「昭和40年男」の特集は「冒険」である。
見ていると,「釣りキチ三平」が大自然との冒険であると書かれていて,「サイクル野郎」は成長への指南書,と書かれていた。
小学生卒業文集に,「日本一周します」なんてことを書いたが,結局やってもいない。茨城県まで片道120キロあまりを8時間もかけて移動したのが最長だ。あれは18歳,大学一年の夏休みだった。帰宅時は電車の誘惑に負けて輪行してきたっけ。
「サイクル野郎」との出会いは,本屋さんでいきなり第8巻。発行日を見ると小学5年生のときだ。僕が「スーパーカーライト」装着の「モンテカルロ」という自転車を親に買ってもらった頃だ。
5段変速でも世界が変わった。それまでママチャリでいつも姉のお下がり。友人たちの多くがスポーツ自転車に乗っていた。憧れて,ほしくてほしくて,たしか49800円だった記憶がある。40年以上前にそれだけ高価だった。父と母には感謝している。
行動範囲が劇的に広がって,自宅から片道30キロ圏内はすべて自転車で行ける範囲になっていた。ただ,当時は修理技術がなく,遠くでパンクして,そのままご近所の民家に預かってもらうなんていうアクシデントもあった。
中学2年のときに大事故をやってしまって,モンテカルロはフレームから曲がって再起不能。それでも,親はロードマンを買ってくれた。
どんどんはまって,改造に終わりがなくなっていく。改造しすぎて,元の部品はフレームとホイールぐらいだったような記憶がある。高校生のときには修理技術も向上していて,およそすべて修理できるようになっていた。自転車屋さんになることもできる,とは思ったが,高校3年夏休みのメトロリバー釣行で足首捻挫して,高校3年の体育は2・3学期すべて見学という次第。マジで足が90°内側に捻られていたものなあ。
さて,「サイクル野郎」。第8巻から始まってしまうので揃えるのが大変。小遣いも少ない。新品で揃えようとしたときにはすでに絶版となってとき遅かったが,プレミア価格もなかったので古本屋を歩き回る日々が続いた。
高校生のときに「まんだらけ」で1巻100円で3巻ぐらい買えたのがよい記憶。神保町のマンガ専門店では1巻2000円ぐらいのときもあったが,なんとしても全巻制覇したかった。
そして小学5年生から25年経過していると,なんと復刻版が1冊800円で出ているというではないか 在庫を確認し,発注した。おかげで,紙媒体で37巻までとにかく揃った。
「サイクル野郎」でよかったのは,地域の特色がていねいに描かれていたこと。荘司先生はとてつもない取材をしたのだと拝察できる。その地域ならではの交通事情(雪国で矢印マークがあるのは,豪雪で道の位置を明確化すること)も描かれていた。
放送禁止用語などいくらでも載っている。キチ●ガイサイクラーだのキ●チガイ病院だの,いくらでも出てくるが,やはり差別意識などない。当時は普通だったのだから。
僕の夢は潰えた。クルマの免許をとってしまうと,急に自転車に乗らなくなった。もっとも,クルマでも最長距離は秋田だったり福井だったりで,とても2日も3日もかけての移動などしていない。いまや,そのクルマさえも自分では年に数度しか運転していない。
そんな情けない自分だが,「サイクル野郎」を見ていると,日本一周は死ぬまでに一度やらないといけないような気もしてくる。
人生は短い。誰に誇ることも出来ないけれど,中高年でもできる,みたいな気がしてくるのである。