1965年
阪神は二十八日、交渉権を得た石床幹雄投手(18)=香川県立土庄高、1㍍77、68㌔=獲得のため、佐川スカウトが香川県内海町福田の石床家を訪れ、父親康さん(39)母親美好さん(37)に本人をまじえて話し合いを行った結果、契約を完了した(契約金は推定で、規定額最高の約六百万円)阪神としては今季新人補強第一号。なお背番号はエースナンバーの18が予定されている。先の選択会議で、阪神は多くの有名選手をあえてはずし、いわば無名の石床をリストの第一に推したのは、高校生には珍しい強じんな下半身、とくに腰としなやかな手首に将来性を買ったからだ。やや内また気味のいわゆるピッチャー・タイプの体格で、切れのいいスピードボールが身上である。土庄高ではエースが左腕の土居池、石床は二塁兼リリーフ役だったが、昨秋の岡山遠征で平松(今春の選抜優勝投手)と投げ合い、岡山東を6-0、5安打散発に押えたころからめきめき腕をあげた。ことしの夏の四国大会の松山商戦で先発、土居池が打たれたあとをしめ、スカウト間に一躍注目を浴びるようになったが、佐川スカウトはことし七月ごろからじゅうぶんな調査をしていっそう自信を深め、選択会議のリストには監督、他のスカウトを押し切って第一位に推したというほどのほれ込みようだった。
佐川スカウトの話 下半身が強いのを見込んだ。手首もよく、球に切れがありピッチャー・タイプの選手だ。牧の入団時に似ている感じがする。バッティングもいいので、野手としてもいけると思うが、やはり投手として魅力がある。大げさないい方かもしれぬが、この石床君に自分のスカウト生命をかけているといっていいほどだ。
父親・康さんの話 小さいときから好きにやらせていたので、すなおに育ったと思います。幹雄のおじいさんは相撲が強くシンの強い人だが、いわばおじいさん子というのでしょう。これで私の手元から離れ、阪神さんにおまかせするわけですが、一人前になるまでは二度と家に帰るなといってあります。
石床投手の話 同じプロでやるなら金田投手(巨)のような投手になりたい。小さいときは巨人ファンでしたが、人と同じようなことではつまらないと思い、阪神ファンになりました。甲子園のマウンドで力いっぱいやります。
新人補強第一号となった石床投手の故郷は映画、二十四の瞳で知られる瀬戸内海の小豆島。「プロ野球選手が生まれてワシらは誇りに思っています」と若い運転手君がわがことのように胸を張っていた。「あれが石床じゃ」「タイガースにはいるんじゃ」と町を歩く石床に、バスを待つ人や店先の人たちがざわめきのようなささやきをかわし、大きな関心をもっているようすだった。
阪神は二十八日、交渉権を得た石床幹雄投手(18)=香川県立土庄高、1㍍77、68㌔=獲得のため、佐川スカウトが香川県内海町福田の石床家を訪れ、父親康さん(39)母親美好さん(37)に本人をまじえて話し合いを行った結果、契約を完了した(契約金は推定で、規定額最高の約六百万円)阪神としては今季新人補強第一号。なお背番号はエースナンバーの18が予定されている。先の選択会議で、阪神は多くの有名選手をあえてはずし、いわば無名の石床をリストの第一に推したのは、高校生には珍しい強じんな下半身、とくに腰としなやかな手首に将来性を買ったからだ。やや内また気味のいわゆるピッチャー・タイプの体格で、切れのいいスピードボールが身上である。土庄高ではエースが左腕の土居池、石床は二塁兼リリーフ役だったが、昨秋の岡山遠征で平松(今春の選抜優勝投手)と投げ合い、岡山東を6-0、5安打散発に押えたころからめきめき腕をあげた。ことしの夏の四国大会の松山商戦で先発、土居池が打たれたあとをしめ、スカウト間に一躍注目を浴びるようになったが、佐川スカウトはことし七月ごろからじゅうぶんな調査をしていっそう自信を深め、選択会議のリストには監督、他のスカウトを押し切って第一位に推したというほどのほれ込みようだった。
佐川スカウトの話 下半身が強いのを見込んだ。手首もよく、球に切れがありピッチャー・タイプの選手だ。牧の入団時に似ている感じがする。バッティングもいいので、野手としてもいけると思うが、やはり投手として魅力がある。大げさないい方かもしれぬが、この石床君に自分のスカウト生命をかけているといっていいほどだ。
父親・康さんの話 小さいときから好きにやらせていたので、すなおに育ったと思います。幹雄のおじいさんは相撲が強くシンの強い人だが、いわばおじいさん子というのでしょう。これで私の手元から離れ、阪神さんにおまかせするわけですが、一人前になるまでは二度と家に帰るなといってあります。
石床投手の話 同じプロでやるなら金田投手(巨)のような投手になりたい。小さいときは巨人ファンでしたが、人と同じようなことではつまらないと思い、阪神ファンになりました。甲子園のマウンドで力いっぱいやります。
新人補強第一号となった石床投手の故郷は映画、二十四の瞳で知られる瀬戸内海の小豆島。「プロ野球選手が生まれてワシらは誇りに思っています」と若い運転手君がわがことのように胸を張っていた。「あれが石床じゃ」「タイガースにはいるんじゃ」と町を歩く石床に、バスを待つ人や店先の人たちがざわめきのようなささやきをかわし、大きな関心をもっているようすだった。