若年寄の遺言

リバタリアンとしての主義主張が、税消費者という立場を直撃するブーメランなブログ。面従腹背な日々の書き物置き場。

自治労のマニュアルで遊んでみる

2011年12月22日 | 労働組合
自治労熊本県本部のホームページで、「役員になったけど、何をすればいいの?」という人向けのマニュアルを見つけたので、ちょっと読んでみる。


○単組役員活動マニュアル(自治労熊本県本部作成)
======【引用ここから】======
労働組合は、西暦を使用します。元号(P33)は支配階級を象徴するものとして使われてきた歴史があります。特に大日本帝国憲法(明治憲法)下では戦争が行われ、当時の統治権(立法権・行政権・司法権)はすべて天皇にありました。日本国憲法では天皇は象徴とされ、いったんは元号を使う法的な根拠はありませんでしたが、1979年(昭和54年)6月6日に国会で元号法が成立、同月12日に公布・即日施行されました。元号は明治維新以降、皇位の継承があった場合にのみ改める事(一世一元の制)となっていますが、絶対主義的天皇制の問題や、国外には通用しないこと、未来の紀年を正確に表現できないことなどもあり、組合は西暦を使用しています。
======【引用ここまで】======


ここに出てくる「絶対主義的天皇制」とは・・・


○用語解説/絶対主義的天皇制
======【引用ここから】======
 戦前、天皇が絶対的な権限をもって国民を支配した体制。1889年の大日本帝国憲法で法制化されました。天皇は、大臣の任免権、宣戦・条約締結の権利、軍の統帥権などをもち、勅令の名で法律も公布できました。このもとで、資本家と地主の利益を擁護し国民を無権利状態においた専制支配がおこなわれました。
======【引用ここまで】======

○32年テーゼ - Wikipedia
======【引用ここから】======
戦前日本の支配体制を、絶対主義的天皇制、地主的土地所有、独占資本主義の3ブロックの結合と規定し、地主階級と独占資本の代弁者かつ絶対主義的性格をもつ政体として天皇制をみた。そこから、当面する革命は絶対主義的天皇制を打倒するためのブルジョア民主主義革命(反ファシズム解放闘争)であり、プロレタリア革命はその次の段階であると位置づけた(いわゆる二段階革命論)。また、反天皇制に加え、寄生的土地所有の廃止、7時間労働制の実現なども柱としており、「帝国主義戦争と警察的天皇制反対、米と土地と自由のため、労働者、農民の政府のための人民革命」をスローガンとした。
======【引用ここまで】======


支配階級とか、絶対主義的天皇制とか・・・活動マニュアルを書いた人のお里が知れる。

政治や歴史にあまり興味のない人が地方公務員になり、自治労の役員になると、こういう文書や活動によって少しずつ思想教育される。素直な人、感受性の強い人は、こうした思想教育の結果として「革命の闘士」になってしまうのだろう。

こうした思想は、労働組合の様々な活動、用語の根底に流れている。そのため、「私は政治思想とか興味も関係もないし」という人であっても、組合の慣習や常識に慣れ親しむことで、自然と組合の思想に沿った言葉の使い方をするようになり、また、社会主義的な政策を抵抗無く受け入れることができるようになる。

だいたい、大日本帝国憲法の下で「国民を無権利状態においた専制支配」というのは大きな誤り。そうであるならば、大正デモクラシーなんて成立するわけがない。大日本帝国憲法では、統帥権を輔弼すべき大臣を明文化していなかったという欠陥はあったが、これは日本国憲法でも同じこと。自衛隊の存在、役割、指揮権の所在を憲法上明記していないのだから。


○単組役員活動マニュアル(自治労熊本県本部作成)
======【引用ここから】======
19世紀前半のイギリスでは使用者と労働者の立場は完全に主と従の関係にありました。(労働契約を自由に締結できたため)
� 安い賃金で働く労働者を探して契約…格差が6倍
� 安くしかも長期に働かせるため七歳くらいの子供を親が契約させる。
� 労働時間は18時間程度、休憩時間は無し
� 病気、ケガなどしたら解雇
� 団結権などはもちろん存在せず、ストライキなどは業務妨害として扱われました。

======【引用ここまで】======


労働契約を自由に締結できたため、使用者と労働者の立場は完全に主と従の関係?馬鹿は休み休みいえ。

どちらが有利になるかは、雇いたい人と雇われたい人の多少によって決まるものであり、契約自由の原則が貫かれていれば主従が固定されることはない。(社会保障の企業負担を含む)参入規制により起業が制限されていなければ、数多くの企業が競争し、より良い労働者をより良い条件で雇用しようとするだろう。労働者の方が使用者よりも優位な立場にあることも考えられるだろう。

子供の労働は、法律で規制すれば良いというものではない。貧しいが子沢山な家庭では、法律が何と言おうと子供を働きに出すだろう。そうした時、子供の労働が禁止されていれば、非合法の働き口しかなくなってしまう。法律による児童労働の禁止は、貧しい家庭の子供をむしろ危険に晒すことになる。

家庭は貧しい。しかし児童労働が厳しく取り締まられ、子供を働きに出せない。そこで待っているのは、口減らしだ。養えない子供の口減らしは、悲しいが実際にあったことだ。かつての日本や今のアフリカの状況で、労働組合が旗を振って児童労働を禁止する法律を作ったとする。そうすれば、子供が非合法の労働にシフトするか、口減らしに遭うかのどちらかだ。


○単組役員活動マニュアル(自治労熊本県本部作成)
======【引用ここから】======
ヨーロッパでは、このような過酷な状況を打破するため、労働者が連絡を取り合って団結してたたかう権利を獲得するまで流血の歴史がありました。支配階級と呼ばれる人達と労働者の闘いとしてフランス革命などの革命にまで波及しています。労働者達の根気強い闘いが、やがて、支配階級に弾圧をもってしても、組合活動は禁止し得ないことを事実として知らせ、これを認めさせることになります。
日本でも同じような実態でありましたが、遅れること100年間ほどの時間が必要でした。

======【引用ここまで】======


フランス革命によって、多くの人の生命、身体、財産が失われた。学者や芸術家が処刑され、文化財が破壊され、貿易が中断され、自由が抑圧され、富が消え、富を生産する術も失った。「労働者の闘い」は、戦争と同じで何も生み出さない。労働者自身を含む、多くの人を貧しくするだけだ。


○単組役員活動マニュアル(自治労熊本県本部作成)
======【引用ここから】======
使用者が思うままに賃金を決めるとしたら、その顔色をうかがったり、気に入られるように不要な仕事までしたりすることも出てきます。
労働組合は、労働者同士が信頼し合うことを基本として、不必要な競争を排除し、全ての労働者の賃金や労働条件を守り向上させていくことをめざします。
「万人は一人のために、一人は万人のために」が労働組合の理念です。

======【引用ここまで】======


使用者は、思うままに賃金を決めることはできない。双務契約なのだから、使用者と労働者の合意が無ければ契約は締結できない。労働者は契約を強制されることはない。

次に、労働組合は、労働者(組合員)の権益擁護を目的としている。そのため、失業者の利益は考慮していない。全ての労働者の賃金を向上させると、人件費が経営を圧迫し、使用者側の新たな雇用を生み出す意欲を奪う。労働組合の活動は、失業者の将来の就業機会を奪うことで成り立っている。

労働組合が失業者の利益を考慮することは、組合員に対する背信行為となる。労働組合が頑張れば頑張るほど失業率の改善は阻まれるのだが、そんなことは労働組合の知ったこっちゃ無い。「組合は組合員のために、組合員は組合のために」である。


○単組役員活動マニュアル(自治労熊本県本部作成)
======【引用ここから】======
(5) 給料の構造と運用の違いによって、自治体ごとに差がついてしまうことがあります。
また、同じ自治体でも職種や性別で年齢や勤務年数が同じであっても差が生じています。
自治労は、職種や学歴、性別によって賃金差別があってはならない、自治体規模の大小で賃金に格差があってはならないという考え方で賃金闘争を進めています。

======【引用ここまで】======


自治体によって賃金に差があって、何が悪い?また、職種が違えば仕事内容も違うのだから、賃金に差があることはおかしいのか?熊本県にある市町村と一口に言っても、その財政状況や公共サービスの程度には差があるにもかかわらず、賃金に差が無いということで、住民の納得を得られるわけがない。

別の所では、
「労働者(自治体職員も労働者)は、使用者に労働(働く能力)を売って給料(賃金)を貰って生活しています。」
と言っているのだから、労働の内容や働く能力の評価によって賃金に差が生じるのは当たり前のことである。


○単組役員活動マニュアル(自治労熊本県本部作成)
======【引用ここから】======
(6) 労働者の賃金は、使用者と労働者の組織である労働組合との交渉によって決めるのが本来の姿です。しかし、政府は地方公務員法で自治体労働者の権利を制限してしまいました。そのため私たちの賃金決定は「人事院勧告制度」に大きく規定されるようになっています。
======【引用ここまで】======


本来の姿は、「使用者と労働者との交渉」であって、「使用者と労働者の組織である労働組合との交渉」というのは法律で設定された特権であり、常態ではない。

しかも、これは通常の労働者について言えることであって、公務員には当てはまらない。物やサービスを売って、その対価が売り上げとなっている企業と違い、市町村は法律・条例に基づき税金を強制的に徴収することで成り立っている。であるならば、賃金も法律・条例に基づき強制的・一方的に決められるべきもの。一方で住民から強制的・一方的に税金を徴収しておいて、他方では「労使交渉で賃金は決定されるべき。労働者の同意なき賃金決定は許されない」と主張するのは、税金を払っている住民の納得を得られるものかどうか。

税金を取られる住民は税額について毎年交渉できないし、同意があろうが無かろうが税金は強制的に徴収される。


○単組役員活動マニュアル(自治労熊本県本部作成)
======【引用ここから】======
団体行動権(ストライキ権)とは、労働者は自らの労働力を売って賃金を得ているわけですから、一定以下の賃金・労働条件では労働力を売らない自由を持っています。使用者が賃金・労働条件の確保・改善を果たさない場合、労働組合に結集する労働者はストライキという形で一斉に労働の提供を拒否し、その力を背景に団体交渉を進めます。ストライキを成功させるため、労働組合は事前に全組合員の批准投票(ストライキを行って闘うべきかどうかを問う一票投票)を実施し、また様々な教宣活動も行います。ストライキ権は労働基本権の要といえます。しかし、そのストライキを公務員は禁止されています。
以上のように労働者の基本的人権である労働基本権を著しく制約されている私たち公務員労働者は、ストライキ権回復を最終目標として、「団体交渉による賃金・労働条件決定制度の確立」をめざし、ILO151号条約(公務における団体権の保護及び雇用条件の決定手続きに関する条約)批准と国内法改正の取り組みを進めています。

======【引用ここまで】======


「公務員はストライキを禁止されている。ストライキ権回復を目指して取り組みます」
と主張する自治労。ところが一方で、


○単組役員活動マニュアル(自治労熊本県本部作成)
======【引用ここから】======
(1) 民間労働者は3月段階の交渉で決着し、4月から賃金引上げが行われていますが、公務員の賃金決定システムは次のようになっています。
� ストライキを背景に交渉し、妥結します。人事院は民間企業と国家公務員の賃金の格差を埋めることを勧告しますから、民間労働者の賃金引上げのため自治労も連帯して闘います。

======【引用ここまで】======


「ストライキを背景に賃金交渉をします」と主張している。

これは、

「違法行為をします」

と公言していることに他ならない。デタラメだ。

法律があり、条例があるから、公務員は公務員でいられる。その公務員が法律や条例を無視することを公言しては、法体系なんて溶けて消えてしまう。

公務員による
「ストライキを解禁する法改正を求める」
という主張はまぁいいとして、公務員による
「ストライキを背景に賃金交渉をします」
という主張は無しだ。

「処分を受けても、どうせ口頭注意くらいだろ?」
と考えてはいけない。法体系を擁護すべき公務員が、違法行為のススメを公言することを深刻に受け止めてほしい。

それともあれか?

「自治労の活動は革命闘争である。目的は手段を正当化する!」

とでも思っているのだろうか。

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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2012-02-05 11:34:09
よくある批判まとめってヤツですね。


熊本県本部の反論を期待。
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