トマトや胡瓜、南瓜の我が家の収穫は終わったけれど、オクラと苦瓜と茄子、冬瓜が勢いづいている。彼らは暑さを味方にしている。
毎食、テーブルにその料理が列ぶ。口と胃袋は一つしかない。たくさんは食べきれない。うまいうまいを言って喰う。おいしく喰う。
トマトや胡瓜、南瓜の我が家の収穫は終わったけれど、オクラと苦瓜と茄子、冬瓜が勢いづいている。彼らは暑さを味方にしている。
毎食、テーブルにその料理が列ぶ。口と胃袋は一つしかない。たくさんは食べきれない。うまいうまいを言って喰う。おいしく喰う。
お盆が来る。
おらあ、おれを生んで育ててくれたおっとうに逢いたいよお。おっかあに逢いたいよお。先に死んだ弟君にも逢いたいよう。可愛がってくれたお婆(ばば)お爺(じじ)にも逢いたいよお。
逢ったら涙涙涙だろうなあ。滂沱の涙だろうなあ。一言も言えないだろうなあ。感極まっているだけだろうなあ。
そこでは体中が火のように熱くなっているだろうなあ。
どっちがどっちに行くんだろうなあ。おっとうおっかあ達がこっちに来るんだろうか。それともおれがあっちに行って逢うんだろうか。どうだろうかなあ。
そういう日がいつか来る。よろこびの日がいつか来る。明るい未来じゃないか、それだけでも。
午前5時起床。雨はもう降っていない。気温が下がっている。蒸し暑くない。障子戸の向こうが明るい。
もう少しで6時になる。YouTubeで音楽を聴いている。いい気持ちでいる。なんにもしていないのに、お腹が減ってきた。
☆
今日はもう8月10日。火曜日。すぐにお盆だ。我が家の座敷には広い大きな仏壇がある。黄金メッキの仏壇である。
我が家は浄土真宗。施餓鬼をしないが、それでも西瓜、瓜、盆菓子などがたくさん供えられている。
「みなさんで、どうぞお召し上がり下さい」を言う。死者との対話の場所になっている。
「死者は、死んではいない」という盲目的な、理屈抜きの、受け取りができている。死んでいたら、お供えの意味はない。
何らかの形で生きているのである。何処かで生きているのである。しかも数段数百段、レベルアップして。苦悩する人間の段階を脱して、暗いトンネル期間を抜けて出て、明るいところに抜けて出て、上昇して上昇して。
(決して、死を無駄にはしていないのだ。死者はみな「成仏」を果たしているのだ。仏教はそう教えている。
成仏したら、忙しくなる。他者救済の仕事に就く。・・・彼らは茫然自失の涙涙涙で明け暮れてなんかいないのだ!)
レベルアップしているから、有縁無縁の衆生たち、子や孫たちを見守っていてくれるのである。そういう能力が加わっているのである。
憐れむべき死者ではない。彼らはもっと積極的だ。百ランク千ランクアップして、今回は救済に回る側に立っている。断然明るい。明るい目を持っている。
なにしろ救済に明るい考えを持っている。その先の先まで読んでいる。先の先? そう、助け出して導いて行くその先を明るく読み取っているのだ。
彼らはその期待と抱負で、全身が光り輝いている。こうしていなければ他者は救えないのだ。
だから、われわれの功徳の力を廻向して先祖をお祀りして供養するというお盆の風習があるが、その真反対だろうきっと。我々が供養されているのだ。
☆
安心していていい。安心を獲得するときが来ている。安心獲得は菩提成就心である。仏の知恵=仏智を獲得したということになる。お盆はそういう「安心のとき」でもある。
☆
ふふふ、話がこんなところに来てしまった。仏教の考えることは明るい。暗くない。不安にさせない。
われわれは死ぬたびにどんどん成長の階段を上がっていくのだ。病むたびに、苦しむたびに、悲しむたびに、不幸を背負いこむたびに。レベルアップして行くのだ。光り輝いていくのだ。
☆☆☆
お盆は「盂蘭盆会(うらぼんえ)」の省略形。「うらぼん」は「逆さ吊り」の意。「盂蘭盆経」に基づいている。ストーリーがある。いささか儒教的だ。親孝行尊重の中国仏教の影響だろう。
お釈迦様のお弟子の一人であった木蓮尊者は母思いであった。神通力で以て、死んだお母さんを透視してみると、哀れなるかな、お母さんは地獄に堕ちてそこで逆さ吊りの刑罰を受けていた、というのである。我が子思いが昂じて我が子のみを可愛がりすぎた、その盲愛の刑を受けていたのである。木蓮尊者はお釈迦様のところへ行って救済を申し出た。お釈迦様は「布施の供養」を奨められた。お坊さんを始め多くの人にお供え物(他者救済の実践行)をして、飢えに苦しむ受刑者のお母さんに、その功徳を廻向するがいいと。
これが「施餓鬼」(=飢えている人に施しをすること)となったんだろう。地獄の釜にいる人(苦しい暮らしをしている今の我々か?)を救済する方法、布施行(ふせぎょう)を勧められたのだろう。お盆の間は地獄の釜が開いている、安心の暮らしが約束されている、としてある。そういう分かりやすいストーリー設定が敷いてある。