1974年
「ウチのウイークポイントは埋まった」-日本ハム中西監督が久しぶりにラッパを吹き鳴らした。ケキッチに続き、第二の青い目の助っ人元ヤンキースのテレンス・リチャード・レイ投手(27)=183㌢、86㌔、左投げ左打ち=が六日午後四時五十七分羽田着の日航機で来日したからだ。後楽園球場で行われた記者会見でレイは「先発、リリーフは監督次第。体の続く限り多く投げる」とひと足先に来日したケキッチと同じようなたのもしい発言。左不足に泣いた中西監督も、左の元ヤンキース・コンビを両わきに抱えて「くたばれファイターズといわれるほど勝ちたい」「得意とする球はファストボール(速球)」と開口一番のレイ。すかさず中西監督を間においた隣のケキッチから「彼はコントロールもいいぜ」と声が飛ぶ。球場貴賓室で行われた記者会見は異国で再会した両人の二人三脚で始まった。ケキッチの方は三日間の練習で十分いけると判断しているが、レイの方はまだ未知。「まず投げさせてみなければ…」と本人が来日するまで心配していた中西監督だが、レイの手の大きさを見てホッと一安心。自分の手と合わせて二㌢以上も長いからだ。中西監督のゴツイ手もレイにかかるとまるで子供なみだ。「好投手の条件はやはり手の大きいこと」と常々いっている中西監督としてみればこれはいけそうだと思ったのも無理はない。弱体投手陣に泣いた日本ハムの前期。それも左投手で挙げた白星はタナボタの山崎の一勝だけ。パ・リーグの左打者にいいように打たれ続けただけに、元大リーガーの両サウスポーの加入は頼もしい限り。二十試合120イニング以上の契約を結んだケキッチが「私としては三十試合に投げ15勝以上したい」と胸を張り、来日したばかりのレイが「リリーフ、先発どちらもOK。私の監督次第、練習も十分してきたし二、三日で試合に投げられる」と首脳陣もシビレさせる話。さらにジャック・二クラウスに似たレイは「私が大リーグからはずされたのは胸元のファストボールをストライクにとってくれなかったから。幸い日本のストライクゾーンは高めに甘く低めに厳しいと聞く。胸元の速球さえストライクにとってくれればかなりやれる」と自信たっぷり。両人への期待度は計り知れない。記者会見の席上、レイが「ケキッチが三十試合で私も同じくらい投げたら、日本のピッチャーは五試合しか投げられないではないか」に爆笑のウズの中、オーバーなゼスチャアでおどけて見せたが、三原・中西親子だけはまんざらでもなさそうだ。「ウチはなんといっても左不足だった。パ・リーグにはいい左打者がゴロゴロしている。でも実績、経験のある二人の加入で相手もかなり戸惑うはず。ウイークポイントがなくなり、これからは是が非でも勝たねばならない」(中西監督)ということになる。ところで、ケキッチとレイのご両人は三年前の七一年、一年間ヤンキースで一つカマの飯を食った仲。元ヤンキースの両サウスポー」で他球団からくたばれファイターズといわれるようになるかどうか。「出来ればそのくらい強くなりたい」というのが三原・中西親子の願いだ。
「ウチのウイークポイントは埋まった」-日本ハム中西監督が久しぶりにラッパを吹き鳴らした。ケキッチに続き、第二の青い目の助っ人元ヤンキースのテレンス・リチャード・レイ投手(27)=183㌢、86㌔、左投げ左打ち=が六日午後四時五十七分羽田着の日航機で来日したからだ。後楽園球場で行われた記者会見でレイは「先発、リリーフは監督次第。体の続く限り多く投げる」とひと足先に来日したケキッチと同じようなたのもしい発言。左不足に泣いた中西監督も、左の元ヤンキース・コンビを両わきに抱えて「くたばれファイターズといわれるほど勝ちたい」「得意とする球はファストボール(速球)」と開口一番のレイ。すかさず中西監督を間においた隣のケキッチから「彼はコントロールもいいぜ」と声が飛ぶ。球場貴賓室で行われた記者会見は異国で再会した両人の二人三脚で始まった。ケキッチの方は三日間の練習で十分いけると判断しているが、レイの方はまだ未知。「まず投げさせてみなければ…」と本人が来日するまで心配していた中西監督だが、レイの手の大きさを見てホッと一安心。自分の手と合わせて二㌢以上も長いからだ。中西監督のゴツイ手もレイにかかるとまるで子供なみだ。「好投手の条件はやはり手の大きいこと」と常々いっている中西監督としてみればこれはいけそうだと思ったのも無理はない。弱体投手陣に泣いた日本ハムの前期。それも左投手で挙げた白星はタナボタの山崎の一勝だけ。パ・リーグの左打者にいいように打たれ続けただけに、元大リーガーの両サウスポーの加入は頼もしい限り。二十試合120イニング以上の契約を結んだケキッチが「私としては三十試合に投げ15勝以上したい」と胸を張り、来日したばかりのレイが「リリーフ、先発どちらもOK。私の監督次第、練習も十分してきたし二、三日で試合に投げられる」と首脳陣もシビレさせる話。さらにジャック・二クラウスに似たレイは「私が大リーグからはずされたのは胸元のファストボールをストライクにとってくれなかったから。幸い日本のストライクゾーンは高めに甘く低めに厳しいと聞く。胸元の速球さえストライクにとってくれればかなりやれる」と自信たっぷり。両人への期待度は計り知れない。記者会見の席上、レイが「ケキッチが三十試合で私も同じくらい投げたら、日本のピッチャーは五試合しか投げられないではないか」に爆笑のウズの中、オーバーなゼスチャアでおどけて見せたが、三原・中西親子だけはまんざらでもなさそうだ。「ウチはなんといっても左不足だった。パ・リーグにはいい左打者がゴロゴロしている。でも実績、経験のある二人の加入で相手もかなり戸惑うはず。ウイークポイントがなくなり、これからは是が非でも勝たねばならない」(中西監督)ということになる。ところで、ケキッチとレイのご両人は三年前の七一年、一年間ヤンキースで一つカマの飯を食った仲。元ヤンキースの両サウスポー」で他球団からくたばれファイターズといわれるようになるかどうか。「出来ればそのくらい強くなりたい」というのが三原・中西親子の願いだ。