「節電」は本当に必要なのか?(1) 電気代はなぜ高い?
この夏は電気が足りないと言う。
でも、どうもうさんくさい.一説では
「原発を再開したいから、電気が足りないと脅しているだけだ。寝苦しい夜を過ごさせて原発賛成にするためのあくどい宣伝だ」
とも言われる.
東京電力は日本の代表的な企業だから、本当はこんなことを言われるようなダメ企業では困るのだが、なにしろ
「東電はウソを言う企業だ」
というのは、原発事故以来、常識になっているので仕方が無い。
そして、福島原発事故の直後、東京電力が「計画停電」というのをやり、大きな影響がでた。
電気機器をつかって患者さんの命を守っている病院や、1度とめたら製品がダメになってしまう工場などはビリビリしていたものだ。
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明らかにおかしい.
東京電力がもっている発電の能力は、6300万キロワット。
これに対して計画停電が実施された3月14日の電力消費量は、たった2800万キロワットだった???
それで「足りない」??? ???
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何かを製造する「製造業」では、設備をどのぐらい使うかという「稼働率」は、収益の死命を制するほど大切なもので、多くの会社は設備稼働率が80%にでもなると、経営はピンチになる.
ところが、
「原発事故で電気が足りなくなるので、計画停電をする。国民は協力しろ」
と東電が言った日の設備稼働率は、実に44%!!
さすが東電だ。これまで、営業成績が悪くなると、電気料金を上げれば良いという気楽な商売をしてきた。事実、日本の電気料金はほぼ世界一、アメリカの3倍とされる.
それでもお客さんから文句は来ない。もし文句を言えば「じゃ、電気を売らない」と言えば、それで良い。「やらせ番組を放送しているから、受信料を払わない」と言う視聴者を不払いで裁判に訴えるというNHKと同じ体質だ。
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稼働率が低い理由は、真夏の昼間に多くの人が「エアコン」を使う.かつてはこれに「高校野球」が加わってテレビを見るので、さらに電気が必要になる.
だから、半分しか使わない春の稼働率が44%になるのは仕方が無いというのが「東電の言い分」である。
もちろん、東電の言い分がウソだ。ウソをつく人というのは、
「原子炉が壊れているか?」
ということだけウソをつくのではない.
「原発事故が起こったから、電気が足りない」
というのも、
「日本は質の良い電気を供給しているから、電気代が高くなる」
というのも、全部、ウソなのである。
電気の蓄積方式(集中蓄積、分散蓄積)、発電方式(設備費と燃料費の関係)、電気機器会社とタイアップした電気の平準化システムなど、設備の稼働率を上げるためには、やることは山ほどあるけれど、このような「面倒な事」より
「たっぷりと発電所を作って、時々、動かしたらよい」
という方が楽だ。
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稼働率が下がり、経費が嵩むようになれば、電気代を上げればよい。簡単で誰にも文句を言われない。
それに対して、電気が足りなくなると、文句を言われる.
だから、発電所をたっぷり作って悠々と生活した方が良いと思うのはお公家さんの東電の経営者としては当然だからである.
電気会社のシステムが悪い。個別に「これもすればよい、あれもすればよい」と言っても、巧みに言い訳されて終わりだ。
こんなことは個別にいくら言っても、ケンカになるだけで電気代が安くなることはない。
でも、もし東電に競争相手が居たら、設備の稼働率はたちまち80%になり、電気代は半分になるだろう。
その点では技術も大切だが、安全を守り、電気代を安くするには、「電気を供給する社会的なシステムに競争原理を入れる」ことも重要であることが判る。
(平成23年6月29日 午前10時 執筆)
武田邦彦