想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

母に会いに

2021-12-04 18:47:28 | Weblog
コロナ感染対策の面会制限が引き続き
行われている介護医療院へ向かう。
先月行く予定だったが母の病状悪化で
延期になって待ち遠しかった。



羽田空港へ向かうモノレールは普通、
各駅停車だった。マスク無しで談笑
する男女数人の大声。
朝8時半だがまだほんのり朝焼けが
残る空と静かな水面を眺めた。

老夫婦は降りる駅を間違え一つ手前
で降りた。声をかけなかったことを
悔やんだ。
人生いろいろ、数分待てば次がくる。
だけど数分間の悔しさが旅の始まり
なら気の毒ではないか。
悔いること多き日々、己を恥じる。

母は表情が硬くなっていた。
2週間の入院生活が及ぼした影響は
想像以上だった。
病状は落ち着いたようだが年齢より若く
見えていた母は年相応に老いが進んだ。
そして言葉は私への心配ばかりで、
いつもよりさらに重く切実に聞こえた。
沈んだ雰囲気を変えようと冗談を言うと
ちょっと間を置いて笑った。
やっと、すこしだけ笑った。

ガラス越しにスマホでの会話し面会は
すぐに時間になった。
車椅子に乗った背中を見送った。
ほんとうに、小さくなってしまった。



夕刻、有明海に面した百貫港灯台へ。
夕陽には間に合わず、残照が
尾を引く海原を眺めた。
島原半島、普賢岳のシルエットが
対岸に浮かぶ。



母は海を見たがっていた。
もう連れていってあげられないのが
とても悔やまれた。
あの時、あの日、あの時間、、、、
どうして行かなかったのかと思う。

母が海を好きなのだと知ったのは
数年前だった。
海岸線を車の窓から眺めたことは
あったが、母は疲れて眠っていた。
ほんとうは海辺に座りたかったのだと
思う。ずっと飽きるまで眺めて‥‥

海に突き出したコンクリートに座り
暗い波を眺めながら思った。
身体が冷えて立ち上がったけれど、
名残り惜しかった。
もっと居たいと思った。



コメント
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