1967年
スタンドをどよめかせて飛んだ中日六本のアーチ。その中でひときわ光ったのが菱川の満塁ホーマーだ。高橋一の内角ストレートを力強いスイングで左翼席にたたき込んだ。「なんともいえないいい気持ちだった。コースは低めのストレート。ちょっとつまった感じだった。だけど打った瞬間はいると思った」つまりながらも本塁打するところに菱川の怪力といわれるゆえんがある。「ボクは練習のときでも、つまり気味ではいるんですよ」と自分の力に絶対の自信を持っているようだ。浅黒い顔に大粒の汗。少し伸びた茶色い無精ヒゲがいちだんと精カンさを増す。183㌢、85㌔の巨体が報道陣を見おろす。5打席3三振、無安打というのが昨年の打撃成績。それが前夜に続き2打席連続本塁打した。この突然変異に菱川自身もびっくりしたようだ。「二球めにいいタマがきたら振ってやろうと待っていた。別にストレートにヤマを張ったわけではないんです。2ストライクを取られたら打てなくなるから・・・」と説明した。この積極的な打撃がセ・リーグ今季二本めの満塁本塁打につながった。四十年に球界を騒がせて中日入り。しかしプロの壁は厚く、なかなか芽が出なかった。「なまいきだ、根性がない」などと陰口をたたかれたが、これも裏をかえせば現代的ということか。倉敷工時代、高橋一(北川工)とはライバル同士だったが、高橋一の方が先に名が売れた。高橋一にたいするときは強い闘志がわくらしい。豪快なパンチ力はプロ野球のあすのヒーローになる素質はじゅうぶんだ。
スタンドをどよめかせて飛んだ中日六本のアーチ。その中でひときわ光ったのが菱川の満塁ホーマーだ。高橋一の内角ストレートを力強いスイングで左翼席にたたき込んだ。「なんともいえないいい気持ちだった。コースは低めのストレート。ちょっとつまった感じだった。だけど打った瞬間はいると思った」つまりながらも本塁打するところに菱川の怪力といわれるゆえんがある。「ボクは練習のときでも、つまり気味ではいるんですよ」と自分の力に絶対の自信を持っているようだ。浅黒い顔に大粒の汗。少し伸びた茶色い無精ヒゲがいちだんと精カンさを増す。183㌢、85㌔の巨体が報道陣を見おろす。5打席3三振、無安打というのが昨年の打撃成績。それが前夜に続き2打席連続本塁打した。この突然変異に菱川自身もびっくりしたようだ。「二球めにいいタマがきたら振ってやろうと待っていた。別にストレートにヤマを張ったわけではないんです。2ストライクを取られたら打てなくなるから・・・」と説明した。この積極的な打撃がセ・リーグ今季二本めの満塁本塁打につながった。四十年に球界を騒がせて中日入り。しかしプロの壁は厚く、なかなか芽が出なかった。「なまいきだ、根性がない」などと陰口をたたかれたが、これも裏をかえせば現代的ということか。倉敷工時代、高橋一(北川工)とはライバル同士だったが、高橋一の方が先に名が売れた。高橋一にたいするときは強い闘志がわくらしい。豪快なパンチ力はプロ野球のあすのヒーローになる素質はじゅうぶんだ。