YOUTUBEが著作権管理団体GEMAに支払うように判決が出ている。著作権を保護するために、投稿者から徴収するのではなくインターネットポータルが支払うのは当然である。今後YOUTUBEとGEMAの間で契約が交わされて支払いを済ませることになる。とどのつまりネットポータルが投稿内容をチェックする義務が明白となる。
しかし、興味深いのは現在日本のそれなどで見れてもドイツでは著作権保護上GEMAによって許可されていないとするお断りは実は正しくないのだとGEMAは語っている。つまり本来著作権料を否応なく徴収できる権利を持つGEMAは一切そうしたことに関係していなくて、実際は隣接権を持っている音楽レーベルなどが削除要請を出しているというのだ。
これはなるほどと思った。特にCBSのソニーは過剰にネットでの音源の使用に過敏であり、一時は聞き触りのサムプルも提供しなかったのである。販促よりもコピーされる可能性を極力恐れているのがソニーグループである。今後こうしたコピーや科料の問題は更に海賊党などの躍進で取り扱われることとなると思われる。つまり特にエンターティメント分野でのビジネスモデルの変化が要求されている。
そこで広い支持を集めつつある海賊党への批判の投稿が文化欄第一面を使ってシナリオライターによって綴られている。要旨は、創造者とその創造物を価値化するプロデューサー間には純粋な経済契約関係があり、著作権管理団体GEMAなどと同じように当事者であることと、そうした契約関係を政治が正しく支持をしていないことが、海賊党の勃興を招いたとする。これだけをしても海賊党の主張は民主主義とは関係ないもので、欲求の満足と公用徴収でしかないと激怒する ナチ政権が勃興したヴァイマール憲章における個人の所有の限界設置を思い出せばよい。
そもそも海賊党の綱領自体に「知的創造物の公共への返還が正当なだけでなく、人類の創造力の持続性のために不可欠なもの」とあり、そこではそうした社会的関係を担う筈のプロデューサーと呼ばれるような仲介者の存在は綺麗に消されている。それのみならず、デジタル化した創作は技術的にコピーの制限をかけようとするのはそもそも無理であり、広く個人の使用に大きな網をかけるのも上手くいかないことは分っており、創作物の一般的利用と使用で貢献するべきだとしている。
正しくこの点は、先日スイスの友人にメールした点であるが、海賊党の主張は正しく一度デジタル化してネットに流れた時点で全ての著作権と隣接権は放棄された状態となって、ネット使用者がそのデジタル情報を自由に使えることとなるのである。そのような状況において海賊党が若い有権者の支持を集めるのは当然なのである。しかし我々はそもそもここで商業として市場価値を生み出すものが価値のある創作と限らないことを認識しておく必要がある。要するに、基礎的な科学や高度で先端にある芸術価値など市場価値のないものに目を向ける。
だから海賊党は、公共的に支払いが済まされた ― 例えば公共放送の視聴料として ― もしくは製品として生み出される創作への過程で社会が援助している場合は、これ全て創作は既に社会に無料で寄与すべきだとしている。この考え方から行くと、商業主義的に市場経済性を持つものでない創作は全て公共のものとなる。なるほど名画などはこのように公共性をもたさないことには公共の美術館が成立しないような状況も今後存在する。
しかし、ここで海賊党が先に全く無視したような商業的に市場価値を生じさせた仲介者には、ここにおいては公共的な経済支援として機能しており、同じようにここでも既に支払い済みだと主張している。明らかに、東ドイツ出身で早くからコムピュータを使いこなしてシナリオライターとして先日のZDFのロムメル将軍の番組を制作した投稿者が指摘するように、ここに大きな矛盾がある。彼らが最も忌み嫌い是正しなければいけないのはネットのポータルを運営している業者であったりフェースブックであったり、アマゾンであったりとこれらのネットビジネスこそが人々の情報を支配する情報の権力者であって、こうした創作者やその仲介などはそもそも敵対するものではない筈だとしている。
更に挙げられる文化政策への綱領には、コピーの弊害を極力少なくしていかなければいけないとだけ述べられていて、投稿者ニキ・シュタインが語るように、公共のために創作を無料で提供する意思があってそれを自らの判断で出来るなら決して悪くはないのだがと、海賊党が結局この問題の解決点が見出せないことを掘り起こし、せせら笑う。
それは、広義の文化行政の議論でもあり、決して技術的な科料システムの問題なのではない。一方において広く浅く科料するしか方法のなくなった公共料金システムがある。
来年から公共放送料金科料システムが変わり、これまでは機器ごとにその数から徴収していたのだが、もはや放送電波も衛星もケーブルもネットも同じように科料しないといけないことから、個人の世帯や法人ごとにその事業所の数と従業員数で科料するようになった。なるほど我々はドイツの公共放送にはそれ相当の視聴料を支払うのでネットにおいても同じようにその中身をいつでもダウンロードすることが出来る。
海賊党が社会の前面に政治として提議した問題は隙間政党の専門業者的なものではないことは明らかである。EUが個人情報保護法の観点からドイツ連邦政府の半年に渡る電話や通信の記録と保護の運用に対して制裁金を求めたことで、EUスタンダードに合わさなければいけないようになったこともまた違った議論の成果である。
参照:
Unter Piraten, Niki Stein, FAZ vom 20.4.2012
文化ケインズ経済学の矛盾 2012-04-04
親権者が行使する選挙権 2012-04-12 | 歴史・時事
ビール一杯のお駄賃 2011-12-08 | 生活
覚せい剤の民主的な合法化 2011-12-04 | 歴史・時事
待降節を迎えるにあたって 2011-11-27 | 暦
六十禁が必要な場合とは? 2011-11-05 | 文化一般
情報の集約を阻止する運動 2011-10-30 | 文学・思想