若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

行橋市で固定資産税減税は実現するか ~ 工藤政宏 vs 田中純 ~

2021年12月20日 | 地方議会・地方政治
今回は、リバタリアンとして避けては通れない税金のお話をローカルな話題に載せてお送りします。

行橋市における割高な固定資産税を継続すると明言した田中純市長と、標準税率まで下げようと主張する工藤政宏市議。あなたはどちらを選びますか。

【工藤政宏市議による減税提案】

固定資産税は、標準税率が1.4%とされています。
1,719市町村のうち、91.1%の1,566市町村が標準税率を採用しています。

固定資産税制度について 平成28年8月 総務省自治税務局固定資産税課


他方、行橋市では1.5%という超過税率を採用しています。
割高な税を課している、9%しかいない少数派自治体ということになります。

これについて、工藤政宏市議の提案がこちら。

令和元年6月定例会 本会議3日目(R元.6.11)工藤政宏議員一般質問


行橋市議会 令和元年 6月 定例会(第14回) 06月11日-03号
======【引用ここから】======
・・・この固定資産税というものは、非常に多くの市民の方たちに公平公正に万遍なくお返しできるようなものでございますので、これはきちっとより多くのものを納めていただいて、そしてだから健全財政だというわけではなくて、まずは全国標準にして、先ほど市長は都市計画税のことも持ち出しておられましたけども、市長がおっしゃっているようなものに当てはまらないような自治体も恐らく多々あろうと思いますので、ぜひとも、まずは固定資産税をきちっと市民の方々にお返しして、1.4%にして、そして民の競争力、また他自治体との競争力というものも、それをお返しすることでさらに加速されるというふうに思っております
======【引用ここまで】======

固定資産税の標準税率は1.4%。行橋市は超過税率の1.5%。これを1.4%に下げよう。
税率を下げて減税分を市民に返す。
減税をすることで民間の競争力を高める。
税率を下げることで他自治体との競争力を加速する。

非常に良い観点からの提言だと思います。
さらに、ただ減税しろと言うだけでなく、所管部長から「行財政改革をすれば減税分の税収減があっても行財政運営は可能」という答弁まで引き出しています。

【いつまでも続く「当分の間」の税率】

余談ですが、上記会議録によると、この割高な固定資産税は、昭和の昔に行橋市が再建団体となったことが発端となっています。

1976年 財政再建計画
1977年 固定資産税を1.4%から1.6%に上げる条例改正
1980年 財政再建完了
1990年 固定資産税を1.6%から1.5%に下げる条例改正


割高な固定資産税は、財政再建のための増税だったことが窺えます。

ところが、です。
財政再建が終わって40年経ったのに、未だに割高なまま残っているのです。
課税根拠が無くなっても、あれこれ難癖を付けて一度上げた税率を元に戻さず維持し続ける・・・

そう、ガソリン税の暫定税率とよく似ていますよね。
筋の悪い為政者は、自分の裁量で左右できる予算を手放すまいと、一度上げた税率をそのまま維持しようとするのです。これは中央政府も地方自治体も変わりません。

【筋の悪い為政者・田中純市長】

さて本題に戻りまして、為政者である田中純市長がどう考えているかというと・・・

======【引用ここから】======
先ほど全国で90何%かが1.4%の標準課税率を採用しているとおっしゃいましたが、他方で何%かまでは調べておりませんけども、多くの都市が、都市計画税の場合は上限が0.3%と定められているわけですけれども、上限の0.3%乃至は行橋市と同程度の規模の中小の自治体においては0.2%程度オンをしているのが現状でございます。
 したがいまして、税を払う側の理屈から言いますと、私どもが1.5で都市計画税がゼロですから、1.5%支払う、他市の場合は、固定資産税が1.4ですけども、それに都市計画税が乗りますから、1.6%乃至は1.7%、現実的に私どもが人口政策で最も意識をしております北九州市は、まさに標準税率の1.4に都市計画税の0.3が乗っていって、1.7%という事態になっておりますので、我々が標榜しております人口政策に関しましても、比較的な優位はむしろ現状のままでも十分保てているというぐあいに感じているところでございます。
 以上、2点の理由で、当面、この固定資産税の標準税率を下げるつもりはありません。

======【引用ここまで】======

固定資産税に都市計画税を上乗せしている市町村が多い。
行橋市は都市計画税を上乗せしていない。
隣接する北九州市よりむしろ税率が安いんだ。
だから固定資産税の減税はしない。

と主張する田中純市長。
この理屈は、スタートの時点で事実に反しています。
詭弁のお手本として標本に飾っておきましょう。

田中純市長はこの答弁の中で、
他方で何%かまでは調べておりませんけども、多くの都市が、都市計画税の・・・0.3%乃至は行橋市と同程度の規模の中小の自治体においては0.2%程度オンをしているのが現状
と述べています。

調べておりませんけども」じゃなくて、ちゃんと調べてみましょう。

総務省|地方税制度|都市計画税
======【引用ここから】======
 2020(令和2)年4月1日現在、都市計画税を課税している団体は日本全国で645団体(東京都含む)です。日本全国の市町村総数は1,718団体であるため、日本全体で約3分の1の市町村が課税をしていることになります。
======【引用ここまで】======

裏を返せば、1,073団体、約3分の2の市町村が都市計画税を課税していないのです。
これが「現状」です。
多くの自治体が都市計画税を課税しておらず、同時に、9割以上の自治体では固定資産税を標準税率1.4%にしているのです。

【人口政策との兼ね合いからも、減税一択】

付け加えると、比較対象にも問題があります。

北九州市と比較した場合に固定資産税+都市計画税なら安いと言っても、その北九州市は政令市中で人口減少数第1位、高齢化率第1位。人口減少社会における自治体間競争の中で、決して勝ち組といえる都市ではありません。

北九州市との比較で優位に立ったといっても、圏域全体が沈む中での優位なので、これでは人口は増えません。現に、田中純市長の市政運営8年間で行橋市の人口は横ばい、この2年くらいで見れば減少が始まっています。
我々が標榜しております人口政策に関しましても、比較的な優位はむしろ現状のままでも十分保てている
という田中純市長の答弁が虚しく響き渡ります。

(田中純市長の人口政策は、田中純本人が
「リアリティのある、実現性のある数字として申し上げているのではない」
「クエッションだな」

と述べる程度の代物ですからね。公約って何なのでしょうか。)

人口減少社会における自治体間競争を考えた時、都市計画税をかけず固定資産税の超過税率もかけない自治体との競争は、その税率分だけスタートから不利となります。他の条件が同じであるならば、わざわざ税率の高い自治体で家を建てたり工場を建てたりはしないでしょう。

人口減少社会の潮流の中で本気で人口増を目指すなら、他の自治体と比べて固定資産税が高いという不利な条件は即座に廃止するはずです。田中純市長の人口政策がリアリティを欠いているというのは、こういう点からも裏付けられます。

他自治体より割高な税率をかけて税収に余裕があるはずなのに、臨財債を除く地方債が膨らみ続ける田中純市長のずさんな市政運営。田中純氏のような運営下手、投資下手に任せるのはそろそろやめて、工藤政宏市議による固定資産税減税に賭けてみませんか。


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