噛みつき評論 ブログ版

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ヒトの個体差

2011-02-14 10:10:03 | マスメディア
 日経に掲載された「個人主義と経済の関係は?」という記事の中に興味深い部分がありました。筆者は労働経済学の大竹文雄・阪大教授です。(2011-1-17 日経の経済教室)

『人間の生物学的な特性と文化との間には関係性が認められるという研究成果は、このほかにも報告されている。
 例えば春野雅彦・玉川大学准教授らのfMRI(機能的磁気共鳴画像装置)を用いた神経経済学的研究によれば、個人主義的な考え方の人と集団主義的な考え方の人には、自分と他人との所得配分に関する意思決定に直面したときの脳活動の領域に差があるそうだ。つまり、自分だけではなく自分と他人の総和の所得が高いときに満足度が高くなる向社会的タイプの人は、個人の所得だけが満足度に影響する個人主義的な人に比べ、所得分配に関する意思決定の際、扁桃体と呼ばれる脳の部位の活動が高まるという。逆にいえば、所得分配に関する意思決定に直面した人の脳活動をみれば、その人が個人主義的な人か向社会的な人かを予測できる可能性がある』

 記事の趣旨は集団主義、個人主義と経済の関係を述べたものですが、それはともかくとして、つまり他人の利益をも合わせて満足する人と自分の利益だけに満足する人では所得分配に関する意思決定の際に脳の活動に差があるというところには興味をそそられます。

 仮説の段階でしょうが、記事ではこれを生物学的な特性の差として紹介されています。環境による後天的な影響を否定しているわけではありませんが、生来的なものが多分に影響している可能性を示唆しているようです。とすればこのような特性は変わりにくいことを意味します。

 経済の世界では、大きな政府による再分配を重視する社会民主主義あるいはリベラリズムと、小さな政府で市場原理を重視する自由放任主義の流れがありますが、それぞれの支持者が「利益の総和に満足」タイプと「自分の利益だけに満足」タイプのどちらに強い相関があるかを調べると興味ある結果が得られるかも知れません。もし強い相関が見つかれば、両者がいくら議論を重ねても平行線ということになりかねません。

 私の推定ですが、「利益の総和に満足」と「自分の利益だけに満足」という二つのグループがあるわけでなく、中間的な人がもっとも多く、どちらかに偏るにしたがって人数が減っていき、両端には顕著な偏りを示す人が少数存在するという、まあ正規分布のような形になるのではないでしょうか。

 他人の利益をも含めて満足することを利他的な傾向、自分の利益だけに満足することを利己的な傾向と置き換えてもそれほど大きくは違わないだろうと思われます。

 世の中にはまるで仏のような人もいれば、極端に自己中心的な人もいます。この違いを個体差とすれば、経験上、ヒトの特性における個体差はとても大きいように思います。

 理屈っぽい話はともかく、願わくば「自分と他人の利益の総和が高いときに満足度が高くなる人」と付き合いたいものです。fMRIによる試験結果が前もってわかればひとつの指標として参考になると思いますが、まあそれはSFの世界でしょう。