日本のマスコミは政府や自治体などの発表をただ伝えるだけの記事、いわゆる発表ものが約8割を占め、調査報道が少ないと長年批判されてきました。今回の、携帯電話などを使ったソーシャルゲーム、コンプガチャ(コンプリートガチャ)に関する報道はその好例であると思われます。コンプガチャは中高生が数十万円を請求される例が相次ぎ、射幸心を強く煽ることが問題となったゲームです。
このゲームは違法であるとの見解が消費者庁によって発表された途端、マスコミ各社は大きく取り上げました。それまでコンプリートガチャなるものを知らなかった方が多かったと思われますが、私も騒ぎになる少し前に読者の方から教えていただき、初めて問題が生じていることを知りました。知名度のある会社が儲けのためにはそこまでやるのか、と思った次第です。マスコミ対策によほどの自信があったのでしょうか。
ソーシャルゲームは3年間で50倍ほどに拡大した「成長産業」といわれ、グリーやDeNAの急成長と高収益は賞賛を込めて報道されてきましたが、それが子供や若者をカモにする、問題ある商売だとは報道されなかったと思います。判断力の未熟な年少者から高額の金を巻き上げるのは実に卑怯な行為であり、それを放置したマスコミの寛容(鈍感)さは理解できません。
国民生活センターへの相談件数は昨年度3433件と急増しており、消費者庁が動き出すまで主要メディアが寛容な沈黙を守っていたことは奇異な感があります。グリーなどはテレビ局の大口スポンサーであり、そのために「配慮」があったのではないか、とも勘ぐりたくなります。トラブルや被害例をもっと早く報道していれば問題の拡大を防止できたことでしょう。ともあれ主要メディアが不適切な行為を監視する役割を果たさなかったことは否めず、その職業モラルを疑わせるものでした。
もうひとつは6名の方が亡くなった5月4日の白馬岳の遭難事故。ほとんどのメディアはパーティが軽装であったことを強調する報道を行いました。特に朝日は見出しから「夏山の軽装で出発、一転零下2度 白馬岳で死亡の6人」で、「長袖シャツにベスト、ズボン……。6人はまるで夏山でも歩くような格好だったという」とし、まるで無謀登山を非難するような調子でした。
ところが5月8日から10日にかけて毎日や日経、読売、NHKなどがパーティーが十分な装備を持っていた事実を報道しました。名誉が回復される内容です。しかしグーグルで調べるとこの名誉回復関連記事はわずか14件で、6日の遭難事故報道の記事217件より大幅に少なくなっています。朝日はようやく11日になって「38面の目立たないところに「リュックにジャケット」というベタ記事を載せましたが、ダウンジャケットなどがあったなどと述べるだけで、無謀登山という不名誉な報道を訂正する内容とは程遠いものです。
面白いのは発行人と編集長が共に朝日新聞の元記者というJ-CASTニュースの10日付け記事。
『美しい北アルプスの山々は、ゴールデンウィークになっても雪の連山のままで、冬山と全く変わらないのである。そんなところにホイホイと軽装で行くとはバカか。大金を使ってヘリコプターが出動する毎度の映像を見る度に、腹が立つ。鉄道や飛行機のように個人の責任では避けがたい事故ならともかく、山登りでの遭難は100%自己責任。同情的に報道してやることは全くないのである。大迷惑を教えろ』
10日というと既に装備が十分であったことが判明している時期なのに調べもせず、下品な言葉で威勢よく医師たちの名誉を踏みにじり、大恥を晒す結果となりました。濡れ衣を着せた上、死者を鞭打つというあきれた行為です。当然、謝罪文を載せるべきですが、「朝日系」ならばあまり期待できません(14日現在、一切記載なし)。気になるのは、朝日を覆っているヴェールを剥ぎ取ればJ-CASTのようなものが現れるのでないかということです。
対照的なのが検索で見つけた12日の「赤旗」、「きょうの潮流」。
『10日付の本欄で白馬岳の遭難について書き、読者のみなさんから「事実と違う」とのお叱りを受けました。ご指摘のとおりでした▼遭難が伝えられた当初の報道、「軽装」「冬山用の装備なく」にもとづき書きました。しかし後日、薄い羽毛ジャケットや風を防げる冬山用ズボンがザックに入っていた、と分かってきたのです▼自宅に執筆当日の朝に配られた新聞に、新たに発見された事実が報じられていました。目立たない記事とはいえ見逃してしまい、無念の遭難にあわれた6人の方々の、名誉を傷つけてしまいました(以下略)』
どれが不誠実で信用がおけないか、どれがまともか、言うまでもないでしょう。一流の顔をしていても中身まで一流とは限らないという教訓になりそうです。
このゲームは違法であるとの見解が消費者庁によって発表された途端、マスコミ各社は大きく取り上げました。それまでコンプリートガチャなるものを知らなかった方が多かったと思われますが、私も騒ぎになる少し前に読者の方から教えていただき、初めて問題が生じていることを知りました。知名度のある会社が儲けのためにはそこまでやるのか、と思った次第です。マスコミ対策によほどの自信があったのでしょうか。
ソーシャルゲームは3年間で50倍ほどに拡大した「成長産業」といわれ、グリーやDeNAの急成長と高収益は賞賛を込めて報道されてきましたが、それが子供や若者をカモにする、問題ある商売だとは報道されなかったと思います。判断力の未熟な年少者から高額の金を巻き上げるのは実に卑怯な行為であり、それを放置したマスコミの寛容(鈍感)さは理解できません。
国民生活センターへの相談件数は昨年度3433件と急増しており、消費者庁が動き出すまで主要メディアが寛容な沈黙を守っていたことは奇異な感があります。グリーなどはテレビ局の大口スポンサーであり、そのために「配慮」があったのではないか、とも勘ぐりたくなります。トラブルや被害例をもっと早く報道していれば問題の拡大を防止できたことでしょう。ともあれ主要メディアが不適切な行為を監視する役割を果たさなかったことは否めず、その職業モラルを疑わせるものでした。
もうひとつは6名の方が亡くなった5月4日の白馬岳の遭難事故。ほとんどのメディアはパーティが軽装であったことを強調する報道を行いました。特に朝日は見出しから「夏山の軽装で出発、一転零下2度 白馬岳で死亡の6人」で、「長袖シャツにベスト、ズボン……。6人はまるで夏山でも歩くような格好だったという」とし、まるで無謀登山を非難するような調子でした。
ところが5月8日から10日にかけて毎日や日経、読売、NHKなどがパーティーが十分な装備を持っていた事実を報道しました。名誉が回復される内容です。しかしグーグルで調べるとこの名誉回復関連記事はわずか14件で、6日の遭難事故報道の記事217件より大幅に少なくなっています。朝日はようやく11日になって「38面の目立たないところに「リュックにジャケット」というベタ記事を載せましたが、ダウンジャケットなどがあったなどと述べるだけで、無謀登山という不名誉な報道を訂正する内容とは程遠いものです。
面白いのは発行人と編集長が共に朝日新聞の元記者というJ-CASTニュースの10日付け記事。
『美しい北アルプスの山々は、ゴールデンウィークになっても雪の連山のままで、冬山と全く変わらないのである。そんなところにホイホイと軽装で行くとはバカか。大金を使ってヘリコプターが出動する毎度の映像を見る度に、腹が立つ。鉄道や飛行機のように個人の責任では避けがたい事故ならともかく、山登りでの遭難は100%自己責任。同情的に報道してやることは全くないのである。大迷惑を教えろ』
10日というと既に装備が十分であったことが判明している時期なのに調べもせず、下品な言葉で威勢よく医師たちの名誉を踏みにじり、大恥を晒す結果となりました。濡れ衣を着せた上、死者を鞭打つというあきれた行為です。当然、謝罪文を載せるべきですが、「朝日系」ならばあまり期待できません(14日現在、一切記載なし)。気になるのは、朝日を覆っているヴェールを剥ぎ取ればJ-CASTのようなものが現れるのでないかということです。
対照的なのが検索で見つけた12日の「赤旗」、「きょうの潮流」。
『10日付の本欄で白馬岳の遭難について書き、読者のみなさんから「事実と違う」とのお叱りを受けました。ご指摘のとおりでした▼遭難が伝えられた当初の報道、「軽装」「冬山用の装備なく」にもとづき書きました。しかし後日、薄い羽毛ジャケットや風を防げる冬山用ズボンがザックに入っていた、と分かってきたのです▼自宅に執筆当日の朝に配られた新聞に、新たに発見された事実が報じられていました。目立たない記事とはいえ見逃してしまい、無念の遭難にあわれた6人の方々の、名誉を傷つけてしまいました(以下略)』
どれが不誠実で信用がおけないか、どれがまともか、言うまでもないでしょう。一流の顔をしていても中身まで一流とは限らないという教訓になりそうです。