今回は記念公演で、通常公演枠乍ら配役が初日シリーズやフェストと同じぐらいに素晴らしい。カウフマンの代わりにフォークトが入り、ポーグナーもあのツェッペンフェルトの朗々とした歌声が楽しめる。そしてこの演出には最も重要なアイへのベックメッサーとなっている。なんと言ってもフォークトの風来坊にはカウフマン以上の当たり役が期待出来、コッホのザックスとの掛け合いも見もので、そこにアイへの小役人的な雰囲気が対するとなると、これまたハマる。また問題となっていたエーファもユリア・クライターという人が入っていて視覚的にも悪くはなさそうである。そこにツェッペンフェルト扮するBMWディーラーの親仁が存在感を放てば全く文句の付けようが無い。
Trailer DIE MEISTERSINGER VON NÜRNBERG – Conductor: Kirill Petrenko
Video magazine DIE MEISTERSINGER VON NÜRNBERG – Conductor: Kirill Petrenko
Meistersinger München 08-10-2016 pt2 ending
Jonas Kaufmann & Julia Kleiter⭐Im Tonstudio/aus Korngolds 'Tote Stadt'
同様に二曲目のプロコフィエフでもまだまだやれるのは管弦楽団で、多くの批評でワンのピアノについての批判があったが、私は現時点で批判しようとは思わない。ワンのこの曲は完全に出来上がって仕舞っているからだ。これ以上、「棘とか何とか」勝手なことを書くが、二楽章のどの和音をどのようにという事だろうか?インタヴューで彼女は其れに関して予め語っていて、三楽章なんて簡単だとハッキリ言明している。批判するジャーナリストは具体的な例を挙げていない。
Prokofiev: Piano Concerto No. 3 / Petrenko · Wang · Berliner Philharmoniker
当日のプログラムを読んでいると、シェーンベルクのレハールを絶賛する言葉とアドルノの「オペレッタのアラベスク」が度々引用されていて、まさしくこのレハールの巧妙でよく練られた音楽へと関心が集まる。レハールの家に行った時のこと思い出すが、あの室内の華美と瀟洒の混ぜ合わさったような独特の繊細は印象に残った。まさしく彼の音楽そのものである。それはドイツ語で言うところのSein, Scheinつまりそのものと見かけの緊張を並行して見ることの面白さで、そのもの劇場空間ではなかろうか。先日言及した開かれた作品としてのバーンスタインの作品の価値もそこにあるかもしれない。今回は特に劇中劇としたことで余計にその効果が高まった。キリル・ペトレンコも「微笑みの国」をベルリンで上演していてヴィデオも手元にあるが、あれなどは当地でのもっとも代表的な成果ではなかったのだろうか。
Das Land des Lächelns · Aria Sou Chong
Stephan Rügamer - Land des Lächelns
Liebe besiegt
Regie: Peter Konwitschny
Director: Kirill Petrenko
なるほどフランスでのオフェンバックの上演などのような薫り高いレヴュー感覚も悪くはないのかもしれないが、税金で上演される音楽劇場でオペレッタを上演して唸らせるのにはこうした上演形態しかないとさえ思わせた。
Franz Lehár: DIE LUSTIGE WITWE