プライムシートでフィルハーモニーからの中継番組を聴いた。先ず再放送の2019年のラフマニノフの交響的舞曲へのサウダージ、三つの楽章のプログラムで、コロナ前に最後に聴いた大管弦楽演奏会のプログラムだった。キリル・ペトレンコ指揮ベルリナーフィルハーモニカーの今シーズン以前の最高到達地点であったことは、エルフィーからアルテオパーと二カ所で聴いて間違いなかった。嘗てのフィルハーモニカーではなかった柔軟性と、前半の二曲でのその多彩な表現力ということで楽団の歴史的にも圧倒的だったと思う。
幸いなことにPCM96kHz再生で流れた。少なくとも一曲目のストラヴィンスキーは完璧で、ドロップアウトすることもなかったので、ハイレゾ録音で綺麗に録れた。そうして聴くと生で二回も聴き乍聴き取れていなかったことにも気が付く。今更ながら耳につくと思っていた音楽のストラヴィンスキーの腕と工夫が聴こえる様で面白い。
続けて放送されたアロイス・ツィンマーマンもメインの交響的舞曲もドロップアウトが引き続いたが、これは仕方がない。 幾らかでもハイレゾで聴けただけでもよかった。既にアーカイヴは同じ音質のオーディオが映像としてオンデマンド化されているが、矢張りオーディオサウンドだけで聴くとまた格別であった。
それで期待した生中継の方は、ストリーミング配信のバケット数などが違うのか全然駄目だった。再配信ならば流れるかもしれないが、その時にはDCHでもハイレゾアーカイヴが上がるだろう。同時に初日の中継録音がラディオで流れる。
後半の「火の鳥」で喝采を受けていたとされるフルートはHR交響楽団で首席を吹いているアンドラーダというスペインの女流でパユの弟子が話題となっていた。パユがそろそろ楽団引退をするということだろう。直ぐには後任は決まらないかもしれないが、何人かに吹かせて公募してで結構早く決まるのかもしれない。
「火の鳥」は話題のファミリーコンサートで日曜日に再演される。ペトレンコの指揮は嘗て無い程の「火の鳥」の物語を語っていると大評判であるが、来年の復活祭のストラヴィンスキー三大バレー曲が楽しみだ。
ベルリナーフィルハーモニカーがUNOの難民救済のパートナーと大使となった経過についても金曜日の記者会見で紹介されたようで、ヴァイオリンのトマージ女史が提議したとされ、団員の採決が取られて決定した様だ。昨年はUNICEFで寄付もしたが、それに続いている。それをして、ペトレンコは会見で、「とても感動している」と語ったようで、自身の境遇を交えて話したという。
つまり、「自分はロシアから逃げて来たわけではないが、「故郷を離れて、外国へと希望に満ち溢れ乍も殆ど見通しもなく移る」その気持ちが分かると語った。
「家族はそこに全てを置き去って、裸一貫で始めた。」と、言葉も出来ず、仕事もなく始めたと語る ― てっきり親父さんはポストがあるのでフォアールベルクに来たと思っていたのだが、実際はどうなのだろう。
「新生活は、挫折の数々、友人の援助で築き上げられていく、そのことを知っています。」と「その不安、覚束ない気持ちや不信感がよく分かり、難民の運命というのは殆ど自分の感覚でもあるのです。」とペトレンコは語ったようだ。
そして、「いい演奏を奏するだけでなくて、社会的に貢献して行くことが、私や楽団にとってとても重要。」と今回の意義を説明したらしい。
キリル・ペトレンコが選任されて最も不安とされたのはそうした公的なアピールのやり方であった。だから今回の社会的に大きなアピールも前回のコロナ援助の延長にあったのだが、恐らく教育プログラムファミリーコンサート、そして今回のアフガニスタン難民と話しは進んで来たのだろう。そしてこれ程までにベルリナーフィルハーモニカーが社会的に注目されることはあっただろうか?フルトヴェングラー時代はナチに利用されて、カラヤン時代は商業的なシムボルになり、ラトル時代には教育プログラムが生まれた。
ベルリナーフィルハーモニカーが大使ヴィデオで語っている、29カ国からの出身者からの団体がインターナショナルの社会貢献をして、難民が独り立ちできるまでを援助するのは当然だと。これは全く政治的なステーツメントでは無くて、当然のことで、難民を受け入れろとかなんてことは一切言っていない。
そしてこうした意思表示が楽団として、そして新体制の確立として、とても大きな起点であると捉えても全くおかしくないのである。ペトレンコ体制が確立するまでは協力したいと言っていた名人パユにもそろそろその時期が近付いてきたという様な認識があるのだろうか。
参照:
Philharmoniker werden Botschafter der Uno-Flüchtlingshilfe, Volker Blech, Berliner Morgenpost vom 19.9.2021
Berliner Philharmoniker werden Botschafter der UNO-Flüchtlingshilfe, RBB24 vom 19.9.2021
ファミリーで難民支援 2021-09-18 | 文化一般
最高到達点からその進展 2021-06-05 | テクニック