想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

透明

2015-11-12 17:20:16 | 
詩集「雁の世」より
川田絢音 作 思潮社刊
今朝、朝の光の中で
「列車で 」を読む。

「線路の脇に白い花が
いや 紙屑
小屋で踊っていた男は
亡霊の気配で降りていったが
川は流れて地上のものだろうか

ほら牛が
あゝ耕やしているね
キャベツよあんなに
心で交わされる僅かなこと

老夫婦のか細い声も溶かして
どこをさまよえは と思ううちに
やり直せなくなって
向こうから
暗闇かひかりか
すがることもできないものに囲まれる。」

*********
詩のテーマとは関係ないが…

昨夜、遅くまで母と電話で話した。
寂聴さんの古い本を読んでいるという母に、
父さんなら何というか? とたずねた。
たぶん「恥知らず」というね、とわたし。
母は笑った、そうだろうね。

作品の事か、作者なのか、読む自分なのか。
ただ、そうだろうね、笑って言う母。
そのくらい時が流れた。

父さんと母さんであり
男と女であったふたりは
ちいさなわたしに、諍う恋人同士の
よじれてほどけない、せつなさを
植えつけた。

両親の年齢をとうに追い越して、
秋の森にいる。
時が流れ、ふたりはなお強く結びつき
透明のなかで呼びかける。

時が消え、いとしさが極まる。






コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする