1989年
ベンチに帰ってくるなり、アイケルバーガーは飲み物が入っているアイスボックスを蹴り上げた。自分のふがいなさを責めるのか奇声をあげ、頭をかかえ込んだ。九回無死満塁で打者は原。外野飛球でもサヨナラの場面だった。打たれたのなら納得もいくだろう。しかし、2ストライクからの4球目は、外角低めへのスライダーがすっぽ抜け、内角高めへ。球は秦のミットをはじき、サヨナラ暴投となった。球質は重いが制球力がいまひとつ。抑え投手としては不安な点も多かったが、関根監督は「80%の仕上がり状態」と判断して起用した。ところが、期待がはずれ、不安が的中した。先頭の中畑に2-0から四球。代走鴻野に大きなモーションを盗まれ無死二塁。自らピンチを作り墓穴を掘った。登板前にはベンチ裏で大声をあげて気合を入れるあたり、どことなく日本人的なところがある選手。初登板は気持ちだけが空回りしたようだ。