気象警報は数時間~数十時間先の状況を予測し、それに基づいて発表される。警報を事前に知ることによって被害を避ける、あるいは軽減することができる。災害が発生してからの警報ではあまり意味がない。
台風19号による関東地方の雨は台風が上陸する半日以上前から激しくなり多大の降雨量があった上、台風の接近・通過時には一層の降雨量があることは容易に予想された。多くの自治体は12日の早くから避難勧告、避難指示を出したが、気象庁が1都6県に特別警報を発表したのは午後3時半であった。日没まで約2時間しかなく、これからの避難を呼びかけるには遅すぎるタイミングである。
NHKでは「特別警報を待たずに非難をしてください」と呼びかけていた。また気象庁は「特別警報を発表する可能性があります」と述べていた。このような経過の後、ようやく午後3時半に「待ちに待った」特別警報が発表されたが、すでに災害が発生している時点であり、気象庁の発表にも「重大な災害が発生している可能性が極めて高い」という文言があった(これはその後の他の地域に対する特別警報の発表にも付け加えられた)。
2018年の西日本豪雨の際には7月6日の午前10時半に大雨特別警報をこれから発表する可能性があると予告したが、実際に発表されたのはそれから約9時間後の午後7時40分で、すでに住宅に土砂が流れ込むなど被害が続出していた。しかも避難しようにも暗闇であり、危険が大きい。気象庁にはできるだけ早く警報を知らせて被害を軽減しようとする意識が感じられない。失敗して責任を問われることばかり気にしているのではないか。
気象庁のウェブページには詳しい解説がある。特別警報の対象については
「雨を要因とする特別警報は、避難勧告や避難指示(緊急)に相当する気象状況の次元をはるかに超えるような現象をターゲットに発表します。発表時には何らかの災害がすでに発生している可能性が極めて高い状況です」としている。
一方、
「雨を要因とする大雨の特別警報は、台風や集中豪雨により数十年に一度の降雨量となる大雨が予想される場合に発表します。具体的には、
(1)48時間降水量及び土壌雨量指数において、50年に一度の値以上となった5km格子が、共に50格子以上まとまって出現
(2)3時間降水量及び土壌雨量指数において、50年に一度の値以上となった5km格子が、共に10格子以上まとまって出現
のいずれかを満たすと予想され、更に雨が降り続くと予想されることを発表指標としています」
特別警報の発表基準は大変厳しいもので、これを満たすのは簡単ではない、と思われるのだが、よく読むと、この基準は発表時に満たしていなければならない基準ではなく、やがてそうなるかもしれないという「予想」基準である。つまりいくら厳しい基準を設けても発表の判断は、予想である以上、かなり自由にできると考えられる。また、予想である以上、確実ではないから、「5km格子が、共に50格子以上」といった細かい条件をつけることは理解に苦しむ。
とにかく「災害がすでに発生している可能性が極めて高い状況です」という時点まで待たなくてもよいのではないか。失敗を恐れるあまり、発表が遅すぎては警報の意味が失われる。重大な災害が差し迫っているとき、我々としては避難が間に合う時期に、その重大性を知らせてくれることに尽きる。細かい基準のことなど知ったことではないのである。
このウェブページには細かな解説が豊富にあるが理解するのに一苦労である。一般の人々が要点だけでも理解しているとはとても思えない。繰り返すが一般の理解では、警報は将来の予想を示すもので、人はそれを事前に知ってこそ適切な対応ができる。「既に災害が発生している可能性が極めて高い」と断って発表する警報ではあまり意味がない。
ついでに、気象庁の考え方に関して疑問がある。「…いずれかを満たすと予想され、更に雨が降り続くと予想されることを発表指標」としているが、これは50年に一度の降水量、土壌雨量指数だけでは不足で、さらに雨が降り続くことが必要と理解できる。50年に一度の降水量及び土壌雨量指数だけでは特別警報に値しないのか。この考え方は理解できない。実は気象庁は過去にも理解できないことをやっている。当初、特別警報発令の単位を府県単位とした。この第一号は京都府に出されたが、日本海側の大雨であった。100km以上離れた京都市も特別警報下に入り避難指示の対象地域となり、無用の混乱を招いた。逆に2013年10月の伊豆大島の豪雨災害では死者・行方不明者が39名を出したが、この時、特別警報が発令されなかった。理由は大島の面積が小さ過ぎたからだそうだ。面積が基準に達しなかったというわけだ。これらは改善されたが、ずいぶんお粗末である。気象庁は本当に災害被害の減少を考えているのか、と疑問に思う。さらに特別警報を考えた人たちは果たしてそれにふさわしい能力をお持ちなのか、とも疑いたくなる。
(参考)気象庁 特別警報について
台風19号による関東地方の雨は台風が上陸する半日以上前から激しくなり多大の降雨量があった上、台風の接近・通過時には一層の降雨量があることは容易に予想された。多くの自治体は12日の早くから避難勧告、避難指示を出したが、気象庁が1都6県に特別警報を発表したのは午後3時半であった。日没まで約2時間しかなく、これからの避難を呼びかけるには遅すぎるタイミングである。
NHKでは「特別警報を待たずに非難をしてください」と呼びかけていた。また気象庁は「特別警報を発表する可能性があります」と述べていた。このような経過の後、ようやく午後3時半に「待ちに待った」特別警報が発表されたが、すでに災害が発生している時点であり、気象庁の発表にも「重大な災害が発生している可能性が極めて高い」という文言があった(これはその後の他の地域に対する特別警報の発表にも付け加えられた)。
2018年の西日本豪雨の際には7月6日の午前10時半に大雨特別警報をこれから発表する可能性があると予告したが、実際に発表されたのはそれから約9時間後の午後7時40分で、すでに住宅に土砂が流れ込むなど被害が続出していた。しかも避難しようにも暗闇であり、危険が大きい。気象庁にはできるだけ早く警報を知らせて被害を軽減しようとする意識が感じられない。失敗して責任を問われることばかり気にしているのではないか。
気象庁のウェブページには詳しい解説がある。特別警報の対象については
「雨を要因とする特別警報は、避難勧告や避難指示(緊急)に相当する気象状況の次元をはるかに超えるような現象をターゲットに発表します。発表時には何らかの災害がすでに発生している可能性が極めて高い状況です」としている。
一方、
「雨を要因とする大雨の特別警報は、台風や集中豪雨により数十年に一度の降雨量となる大雨が予想される場合に発表します。具体的には、
(1)48時間降水量及び土壌雨量指数において、50年に一度の値以上となった5km格子が、共に50格子以上まとまって出現
(2)3時間降水量及び土壌雨量指数において、50年に一度の値以上となった5km格子が、共に10格子以上まとまって出現
のいずれかを満たすと予想され、更に雨が降り続くと予想されることを発表指標としています」
特別警報の発表基準は大変厳しいもので、これを満たすのは簡単ではない、と思われるのだが、よく読むと、この基準は発表時に満たしていなければならない基準ではなく、やがてそうなるかもしれないという「予想」基準である。つまりいくら厳しい基準を設けても発表の判断は、予想である以上、かなり自由にできると考えられる。また、予想である以上、確実ではないから、「5km格子が、共に50格子以上」といった細かい条件をつけることは理解に苦しむ。
とにかく「災害がすでに発生している可能性が極めて高い状況です」という時点まで待たなくてもよいのではないか。失敗を恐れるあまり、発表が遅すぎては警報の意味が失われる。重大な災害が差し迫っているとき、我々としては避難が間に合う時期に、その重大性を知らせてくれることに尽きる。細かい基準のことなど知ったことではないのである。
このウェブページには細かな解説が豊富にあるが理解するのに一苦労である。一般の人々が要点だけでも理解しているとはとても思えない。繰り返すが一般の理解では、警報は将来の予想を示すもので、人はそれを事前に知ってこそ適切な対応ができる。「既に災害が発生している可能性が極めて高い」と断って発表する警報ではあまり意味がない。
ついでに、気象庁の考え方に関して疑問がある。「…いずれかを満たすと予想され、更に雨が降り続くと予想されることを発表指標」としているが、これは50年に一度の降水量、土壌雨量指数だけでは不足で、さらに雨が降り続くことが必要と理解できる。50年に一度の降水量及び土壌雨量指数だけでは特別警報に値しないのか。この考え方は理解できない。実は気象庁は過去にも理解できないことをやっている。当初、特別警報発令の単位を府県単位とした。この第一号は京都府に出されたが、日本海側の大雨であった。100km以上離れた京都市も特別警報下に入り避難指示の対象地域となり、無用の混乱を招いた。逆に2013年10月の伊豆大島の豪雨災害では死者・行方不明者が39名を出したが、この時、特別警報が発令されなかった。理由は大島の面積が小さ過ぎたからだそうだ。面積が基準に達しなかったというわけだ。これらは改善されたが、ずいぶんお粗末である。気象庁は本当に災害被害の減少を考えているのか、と疑問に思う。さらに特別警報を考えた人たちは果たしてそれにふさわしい能力をお持ちなのか、とも疑いたくなる。
(参考)気象庁 特別警報について
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