若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

年金デモのくだらなさ ~ 少子高齢化における賦課方式で将来を保障することの難しさ ~

2019年06月21日 | 政治
ゲームに夢中でツイッターやニュースをほとんど見ていない間、こんな出来事があったそうで。
波に乗り遅れました。完全に出遅れました。

【「年金やめろ」デモでなく「年金払え」デモだった】

「年金払え」デモに2000人=政府に怒りの声-東京 2019年06月16日17時07分
=====【引用ここから】=====
 老後資金に年金以外の2000万円が必要とした金融庁の報告書をめぐり、政府の説明や年金制度の改善を求めるデモが16日、東京都内で行われた。ツイッターの呼び掛けなどで約2000人(主催者発表)が集まり、参加者は「暮らせるだけの年金を払え」と怒りの声を上げた。
=====【引用ここまで】=====

最初、年金デモと聞いて

「少子高齢化における賦課方式の年金は、今の高齢者を厚遇する将来世代泣かせの悪政だ。金融庁の報告書でもこのことは明らか。違法とされる『ねずみ講』よりむしろタチが悪い。年金制度の早期清算・廃止を求める!」

ってデモなのかと勝手に想像していました。
ところが、このデモの主張は

暮らせるだけの年金を払え

とのこと。
これにはちょっと賛同できません。

今まで自分が払った保険料は、ほぼ全額、支払った時点に存在した高齢者への年金支給として費やされています。
「自分が高齢者になった時に年金が支払われるかどうか」
「どの位の水準の年金が支払われるかどうか」
は、その時点で保険料を払ってくれる人がいるかどうか、幾らくらい払ってくれるかに依存しています。

保険料を払ってくれる人が少なくなった時、政府は、年金支給開始年齢を遅らせたり、支給額を減らしたりすることで年金制度そのものは維持するよう努めるでしょう。現にそうしてきました。
厚生年金制度の発足当時、支給開始年齢は55歳だったそうですよ?
今は65歳で、今後70歳や75歳へ延長もあり得るそうですよ?

こうした意味で、年金制度を破綻させずに維持させ続けることはできます。
しかし同時に、賦課方式の年金制度は、その時点その時点における保険料を支払ってくれる現役世代の人数や懐具合に依存せざるを得ないため、事前に政府と国民との間で景気の良い約束を交わしても空手形に終わることでしょう。

【「年金払え」デモに現役世代がいる怪】

暮らせるだけの年金を払え

というデモに押されて政府が現時点での年金支給額を上げたとしても、長続きさせることはできません。現役世代が20年後に年金を貰えるかどうかは、今の政府への圧力ではなく、20年後の現役世代が支払う保険料と高齢世代の数に依存します。

なので、「暮らせるだけの年金を払え」デモに参加して一時的にであれ得をするのは高齢者のみであって、デモ参加者は当然高齢者のみ・・・と思ったら、違いました。

=====【引用ここから】=====
 参加者は「老後を守れ」「2000万はためられない」などと書いたプラカードを掲げた。2歳の息子と加わった自営業の男性(46)は「老後に備えようにも余裕はない。報告書を引っ込めて解決するのか」と訴えた。
 友人と参加した千葉県船橋市の女性会社員(23)は「社会人になり、問題意識を持った。不安なまま(年金保険料が)天引きされており、きちんと説明が欲しい」と批判。高校で社会科を教える男性教諭(28)は「生徒から『年金は大丈夫か』と尋ねられても答えに窮する。政府はごまかさず、議論のきっかけにすべきだ」と語気を強めた。

=====【引用ここまで】=====

コメントが紹介されている人の年齢が、(46)(23)(28)。
ビックリです。
本当にビックリです。

既に年金を貰っている人、あと1年2年で年金を貰えるようになる人が参加するなら「自己中心的だなぁ」と思いつつも一応納得できるのですが、現役世代が参加する意味が分かりません。

【デモ参加者の疑問Q&A】

そんな現役世代デモ参加者の疑問や主張に対し、私なりに答えてみます。

Q1.「老後に備えようにも余裕はない。報告書を引っ込めて解決するのか(46歳男性自営業)」
A1.「『暮らせるだけの年金を支払え』というデモに参加して、今の受給者である団塊の世代への年金支給額を仮に増やしてしまったら、46歳男性が年金受給開始するまでの約20年間で老後の備えどころか、保険料の名目で政府から搾り取られて今の生活を脅かされることでしょう。その後、暮らせるだけの年金を受け取れる保障はどこにもありません。
なお、年金制度が続けば、2歳の息子さんに大変な負債を残すことになります。」


Q2.「社会人になり、問題意識を持った。不安なまま(年金保険料が)天引きされており、きちんと説明が欲しい」(23歳女性会社員)
A2.「問題意識を持ったのなら、デモに参加する前にやるべきことはたくさんあります。年金財政について勉強するのもその1つ。受け身で説明を求めるのではなく、自分から情報を取りにいきましょう。官公庁のホームページでいろんな資料を読むことができますし、書店で様々な解説本に触れることもできます。
なお、私は、政府がきちんと説明し不安が解消されたとしても、保険料天引きは正当化されるものではないと考えています。天引きシステムは制度に対する国民の無関心を増幅させています。」


Q3.「生徒から『年金は大丈夫か』と尋ねられても答えに窮する。政府はごまかさず、議論のきっかけにすべきだ」(28歳男性高校教諭)
A3.「政府は、年金支給開始年齢を遅らせたり支給額を減らしたりすることができる(現にしてきた)ので、年金制度自体の存続という意味では大丈夫です。制度維持の観点では、『100年安心』はあながち嘘ではありません。
ただ、老後の生活保障という意味では、大丈夫という約束は無意味です。高校生が高齢者になった時点の少子化・高齢化の度合いや、現役世代の懐具合に依存するからです。
なお、政府の手による物価上昇さえなければ、自分の蓄えで老後に備えることができるようになります。高校生の皆さん、『暮らせるだけの年金を支払え』デモに参加する教員へ冷たい視線を投げつけると同時に、政府の歳出拡大・国債発行・金融緩和に反対の声をあげていきましょう。」
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« クレーマー・クレーマー ~... | トップ | 最低賃金UPで全てが上手くい... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

政治」カテゴリの最新記事