人間にも伏流水が流れております。長い長い長い、深い深い岩間の地下を流れ下って、ちょうどわたしのところでそれが、ぴったり噴き上がってまいります。ごぼごぼごぼの水音がします。わたしは耳を傾けて驚きます。
わたしはそれを手に救って口に運び、ごくごくごくと飲み干します。おいしいを言います。山に降った雨水や山を白くした雪が解けて、岩間に染み入って、百年千年万年を経て、わたしに届いています。見えないところ見えないところを抜けて抜けて、わたしを目標地点にしたようにして流れ下ってきます。
それが意図されたものなのか、意図されていないものなのかの、区別は付きません。付けなくともいいのでしょう、きっと。わたしはただ、いただくだけでいいのでしょう、きっと。おいしいおいしいを言って飲み干せばいいのでしょう。おいしいおいしいと言いながら飲むと、それがわたしを元気にします。
そしてそれは無尽蔵なのです。尽きるということがないのです。