噛みつき評論 ブログ版

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世紀のならず者

2022-03-06 23:03:39 | マスメディア
 20世紀最大のならず者と言えば、それはヒットラーであろう。では21世紀のそれは誰かというと、最有力候補がプーチンであることは誰もが納得しよう。しかし、ウクライナに対する蛮行はプーチンだけの問題かと言うとそうではない。かつてレーガン米国大統領はソ連を「悪の帝国」と呼んだ。また第二次世界大戦では日本の無条件降伏直前に一方的に侵攻し、千島を奪い取るだけでなく、民間人の帰還船まで沈め、約60万人を強制的に連れ帰りシベリアで過酷な労働を強いた(約1割が死亡)。当時としても卑怯の極である。これはスターリンの時代であるが、個人の問題だけでなく国としての特性も無視すべきではないと思う。むろん非の大部分はプーチンに帰すると思うが。

 プーチンがウクライナにしたような武力による侵略は100年前なら他の国でもやっていた。人命や戦争に対する考え方が現代とは異なっていて、問題の解決手段として今よりも気軽に戦争を用いられた。しかし現代は違う。少なくとも我々の多くは違うと思っていた。人命は重くなり、人道的な配慮もされるようになった。少なくともまともな国においては自分の国益のために人の住む他国の都市を破壊するなどとても許容されることではないと思っていた。この常識があるので、ロシアがまさか侵攻するとは予想しなかったのだろう。プーチンのロシアは世界の常識から大きく外れた、非常識の国であることが明確になった。

 それにしても軍事施設だけ攻撃すると明白なウソをつき、住民の避難を止めながら、意図的に人が居住する住宅を攻撃するような者は明確な殺人者である。街が破壊され、民間人の死者が多数発生したが、同時に、その何倍かの家族を失う人たちもいるのである。このような非道が世界に知られ、世界の反ロシアの結束を招いたわけであるが、これはプーチンの読み違いかもしれない。おそらく彼の感覚ではその戦術は通常のことで「非道」ではないのだろう。彼我の「常識」の大きな乖離がみられる。プーチンの得意技はウソと毒殺と自作自演だ言われるがそれだけではとても足りない。冷酷非情、それに圧倒的な強者が弱者を武力で攻撃するという最高の卑怯さ。戦力比が10:1ということは大人が幼児に暴行するのに等しい。これだけでも極めて不愉快であり、ムカつく。

 百万人を超えるウクライナからの難民をポーランドなど周辺国は受け入れている。大きな負担となる筈だが、積極的に手を差し伸べているようである。不満は聞こえてこない。同じ隣国でもこれほども違うのかと思う。天使と悪魔ほどの違いである。背景には共にロシアの圧政に長年苦しめられてきたという思いがあるのかもしれない。

 もし今回のロシアの企てが成功したならば、軍事的侵略の成功例となり、同様のことを企んでいる中国などの背中を押すことになる。それは秩序の崩壊を招き、世界が不安定になると言われている。これは何としても避けたいことであり、そのためには世界がプーチンの足を引っ張る必要がある。ウクライナへの支援もそのひとつであろう。失敗させなければ我々にも影響が及ぶ可能性がある。プーチンの成功は暴力団が警察に勝利するようなものである。

 既に穀物やエネルギー価格の高騰などにより世界中の消費者が損失を受けている。フィンランドやエネルギーの弱みを持つドイツまでもが武器援助を決め、中立国スイスでさえ制裁を決めた。国内法により武器援助ができない日本は国際秩序の維持に貢献しない国と看做されるかもしれない。金だけ払って失望を招いた湾岸戦争のときのように。

 中国や北朝鮮も常識側とは言えない。多様性を尊重する人たちがいるが、こういう「多様性」は実に困ったことである。しかもこれら3国はそろって核を持っている。物理的に抑えようとすると核を使う世界大戦の危機を覚悟しなければならない。奇妙なことにこの3国は共産主義の国または共産主義であった国である。かつて共産主義者は「資本主義国は領土を拡張しようとする帝国主義の宿命を負っている」と批判していたが、皮肉なことにその宿命はこれら共産主義国やかつての共産主義国の属性となった。そしてそろって核を保有しているだけに、世界の将来に暗雲を投げかけている。これらの国の独裁者が狂ったとき、世界には有効な対抗手段がないのである。核の廃絶は望ましいことだが、すぐに実現しそうにない。その前に、不安定な独裁国家が核を保有することの危険を取り除くことが優先される。

 ウクライナ大使館の公式ツイッターに義援金の振込先が載っている。また国連UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)や日本赤十字社でも扱っている。