無所有が元気誇って威張りをる 山鳩暮風
☆
これは川柳のつもりなんだが、どうだろうか。落選は当然だったか。
☆
人間は何かを誇る。そして威張る。人に向かって威張れないときには、一人で口をとんがらせている。「おれの方が勝ちだぞ」とほざく。
お金持ちは所有者だ。能力に溢れている者も所有者だ。肩書きを持つ者も同じ。功績を持つ者も同じ。美人の奥さんを持つ人も同じ。
そんなもの持たないという人もいる。彼は無所有でいる。でも彼には健康がある。元気に暮らしている。これが一番だと彼は思っている。胸を張る。これでいい。
なんてったって、そりゃ健康だよね。元気でいられた方がいい。そこが、しかし、ベースだが、人間は次へ次へ欲を膨らませる。威張る材料を作る。作り続ける。
☆
この句は誰が詠っていてもいい。貧乏人が歌って開き直っていてもいい。大金持ちが唱えていてもいい。「お前らにあるのはたかだかそんなものか」とせせら笑っていてもいい。
ともかくフンと笑っている。他者を笑ってもいるが、それを笑っている自己をも笑っている。
ともあれ、誇りがないと生きていけないものなあ。
いや、何だっていいのだ。そこにあるものを好きなだけ誇りに思っていれば、それで幸せなのだ。