風疹の大流行に焦点をあてた5月9日のクローズアップ現代は興味深いものでした。妊娠初期の女性がかかると高い率で赤ちゃんに障害が出るという風疹、その感染者数が昨年の30倍に達したというこの現象は決して偶然のものではなく、日本のワクチン行政の不備の結果であるとされます。そして感染症対策が進む先進国の中で、なぜか日本だけが大きく遅れ、感染症の輸出国とまで言われるようになった経緯が説明されます。
かつてワクチン接種による健康被害が大きな社会問題になったことをご記憶の方も少なくないと思いますが、当時はワクチンとその義務的な接種の仕組みが悪玉扱いされました。ワクチンの被害とデメリットばかりを強調したマスコミ報道が続きました。
そして80~90年代、ワクチン被害の訴訟において国の敗訴が相次ぎ、96年、義務から勧奨、学校での集団接種から医療機関での個別接種に転換されたことがこの流行の原因とされます。接種率が大きく下がったからです。
当時の事情を厚労省の担当者は次のように述べていました。
「世論もかなりワクチンに対しネガティブなイメージを持っていました。副反応、あるいは健康被害に対し国民の注目が集まれば行政としてはそれを無視して前へ進めることはできません」
つまり、ごく少数のワクチンによる健康被害→マスコミによる大々的報道→ワクチンは怖いものという世論の形成→国の敗訴→接種義務の廃止、という流れであったと考えられます。これは民意に従った故の失敗例、あるいは衆愚政治の一例と言えるでしょう。
たいていのワクチンは僅かな確率ながら被害が発生します。これが100万分の1の確率であっても大きく報道すれば人々は危なく感じます。恐怖心は確率の大小よりも報道の大小によって強く影響されます。大袈裟なマスコミ報道が誤った世論を形成し、ワクチン行政を歪めたわけです。
ワクチンのデメリットばかりを強調するメディアが天然痘の撲滅など、ワクチンによる膨大な利益に十分な理解をもっていたか、疑わしいものです。また感染を封じ込めることによる社会の利益よりも、個人的利益を重視する傾向も感じられます。
国の対応も問題ですが、民意に反したことをやればメディアから何を言われるかわかりませんから、ある程度仕方がなかった面があります。なんといっても民意を反映することが最も重要と考えているメディアが多いですから。これが民主的なやり方だ、と言われれば反論できない世の中です。泣く子も黙る民主主義。
番組によれば、米国ではワクチンは感染症から個人を守るだけでなく社会を守るものとして位置づけ、集団の免疫レベルを高めれば感染を封じ込めることができるとされています。ワクチン接種を徹底し、風疹の感染者はわずか年間10人だそうです。
日本ではマスメディア、裁判官、行政、いずれも十分な認識を欠いたまま目先の感情に流され、10年後20年後のことなど考慮しなかったのでしょう。感染症の専門家による警告を無視し、感染の広がりを許すという恥ずかしい結果を招きました。米、英、独、仏、伊、いずれの国もこのようなことはありません。この差は何ゆえなのでしょうか。メディア、行政、あるいは国民のレベルの差?
かつてワクチン接種による健康被害が大きな社会問題になったことをご記憶の方も少なくないと思いますが、当時はワクチンとその義務的な接種の仕組みが悪玉扱いされました。ワクチンの被害とデメリットばかりを強調したマスコミ報道が続きました。
そして80~90年代、ワクチン被害の訴訟において国の敗訴が相次ぎ、96年、義務から勧奨、学校での集団接種から医療機関での個別接種に転換されたことがこの流行の原因とされます。接種率が大きく下がったからです。
当時の事情を厚労省の担当者は次のように述べていました。
「世論もかなりワクチンに対しネガティブなイメージを持っていました。副反応、あるいは健康被害に対し国民の注目が集まれば行政としてはそれを無視して前へ進めることはできません」
つまり、ごく少数のワクチンによる健康被害→マスコミによる大々的報道→ワクチンは怖いものという世論の形成→国の敗訴→接種義務の廃止、という流れであったと考えられます。これは民意に従った故の失敗例、あるいは衆愚政治の一例と言えるでしょう。
たいていのワクチンは僅かな確率ながら被害が発生します。これが100万分の1の確率であっても大きく報道すれば人々は危なく感じます。恐怖心は確率の大小よりも報道の大小によって強く影響されます。大袈裟なマスコミ報道が誤った世論を形成し、ワクチン行政を歪めたわけです。
ワクチンのデメリットばかりを強調するメディアが天然痘の撲滅など、ワクチンによる膨大な利益に十分な理解をもっていたか、疑わしいものです。また感染を封じ込めることによる社会の利益よりも、個人的利益を重視する傾向も感じられます。
国の対応も問題ですが、民意に反したことをやればメディアから何を言われるかわかりませんから、ある程度仕方がなかった面があります。なんといっても民意を反映することが最も重要と考えているメディアが多いですから。これが民主的なやり方だ、と言われれば反論できない世の中です。泣く子も黙る民主主義。
番組によれば、米国ではワクチンは感染症から個人を守るだけでなく社会を守るものとして位置づけ、集団の免疫レベルを高めれば感染を封じ込めることができるとされています。ワクチン接種を徹底し、風疹の感染者はわずか年間10人だそうです。
日本ではマスメディア、裁判官、行政、いずれも十分な認識を欠いたまま目先の感情に流され、10年後20年後のことなど考慮しなかったのでしょう。感染症の専門家による警告を無視し、感染の広がりを許すという恥ずかしい結果を招きました。米、英、独、仏、伊、いずれの国もこのようなことはありません。この差は何ゆえなのでしょうか。メディア、行政、あるいは国民のレベルの差?