗よ、何が故に名づけて、一切諸仏の護念したまふところの経となすや」
仏説阿弥陀経より
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サーリプッタ尊者よ、あなたはどうしてこの阿弥陀経が、尽十方もろもろの「仏たちの護念する経典」と名づけられるのであろうか。祇園精舎に於いて説法されている釈尊はお弟子の一人に問いかけられました。
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この老爺は今日はここで涙したいと思います。
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涙しようとたくらんで涙をするのか、とたしなまれるかもしれません。でも、わたしの場合は鈍感が過ぎていますから、こうでもしないと感動をしてくれないのです。ご苦労が聞こえて来ないのです。
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この説法をされているのはお釈迦様です。説法を聞いているのはお弟子たちです。お弟子たち以外の方々もたくさん雑じっておられたかも知れません。
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ここは祇園精舎です。ギバという人が寄進された広大な精舎です。煉瓦造りです。ここを訪ねたことがありました。50歳の時にインドへ行きました。
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お釈迦様は阿弥陀経を説いておられます。経典の主人公は阿弥陀仏です。この阿弥陀仏のなさったことをたくさんの仏たちが讃えておられます。ガンジス川の砂の数ほどの膨大な仏たちが声を揃えて、「護る、後押しする、全面協力する」と宣言しておられます。みな宇宙仏です。壮大なスペクトラムです。
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「古い話じゃないか」と一笑されるかもしれません。説法されたといってもなにしろ紀元前の話です。古い話なんです。説法が為された後、数百年が経過して紀元後になって漸くこの経典が編纂されました。それからしてももう何千年と月日が流れています。
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それを現代を生きる者が信じられるかどうか。いまは2018年になっています。でもそれをわたしが読んでいます。そしてその時間を一挙に圧縮して0までしてしまいます。
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わたしの前に仏陀=お釈迦様が立っておられます。お弟子の一人の舎利弗尊者もいます。説かれている第三人称の阿弥陀仏や宇宙仏がいます。みんながわたしを見ておられます。
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そこまで来てじわじわ涙が湧いてきます。これがわたしを潤す沢水の源流になります。
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わたしは説法の中身が理解できないでいます。それでとうとう長い長い説法になってしまいました。とうとうガンジス川の砂の数ほどの仏たちが宇宙の隅々から名乗りを上げてこられました。そしてまたわたしに向かれます。
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わたしはそれを見て圧倒されています。入れ替わり立ち替わりしてわたしを口説かれます。口説き落とそうと懸命になられます。
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それが嬉しくて、わたしはただ涙を感じてそこに突っ立っています。
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わたしに至り着くまでの時間の長さ、空間の広さは推し量ることも出来ないほどのはず。それがここではマジックの0になっています。わたしの耳に説法の声がぼそりと聞こえて来ます。
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この問い掛けの答えをサーリプッタ尊者は答えることが出来ません。彼もまたただ涙になっています。