Wein, Weib und Gesang

ワイン、女 そして歌、此れを愛しまない輩は、一生涯馬鹿者であり続ける。マルティン・ルター(1483-1546)

150年前の近代的キッチン

2005-05-11 | 歴史・時事
古い料理本と言えば、友人の家でその母親が嫁入りの時に持ってきた料理書を見せて貰った事がある。1920年代の刊行だったと思うが、大事に使って綺麗に保存していて驚いた。記憶する限り、その内容や写真も古びていなかった。

時はバウハウスの時代であるから、我々が想像する合理的で現代的な生活様式は全て満たしていた事になる。ジューサーやミキサー類などは、特に必要ない、冷蔵庫は電気の方が良い事ぐらいであろうか。圧力鍋を使おうが、どのようなオーブンを使おうが余り変わらない。それどころか今でも、シュヴァルツヴァルトの田舎などに行けば薪をくめたオーブンや竈などが重宝していて、現在の味の無い調理器では味わえない特別な美味しさを提供してくれる。そしてその煙が、日夜燻製を濃く深く燻らしているのだから堪らない。

調理場の近代化に関して、先ず思い浮かぶのは1846年から1852年に高名な建築家ゲルトナーによって建てられた小城のキッチンである。これは、施工主である建築家の死を挟んで退位したルートヴィッヒ国王がこれを収得した建物である。これをルゥードヴィヒススへーへと云って、プァルツのワイン地所を見下ろす山腹にある。退位後の国王は、ここで夏を過ごした。その後建造された孫ルートヴィッヒ二世のディズニー様式というような「空想の古城」のキッチンがこれと相似をなす。当時の最新鋭の技術の粋を集めたキッチンは、瞠目に値するだけでなく我々の現在のキッチンを省みさせる。

ルートヴィヒ二世が、ジーメンス博士の電気のからくりを見て感動していたのと、我々が現代の生活に満足しているのと余り変わらないような気がするのである。「幻想」の世界へ閉じこもったバイエルン王と100年以上の間近代という「現実」に生き続ける我々とどれ程の差異があるのか分からない。覚醒を齎す根源的な問いは、繰り返し提議される。

料理書ですら、例え孫引きであろうとも教わる事は多い。1858年の復刻版の料理書も手元にある。しかし、これを参考にして料理を作る事は不可能に近い。何故ならば計量の単位などが、今日からすると想像も付かない事が多いからである。これはまた違う興味が湧く。

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3 コメント

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Unknown (wata)
2005-05-13 21:54:30
大変ためになるお話をたくさんありがとうございました。とってもわかりやすく、噛み砕いたご説明なのでありがたいです。
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リサイクルかリフォームか? (pfaelzerwein)
2005-05-13 14:38:16
wataさん、そうですね、質実剛健や合理性は生きているのですが、事情が変わった一面もあります。



一つは、専業主婦の割合が減っている事。すると、家の掃除を人にさせるケースが多くなります。掃除の専門家なら良いのですが、質の良い掃除人が少ないので、磨き上げるレベルに達している事は少なくなっています。



もう一つは、若い家庭などでは北欧製の安い(昔はIKEAは今より上質だった)家具は使い捨てになってきています。システムキッチンも安普請では20年が限界です。そうなると掃除の質も落ちます。



勿論、古い家具や半永久的な家具も作られているのですが、ペラペラになってきた高級自動車と一緒でリサイクルの方へと傾いているのは事実です。



古文書は、幾つか立派な修道所の図書館がドイツ語圏にはありますね。それから現在でも、ベルリンの図書館や地元のアーカイブは全てのデジタル媒体を含めた出版を出版元に請求します。こうして、将来に繋がって行く訳です。



それから、家を絶えず直していくのと一緒で、古文書も絶えず傷み初めに手を入れていく事は重要でしょう。状態の良いのはそれが理由と思います。余裕が無いと出来ない事です。
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Unknown (wata)
2005-05-13 01:16:09
昔からドイツ人の主婦は家のなかをぴかぴかに磨き上げると聞いています。質実剛健の精神で、何代も受け継がれていく家具や生活用品は光り輝いているように思います。昔、ハイデルベルグで見た机や椅子も古いのに輝いていました。



すばらしい写本がドイツに多いのもそういう気質で保存管理がよいからでしょうか・・・・?
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