舞台神聖劇「パルシファル」の美術を担当する
ゲオルク・バゼリッツの特別展が開かれている。ミュンヘンのピナコテークかどこかに常設展示があると聞いていたが、2月18日まで特別展示がピナコテークデアモデルネであるということで、計画している。それが終わるまでには、この土曜日「ジークフリート」と翌週の「神々の黄昏」の二日しか機会が無い。日曜日の安い日に出かけようかと思うが、17時始まりの楽劇だけでも長く、その前に早く出かけようと思うと20時間近く頑張らなければいけない。
天気さえ良ければ、ゆっくりと往復するだけなのだが、肝心の楽劇に集中力が欠けないようにと思うと、無理は出来ない。土曜日に出かけても交通量も多く、日曜日よりも無駄が出そうなので、楽しみにしている「ジークフリート」が疎かになるのも嫌である。もう少し考えてみようと思う。
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承前)その「ジークフリート」二幕へとお勉強を進めると、新たに感動してしまった。つまり一般的にこの幕は様々に分類された指示動機が次から次へと巧妙に組み合わされて、三場がかなりくっきりとコムパクトに収められているように思われるのだが、もしその指示動機と称する分類から更に解体していくとなると、それどころでない音楽的な面白さが浮かび上がってくる。今回は2015年暮れに「神々の黄昏」を見たからかもしれないが、逆戻る感じで、例えばアルベリヒの場面を見ると、とても簡単に何々の動機などと識別していられなくなる。流石に第二夜になると様々な動機と情景などがオーヴァーラップするだけでなく、音楽的な背景へと思いが移る。やはり第二夜「ジークフリート」が四部作「指輪」の芸術的な頂点であると思う。なるほど「神々の黄昏」の序幕をつけた構成とその音楽的な伸展は比較しようがないが、音楽自体が謂わば「ラインの黄金」ではないが何もないところから出でて、入ってくることを考えれば、「神々の黄昏」の予定調和的な流れは音楽的にも然りだと思う。要するにこの「ジークフリート」ほどの創造性を第三夜には感じなくても決しておかしくはないと思う。兎に角、霊感に富んでいるところとその匠さに感動する。正直この残された短時間にそうした高度な音楽把握が上手に出来るかどうか自信が無くなってきたが、新たなヴァークナー認知への道が開けてきたような気もする。それは「パルシファル」への道だろうか?
先日教えて貰ったハムブルクの「フィデリオ」新制作の放送を少し聞いて、レオノーレ序曲の始まりの最初のテーマは古楽器演奏の技も使いながら上手く行っていたなと思ったら、二つ目の主題でこれは駄目だと思った。そのまま一幕だけでは台所に立ってBGMとして流していたが、二幕は切って、「ジークフリート」勉強に移った。本日のフランクフルターアルゲマイネの酷評を読むと、ケント・ナガノ監督がこのまま務まりそうが無いほど大失敗だったようだ。確かにあの序曲を聞けばこの人はもうドイツ音楽を演奏しないといけないドイツでの活動は難しいと思ったので、ある程度正論だと思った。本当にこれがあのケント・ナガノであるかと、新聞も問うているが、背後事情はいろいろあると思う。私個人的には、やはりキリル・ペトレンコのオペラ革命と言うかスーパーオパーへの移行が大きな影響をしていると思う。まともな指揮者ならばそれまでのように交響楽的な管弦楽を奈落で鳴らしているだけでは済まなくなったからである。新聞の筆者は必ずしもその水準をペトレンコ並みに上げている訳ではないと思うが、半拍づつ遅れる歌とか、日常のオペラ劇場では常の事でも流石に名門のハムブルクの初日では許されないようで、この程度なら北ドイツの地方劇場の方がマシと書いている。終演後のブーイングも凄かったようで、カタストロフが管弦楽と指揮者までに及んでいるようなので、ケント・ナガノ危うしである。そもそもナガノのオペラは交響楽的な管弦楽演奏との批判も初めからあったのだが、ここに来てベートーヴェンなどを気が利いた風に演奏しようとして大失敗となった。しかし、ミュンヘンでの今進行している再演「指輪」の初日シリーズのヴィデオを観てもとてもその音楽は受け入れ難く、稚拙でさえある。ペトレンコのような外国人が訛り無しに上手に熟していくのが当然で、それほど鳴らさないでも素晴らしく存在感のある奈落の管弦楽団とのアンサムブルに慣れてしまうと、多くのものが受け入れられなくなる。ヨーナス・カウフマンが評すように「なんでも簡単にちょこちょこと解決してしまう」天才などなかなかいないからだ。
だから私などは初めから言っている。オペラ劇場などは潰してしまえと、同じように二流の交響楽団なんて要らない、そんな贅沢な娯楽なんて出来る筈がない。ネットでの情報が収斂すると、そうした無駄なものは淘汰されていく。どんどんと引導を渡してやれ、肝心なのはそこから新たなものが生成されていくかどうかだけなのだ。
ケント・ナガノ指揮:
Prelude DAS RHEINGOLD
Trailer DAS RHEINGOLD
Trailer DIE WALKÜRE
Ride of the Valkyries from DIE WALKÜRE
Trailer SIEGFRIED
Siegfried kills the dragon (from Wagner's SIEGFRIED)
GÖTTERDÄMMERUNG
Nina Stemme singing "Fliegt heim, ihr Raben" from GÖTTERDÄMMERUNG cf.3m40s
キリル・ペトレンコ指揮:
DER RING: Preview (Conductor: Kirill Petrenko)
Teaser Bayerisches Staatsorchester and Kirill Petrenko on tour, September 2016 #BSOtournee
参照:
Dieser „Fidelio“ ist eine Katastrophe, JAN BRACHMANN, FAZ vom 30.1.2018
二流と一流の相違 2018-01-30 | ワイン
ペトレンコが渡す引導 2018-01-14 | 文化一般
引導を渡す線香の刹那 2016-08-08 | 文化一般