先頃(7月7日)の朝日新聞「天声人語」に「ハチの一刺し」証言で有名な榎本敏夫氏が91歳で亡くなった、と出ていた。田中角栄元首相の秘書官だった人。記事によると実際に刺したのは彼の元妻だ。その暫く後に筆者は和文英文随想集、「Still Waters Run Deep (Part 2)」を出版したが、その中に「蜂の一刺し」という一文(第9話)がある。夫が庭仕事で蜂に刺されて死にかけた話だ。要約してみると…「昼食時ビールを飲み、庭でチョキチョキ剪定中、小指の先に痛みを感じて倒れた。前の小路を通りかかった人が揺さぶってくれるまでどれぐらい失神していたか知らない。顔、全身真っ赤、どっと蕁麻疹がでて吐き気、めまいがし、転びつつやっとの思いで医院に到着。様相を一目見た医者は「君は蜂に刺されたのだ。リンゲルで毒を薄めないと危険だが小医院にはリンゲルはない。救急車!」と救急病院へ。翌日筆者は支払いにその医院へ行って言われた。『ご主人はよく生きていました。小さな蜂だからと言って馬鹿には出来ません。お酒を飲んで蜂に刺されると危ないんですよ。毒が一瞬にまわりますからね』と。おそろしや。小指の先の一刺しで命が飛ぶとは。けどさもありなん。メスバチの一刺しで角栄先生もかなりの痛手を負いました。医者の話を聞いていてひらめきました。政界浄化には、彼らがお酒を飲んだ時-弱さを露呈したとき-大勢の蜂で刺したらどうでしょう」と、書いている。1984年発行のこの本を新聞が紹介し、新聞を通して買ってくださった方々と一堂に会し、「七夕の会」として年一回お会いしてきた。この本がきっかけで、実に33年以上のお付き合いの友人が多い。「ハチの一刺し」の榎本さんも、刺してから35年以上生きられ、めでたし、めでたし。(彩の渦輪)
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