Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

ミューレンからの絵葉書

2005-06-22 | アウトドーア・環境
例年の如く、地元のヴァインフェストが終わりを告げると本格的な夏となる。昨日を以って、一日一日とまた夜が長くなるかと思うと鬱陶しいが、暑い昼間の疲れを少しでも多くの快適な夜に癒すのも良かろう。

三年ほど前の六月の第一週、運動不足の体を動かすために、フェスト疎開中のシュヴァルツヴァルトからベルナー・オーバーラントへと車を走らせた。007映画の舞台となった山にロープウエーで登り、そこから一気に駆け下りた。高度順応対策と足慣らしのために、標高差2500メートル程の上り下りは効果満点である。

谷は既に初夏の日差しがあったが、雪が多く残る海抜3000メートルより上は春山であった。シーズンの間隙に人影のない雪の鞍部から、午後の重い雪を経釣って、谷へと降りていくと、ガスが晴れて理想的な山岳風景が目前に広がった。

左からアイガー・メンヒ・ユングフラウへと連なる対岸の4000メートルを越える屏風は、この時期特有の新鮮さと明るさに活動的な様相を呈する。黒々とした岩肌に氷河を這わせ、淡い緑のアルムの上にそそりたつ。山肌に刻まれた谷筋には雪の縞が長く尾を引いて、深く谷へと一気に落ち込む。その深い谷を挟んで、眼下のアルムには林の上縁から夏道が伸びて、足元の日陰に雪を残す尾根筋と著しいコントラストを見せる。

雪解け水は、大きな落差を滑り落ちながら迸り、風に揺す振られて定まらない反射面に夏の光を受ける。谷向こうの懸垂氷河は、爆音を立てて滑り落ちて、長い余韻の後に再び然るべき平静を取り戻す。谷のざわめきを運ぶ上昇気流に乗って鳥たちは、雪の消えたばかりの草原の上へと軟着陸して、春の息吹を謳歌する。
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5 コメント

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Unknown (wasawasa)
2005-06-23 09:31:34
山登りの楽しい季節になりましたね。

こちらは中高年登山にはもってこいの山々が連なりこれから県内外登山者で賑わいそうです。最近では犬連れ登山を禁止する処が増え、ちょっと寂しいのですが・・・。景色を単純に楽しめばよいのですが、珈琲は手放せず、何杯も飲みたくなるので犬リックが自然と嵩張りますね
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ミューレン (まーどんな)
2005-06-23 10:49:51
こんにちは、お話を伺うだけでアルプスの涼風がこちらにも伝わってきそうですね。



シルトホルン(でしたかしら)~ミューレン~下界、まさにジェームス・ボンド、 でもこの辺りはU字谷でコースが厳しそうですね。 



お気軽観光客の私は、下りのロープウェイの車窓から谷底を見ているだけでしたが、絶壁の迫力に圧倒されたのが忘れられません。
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犬の登山禁止、U字谷の絶壁 (pfaelzerwein)
2005-06-24 13:58:15
wasawasaさん、歩いた事は無いのですが、九頭竜川源流から雪の白山越えて白川郷、また大野から金沢の春の思い出しました。



犬の登山禁止は、糞尿ゆえでしょうが、羊や牛の量とは較べられません。美味しい珈琲も良さそうですね。





まーどんなさん、先ずは本日のライブカムパノラマ:



http://www.swisspanorama.com/html/schilthorncam1.html



有名でないジェームス・ボンドはここを滑り降りたのですね。冬はスキー場になっています。スキーでも歩いても同じで、最後のU字谷の絶壁は降りられません。



ですから、次の記事で書いたように上流の沢を下りてくるのです。ロープウェーの下の駅に車を止めていたので、あの谷を汗を掻きながら30分ほど歩かなければなりませんでした。牛もあの谷から絶壁を巻いて上へと移動させるのです。



それにしてもロープウェー料金は片道でも高い。
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パノラマ (まーどんな)
2005-06-25 00:43:57
ご案内頂いたシルトホルン・パノラマ、見てきました。 有難うございました。

しかし、ミューレンの村で暮らしている人達は、日常生活に不便さを感じないのでしょうか・・・、俗世界に暮らす私のような者には不思議でなりません。
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アルプスの人々 (pfaelzerwein)
2005-06-26 11:30:38
まーどんなさん、アルプスの谷の人と言うか山の人の生活観とか世界観は其れを専門とした文学や芸術の分野があるぐらいで興味深いです。



私も夏・冬を通して数え切れないほどの人々を見てきました。これも追々、様々な視点から纏めて行きたいと思います。
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