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民主主義の元祖、ギリシャの信用度

2011-11-07 10:02:35 | マスメディア
 アメリカがくしゃみをすると日本は風邪に罹り、アメリカが風邪を引くと日本は肺炎になるといわれた時代がありました。日本の対米依存を示すものですが、現在、病原国は世界に広がった観があります。

 2008年のリーマンショックから3年、今度はギリシャ危機。もういい加減にしてくれ、といいたくなります。遠く離れたところで起きた局所的な事件が世界中を不安に陥れる現象、これはまさにグローバリゼーションの賜物なのでしょう。

 ギリシャのGDPはおよそ3000億ドルといいますから日本の約16分の1、日本のGDPは世界の8%程度ですから、ギリシャのGDPは世界の約0.5%を占めるに過ぎません。これは200人の中で、1人が病気になると全員が浮き足立つというようなものです。現在のシステムはまるで危機を増幅するようにできているかのようで、実に迷惑な話であります。

 それはともかく、EUによるギリシャ財政危機の包括対策を同国が受け入れるかどうかについての国民投票が突如として発表された直後、世界中に衝撃が走り、各国の株価も大きく下落しました。これは国民投票によって受け入れを拒否されるかもしれないという懸念が広がったためとされています。

 第三者から見れば、借金の半分を棒引きしてさらに資金を貸すという包括案以外の選択肢があるとは思えないのですが、国民投票、即ちギリシャ国民の総意による判断を関係各国は信用できなかった様子が見て取れます。国民投票はもっともよく民意を反映するものの筈ですが、各国はそれを信用せず、かつ尊重もしないという本心が見えます。

 ギリシャは古代にポリスと呼ばれる都市国家を築き、直接民主制を取り入れたことは教科書にも出てきます。いわば民主主義の元祖のような国です。しかし投票行動は感情に訴える雄弁な扇動者によって左右され、衆愚政治に陥ったとも言われています。

 EUの提案を受け入れるか否かというような複雑な問題は簡単に判断できるものではありません。正しく判断するためには国民の大多数が問題をよく理解することが必要ですが、それは困難なことです。したがって理解の難しい問題ほど扇動者の役割が大きくなります。そのような問題においては、影響力の大きい扇動者の意見が投票によって決定されると考えられます。

 今のTPPも複雑多岐にわたる、理解の難しい問題です。さらに参加の前に詳しい内容が明らかにされないまま、一旦参加すれば撤退は実質的にできないなど、腑に落ちない点もあります。既に日経、朝日、読売、毎日の各紙はTPP賛成の態度を社説などで表明していますが、ずいぶん勇敢なことと感服します。TPPの影響は不確定な要素が多く、予測はきわめて困難だと思いますが、なんとも素晴らしい決断力です。

 一方、10月31日の記事に全文の要約を引用しましたが、政府から漏れたとされる内部文書には以下のような記述があります。

 『マスメディア、経済界はTPP交渉参加を提案。実現できなければ新聞の見出しは「新政権、やはり何も決断できず」という言葉が躍る可能性が極めて大きい。経済界の政権への失望感が高くなる』

 マスメディアが政府の判断に強く影響を及ぼしていることがわかります。その影響力は次の選挙の結果を左右するところから生まれます。古代ギリシャの扇動者は雄弁家でしたが、現代の扇動者はマスメディアでしょう。

 まあ、古代ギリシャより二千数百年の時を経ても民主主義というものはあまり進歩しないものだ、ということだけは確かなようです。


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