詩集「雁の世」より
川田絢音 作 思潮社刊
今朝、朝の光の中で
「列車で 」を読む。
「線路の脇に白い花が
いや 紙屑
小屋で踊っていた男は
亡霊の気配で降りていったが
川は流れて地上のものだろうか
ほら牛が
あゝ耕やしているね
キャベツよあんなに
心で交わされる僅かなこと
老夫婦のか細い声も溶かして
どこをさまよえは と思ううちに
やり直せなくなって
向こうから
暗闇かひかりか
すがることもできないものに囲まれる。」
*********
詩のテーマとは関係ないが…
昨夜、遅くまで母と電話で話した。
寂聴さんの古い本を読んでいるという母に、
父さんなら何というか? とたずねた。
たぶん「恥知らず」というね、とわたし。
母は笑った、そうだろうね。
作品の事か、作者なのか、読む自分なのか。
ただ、そうだろうね、笑って言う母。
そのくらい時が流れた。
父さんと母さんであり
男と女であったふたりは
ちいさなわたしに、諍う恋人同士の
よじれてほどけない、せつなさを
植えつけた。
両親の年齢をとうに追い越して、
秋の森にいる。
時が流れ、ふたりはなお強く結びつき
透明のなかで呼びかける。
時が消え、いとしさが極まる。
川田絢音 作 思潮社刊
今朝、朝の光の中で
「列車で 」を読む。
「線路の脇に白い花が
いや 紙屑
小屋で踊っていた男は
亡霊の気配で降りていったが
川は流れて地上のものだろうか
ほら牛が
あゝ耕やしているね
キャベツよあんなに
心で交わされる僅かなこと
老夫婦のか細い声も溶かして
どこをさまよえは と思ううちに
やり直せなくなって
向こうから
暗闇かひかりか
すがることもできないものに囲まれる。」
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詩のテーマとは関係ないが…
昨夜、遅くまで母と電話で話した。
寂聴さんの古い本を読んでいるという母に、
父さんなら何というか? とたずねた。
たぶん「恥知らず」というね、とわたし。
母は笑った、そうだろうね。
作品の事か、作者なのか、読む自分なのか。
ただ、そうだろうね、笑って言う母。
そのくらい時が流れた。
父さんと母さんであり
男と女であったふたりは
ちいさなわたしに、諍う恋人同士の
よじれてほどけない、せつなさを
植えつけた。
両親の年齢をとうに追い越して、
秋の森にいる。
時が流れ、ふたりはなお強く結びつき
透明のなかで呼びかける。
時が消え、いとしさが極まる。